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【中野信治のF1分析/第23戦】リザルト以上に魅せた角田裕毅とアルファタウリ。さらに進化した2023年のフェルスタッペン
2023年12月5日
ヤス・マリーナ・サーキットを舞台に行われた2023年シーズンF1最終戦/第23戦アブダビGPは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が今季19勝目を飾りました。今回はドライバー・オブ・ザ・デーを獲得した角田裕毅(アルファタウリ)の戦い、レース終盤にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が見せた冷静さと技。そして2023年も成長を見せたフェルスタッペンについて、元F1ドライバーでホンダの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点で振り返ります。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
2023年シーズン最終戦となったアブダビGPは、フェルスタッペンがポール・トゥ・ウインで今季19勝目を飾ってシーズンを締め括りました。そんなアブダビGPでは、予選で自己最高位の6番手を手にし、決勝は8位入賞に加え、ドライバー・オブ・ザ・デーを獲得した裕毅の走りが際立っていましたね。裕毅はF1にステップアップしてから3シーズンにわたって自身のいい部分を最大限に伸ばしつつ、自身に足りなかった部分を補い、成長させてきました。今回のアブダビGPは、これまでの3シーズンで積み重ねてきた成長ぶりが発揮され、そのポテンシャルを周囲に、そして世界に示したレースだったと思います。
アルファタウリは最終戦に向けてアップデートを施したフロアを投入し、低速コーナーでのクルマの動きが特にバランスよくなったように見えました。それまでアルファタウリのAT04はアンダーステア傾向にあるクルマに見えましたが、アブダビGPではフロントもしっかりと入っていた(グリップがあった)ように見えました。フロントがしっかりと入れば、その分クルマの向きを変えるのも速くなりますし、トラクションもしっかりとかかるのでタイヤを守る走りにも繋がります。
よく曲がるということは裕毅のドライビングスタイルにも合うということです。ただ、その分ピーキーさも出てしまいかねないのですが、そういった部分もまとめてコントロールできれば、アップデートのいいところだけを引き出すことができる。そんなクルマになっていたと感じます。
裕毅は3年間のアルファタウリでの経験を活かして、このピーキーなクルマをまとめ上げたと思います。一方、チームメイトのダニエル・リカルドの方は、予選に関してはAT04をうまく手懐けることができませんでした。これは、一貫してアルファタウリをドライブしてきた裕毅との差が出たのかなとも思います。ただ、決勝のペースに関してはリカルドも裕毅もそれほど大きな違いはありませんでしたね。
それにしても、アルファタウリが最終戦にまでアップデートを投入してくるとは思っていませんでした。それだけ、アルファタウリはコンストラクターズ7位を絶対に獲りたかったということでしょう。結果、ウイリアムズから3点差のコンストラクターズ8位となりましたが、アルファタウリは2024年に向けて、いいかたちで2023年シーズンを終えたと思います。目標には届きませんでしたが、積極的にアップデートも投入し、絶対に7位になるのだという強い意志が感じられた一戦でした。
裕毅は6番手スタートから少数派の1ストップ作戦を敢行し、決勝は8位チェッカーとなりました。レースのストラテジーには答えがあるようでないものだと私は思います。なぜなら、レース展開によって導き出される答えが刻々と変わってしまうためです。
オーソドックスな2ストップではなく、裕毅に1ストップをトライさせたアルファタウリの判断に、私は悪い印象は持ちませんでした。たとえば、裕毅がスタートタイヤで引っ張り続け、ラップリーダーとなった際に赤旗などが入れば、赤旗中にタイヤを変えることもでき、リスタート後もいいペースを刻み続けることができていれば裕毅とアルファタウリが表彰台や大量得点を得られた可能性もあります。
そういう点からすると、コンストラクターズ7位を掴むためにアルファタウリはできることをやり切ったと感じます。また、裕毅に関してはタイヤマネジメントをしつつ、攻めるところは攻め、守るべきところはきっちりと守るなど、走りの成長、精神的な成長の両方を見ることができたと思います。
おそらく、今回のレースは裕毅、そしてアルファタウリにとって、結果以上に大きな自信に繋がるレースとなったでしょう。それが世界中で見ていた方にも伝わったからこそ、ドライバー・オブ・ザ・デーを獲得したのだと思います。
また、アブダビGP終盤ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)の冷静さと技が光りました。5秒のタイムペナルティが決定しているセルジオ・ペレス(レッドブル)を先行させ、ペレスのDRSを使うことで、ジョージ・ラッセル(メルセデス)との間合いを広げラッセルを4位に、そしてフェラーリのコンストラクターズ逆転2位獲得を画策しました。
終盤も接戦が続く中、他車のペナルティ状況とシリーズランキングのことを考え、冷静に実行に移したルクレールの凄さにはかなり驚きました。シリーズランキングに関してはおそらく、レース前からチームとともにシミュレーションをしていたとは思いますが、ミラーで後続との距離感も計りながらペレスだけを先行させ、ラッセルとの間合いを広げようと試みる様子を見て、F1ドライバーの凄さを再認識すると同時に、「F1も変わったな」と感じました。
ルクレールの無線から、ペレスを先行させるまでの流れは、まるでシミュレーターやゲームを見ているかのようでした。あれを現実の世界でもできてしまうのは、レース中も絶え間なくリアルタイムシミュレーションを続けるF1の新しい戦い方ですね。結果的にラッセルは3位に入り、3点差でメルセデスがコンストラクターズ2位の座を守りました。ルクレールの戦略は実ることはありませんでしたが、体力面でもハードなレース終盤も、冷静に戦うことができるF1ドライバーの能力の高さを改めて感じることができた一戦になったと感じています。
■フェルスタッペンの進化を目の当たりにした2023年
2023年シーズンは22戦中レッドブルが21勝と、他を圧倒する結果に終わりました。なんといってもフェルスタッペンの凄さが際立ったシーズンだったと思います。もちろん、レッドブルも素晴らしいクルマを作り上げました。2023年のRB19はサスペンションのジオメトリーも含め、他車とは違う哲学を持ったクルマだっただけに、マシンバランスも2022年のRB18からも変わり、RB19はフェルスタッペン向きではなく、どちらかといえばペレスが好むクルマに仕上がっていたという印象です。
そのため、シーズン序盤はペレスがかなりいいペースで、逆にフェルスタッペンが少し苦しんでいる部分があるという印象でした。ただ、シーズン序盤以降はチーム側もクルマをフェルスタッペンの好みに寄せたところがありつつ、フェルスタッペン自身がRB19を乗りこなすべく、ドライビングスタイルを変えていった。そこがフェルスタッペンの凄いところだと私は思います。
フェルスタッペンが自身のドライビングスタイルを僅かに変えつつもスピードを落とさず、むしろドライビングスタイルを変えたことで、RB19のポテンシャルを最大限に引き出すことができた。以前のフェルスタッペンは、ドライビングスタイルに合わせたクルマを用意しなければいけないドライバーだという印象でした。
ただ、2023年のフェルスタッペンは自分自身をクルマに合わせてきた。これはフェルスタッペンというドライバーを次のステージに押し上げた大きな要因なのかなと感じています。ヘルムート・マルコ博士も「フェルスタッペンはまだピークに達していない」とコメントしていましたが、まさにそれが証明された2023年シーズンだったと思います。2023年シーズンは、単にレッドブルのクルマが速くてフェルスタッペンが勝ったシーズンではなく、フェルスタッペンもより速くなるために自身を成長、進化させたシーズンでした。
また、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)も素晴らしい活躍でシーズンを盛り上げました。そして、フェラーリはピーキーなクルマだったこともあり、浮き沈みが激しいシーズンを過ごしましたが、ピーキーさが出にくいサーキットではしっかりと速さを見せつけました。事実、シーズン中幾度と期待を抱かせる存在であり、シンガポールではレッドブル以外で唯一の勝利を飾りました。フェラーリがもう一段階ポテンシャルを上げることができれば、2024年シーズンはさらに面白くなるでしょうね。
また、メルセデスはドライバー2名のレベルの高さ、チーム力も相まってところどころでいいレースを見せました。こちらもクルマ的にはあと一歩のところまで来ていたと思います。そして、シーズンを盛り上げたという点で忘れてはならないのはマクラーレンです。
後半戦に向けて一番シーズンを湧かせてくれたのはマクラーレンのランド・ノリス、そしてオスカー・ピアストリでした。マクラーレンはチームの作り方という面でも新たな方向性を示しています。今までは1名はベテラン、もう1名は若手というコンビが多かったのですが、マクラーレンは若手ふたりでもチームを強くすることができることを証明しています。
若手を積極的に起用することで、F1昇格を目指す若手がチャンスを得られる可能性も増えます。さらにベテランドライバーに高いサラリーを払うことなく、可能性を秘めた若手をそこまで高くはないサラリーで乗せることができるなど、F1チームとしても新しい取り組みを実施し、その成果が出ていることは面白いですね。また、若手コンビなだけに、今後の伸び代という点でも期待が募る、いい取り組みだと思いました。
2023年シーズンが終わったばかりですが、2024年シーズンのシートも全て埋まりました。今回のアブダビGPに出走したドライバーがそのまま2024年の開幕戦を戦います。ライナップに変化はありませんが、逆に言えば各ドライバーの能力を皆が把握しています。それだけに、2024年に勢力図が大きく変わるとすればそれはチーム、そしてクルマが要因でしょう。
モータースポーツはクルマというモノを使うスポーツであり、モノがレースの勝敗の7割から8割を占めます。それゆえに、2024年の開幕戦のグリッドに並んだクルマの戦力差は2023年の開幕戦以上にわかりやすいでしょうね。各チームがどのような方向性で新車を作り上げていくのか、今から本当に楽しみです。
【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿のバイスプリンシパル(副校長)として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。2023年はドライバーとしてスーパー耐久シリーズST-TCRクラスへ参戦。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24
(Shinji Nakano まとめ:autosport web)
関連ニュース

1位 | ランド・ノリス | 44 |
2位 | マックス・フェルスタッペン | 36 |
3位 | ジョージ・ラッセル | 35 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 34 |
5位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 22 |
6位 | アレクサンダー・アルボン | 16 |
7位 | エステバン・オコン | 10 |
8位 | ランス・ストロール | 10 |
9位 | ルイス・ハミルトン | 9 |
10位 | シャルル・ルクレール | 8 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 78 |
2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 57 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 36 |
4位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
5位 | スクーデリア・フェラーリHP | 17 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 14 |
7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 10 |
8位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 6 |
9位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 3 |
10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 0 |

