ついにホンダが開幕戦以来となるトークンを使用し、パワーユニットをアップグレードしてきた。改良されたのはターボで、使用されたトークンは2つである。ターボの改良点を長谷川祐介総責任者は次のように解説する。
「エネルギー回生量を増やしました。昨年はサーキットによっては、レース中にデプロイが切れてしまうような状況に陥ることが何度かあったんですが、今回のアップグレードでほとんどのチームと同じぐらいのレベルにはなったと思っています。ドライバーからも『ロングラン中のエネルギーの回生量がこれまでより長くなった』というフィードバックをもらいました。ターボは昨年から今年にかけて大きく改良していて、それ時点ですでにデプロイ量は大きく増加していますが、今回の改良はそれに匹敵するほどデプロイが改善されています。わかりやすくいえば、デプロイ量は昨年から約2倍に増えたと言っていいでしょう」
この新ターボは、フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンが駆る2台のMP4-31に搭載された。2人は今シーズンすでに2基のターボを使用しているので、今回の投入でターボはそれぞれ3基目となった。
ただし、アロンソはモナコGPで使用したパワーユニットにターボだけ新しくしたパッケージにしているのに対して、モナコGPがパワーユニットの4戦目となったバトンはICE、MGU-H、MGU-Kも交換。主要4コーポネントを3基目にして、フリー走行1回目に臨んだ。
ところが、そのフリー走行1回目にバトンのマシンにトラブルが発生してしまった。
「オイルが何らかの原因で漏れ、ピットアウトする際に白煙が上がってしまいました。白煙自体は漏れた燃料が排気系か燃焼室に入って、それが燃えてしまったためで、大きな問題ではないんですが、オイル漏れが根本的に改善していないことがわかったので、ピットに入れました」
そのため、バトンは1回目のフリー走行はわずか8周しか走行できずに終わった。
「今回、ターボを新しくしているので、ターボ周りを疑っていますが、まだ特定できていません」というホンダは、フリー走行2回目に向けて、パワーユニットを交換する決定を下した。
「元々、スペアをとして持ってきた新しいターボをモナコGPまで使用していたICEに組み付けてバックアップ体制をとっており、時間もないので、ICEごとパッケージとしてパワーユニットを交換しました。今回、ICEを新しくしましたが、モナコGPを走りきった段階でまだ4戦目。基本的には5戦分の耐久性を確認していますので、問題はないと考えています」という長谷川総責任者。
新しいターボパワーを生かすためには、これ以上のトラブルは回避したい。
(Text : Masahiro Owari)