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F1 Topic:3年間苦しんだホンダを変えたトロロッソからのある提案とは

2018年4月13日

「ホンダのHRDさくらの皆さんの努力に感謝します。彼らは、パフォーマンスを向上しただけでなく、信頼性を大幅に改善するためにオフシーズンの間、懸命に仕事をしていました。いま、われわれがこのポジションでチェッカーフラッグを受けることができのは、彼らのおかげです」


 バーレーンGPでピエール・ガスリーが4位に入賞した直後、トロロッソのチーム代表を務めるフランツ・トストは、そう言ってホンダを讃えた。これは単に4位という結果に対する謝辞ではなく、ホンダが改革してきたことへの感謝の念だった。


 いったい、ホンダは2017年から2018年にかけてどのように変わったのか。ホンダの山本雅史モータースポーツ部長は次のように述懐する。


「ホンダがトロロッソと2018年からパートナーを組むことが決まった昨年の9月にトストさんと会って、さまざまな提案を受けました。彼はF1に精通しているだけでなく、日本の文化も理解していて、ホンダに対して的確な指摘をしてくれました。同時にそれらの指摘は私も昨年から認識していたことで、同じベクトルでやっていけるという感覚を持ちました」


 トストから指摘されたことのひとつに、「現場責任者を専任で置いてほしい」というものがあった。


 山本も「ホンダが今回のプロジェクトでボタンをかけ間違えたのは、総責任者制度にしたこと。いまそんな立場でやっている人はいないし、ましてやPUマニュファクチャラーでそんなポジションはない」と感じていた。


 そこでホンダは経営会議に総責任者性を廃止し、テクニカルディレクター制を導入する提案を行い、「現場の技術的なことに関しては田辺(豊治テクニカルディレクター)とジェームス(・キー)に任せ、われわれ(山本とトスト)はマネージメントに専念する」という新しい体制を整えた。


 トストからの提案には、もうひとつ山本がホンダにとって有益だと思ったものがあった。それはセカンドオピニオン制の導入だった。


「フランツ(・トスト)はセカンドオピニオンを活用すべきではないかと言っていました。例えば、何かトラブルが起きたとき、当事者だけでなく、直接担当していない技術者にもトラブルを見てもらい、改善策を提示してもらうという制度です」


「開発した本人というのは、どうしても客観的になれない。だって、本人はもともと壊れるつもりで作っていないから、どうして壊れるのか見えにくくなるわけです。開発者と同じレベルの別の人が見ることで、初めて気づくことがある」


「私もそれに同意見だった。現場は田辺、開発は浅木(泰昭/執行役員)に分けたのも、そういう理由が大きく影響していました」


 これらの改革は、必ずしもトストからの提案をホンダが受け入れたのではなく、もともと山本をはじめ、ホンダ側も考えていたことだった。それでは、なぜ昨年までの3年間でホンダはそれを実現できず、4年目の今年になって、改革できたのか?


「マクラーレンと3年間の厳しい経験を得て、トロロッソと新しいシーズンを迎えることが良い転機となったことは間違いない。もし、マクラーレンと続けていたら、なかなか人や組織をそこまで変えることはできなかったかもしれない。パートナーが変わったことで、われわれも変わる良いチャンスとなった」


 マクラーレンとの3年間が、ホンダを鍛え、意識改革を行うエネルギーとなった。第2戦バーレーンGPでトロロッソとともにつかんだ復帰後最高位となる4位の影に、マクラーレンとの3年間があったことを、F1に関わるホンダの全スタッフが噛み締めているに違いない。



(Masahiro Owari)


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