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母国での3年ぶりの開催に悲喜交々のハース小松礼雄エンジニア。小チームならではの苦労と効率的アプローチ

2022年10月6日

 日本のメディアに向けて、木曜日の搬入日に会見を行った、ハースF1チームの小松礼雄エンジニアリングディレクター。「3年ぶりの日本GPがすごく楽しみです」と語る一方で、残念なこともあると言う。


「例年だったら地元の小学生たちが木曜日などにピットレーンを歩いて、一生懸命勉強した英語で僕らに挨拶してくれる。スタッフもみんな、すごく楽しみにしてるんです。元気をもらえます。世界中のサーキットを回ってますけど、あの応援は特別です。あとで学校の先生から、『あの体験をきっかけに、いつか世界で働きたいという子供もいた』と、聴いていたりしてね。ですので彼らに会えないのはちょっと残念ですね」


 今季のハースは開幕2戦で連続入賞を果たし、戦闘力の高さを証明した。中盤も2戦連続ダブル入賞を果たすなどしたが、全般的には成績は下降傾向だ。


「出だしは思ったよりいい結果が出ました。でも、その後は取りこぼしがあったり、避けられたはずのクラッシュが続いたり。何よりうちのチームはまだ財政再建の途中なので、シーズン途中にばんばんアップデートが投入できるわけじゃない。大きな改良は今季1回だけだし、しかも夏のハンガリーGPというすごく遅いタイミングでした。大部分のチームは5月のスペインで入れてるのにね。モナコでの大きなクラッシュがなかったら、アップデートをもう1回、内容も、もっと充実できていた。そこは痛いです」


「でも言い換えれば、そんな状況でも依然としてポイントを取れるレベルで戦えている。前戦シンガポールGPの予選でケビン(マグヌッセン)が9番手に入ったりね。そこはマシンの速さだけじゃなく、オペレーションもうまくなっている。持てる力を十全に発揮するという点は、だいぶできるようになって来た。でも、まだまだ非効率なところはあるし、そこはもっと良くしていかないと前の方では戦えないと思ってます」


 ハースは昨シーズンのマシン改良を犠牲にしてまで、今季のマシンに賭けてきた。それでも必ずしも速いクルマができないのが、F1の厳しさといえる。思うようなアップデートができない状況でも、戦闘力を発揮できている最大の理由は何だったのか。


「効率の追求でしょうね。どこに集中したら速くできるかという判断が、結果的に間違っていなかった。うちは人数は決して多くないけど、要所要所に優秀な人材がいる。トップチームに10人いるのが、うちは3人かもしれないけど、でもそれをいかにシンプルな命令系統で無駄なく、効率良く回すか。そこはある程度、できているという感触はありますね」


「ミーティングの回数とかやり方もそうだし、初日フリー走行後のマシンセットアップの進め方も、とにかくアグレッシブに限られた資源を集中させてやっています。もちろん考えに考えて、こっちの方向しかないという結論を出します。10個やりたいことがあったとして、トップチームが7、8個できるところを、僕らはせいぜい2個か3個。それが外れたら目も当てられないですけど、さすがに大きくは外さないです」


 では今季の新規定のマシン開発で、もっとも難しかった点はどこだったのか。すると小松エンジニアは、「クルマのバランスですね」と即答した。


「シーズン当初はポーパシング(高速時の激しい縦揺れ現象)が問題になりましたよね。でも僕らは冬の段階ですぐに確認できて、そこからの処置は一気でしたね。とにかくまずはポーパシングの現象を消そうと。そこからパフォーマンスを上げて行く方法論を取った。それが結果的に良かったですね」


「一方で今も手こずっているのが、低速と高速のバランスの問題です。うちのクルマは低速コーナーでのアンダーステアがひどい。逆に高速の進入はオーバーステア。中でも低速はラップタイムへの影響が大きいし、トラクションも掛けられない。そこを解決できてないのが、一番の問題ですね」


 最後に24戦まで増やされる来季のレース開催数について。潤沢ではない予算をやり繰りしながら現場スタッフを統括する立場の小松さんにとって、さぞ厳しい決定なのではないか。


「それは厳しいですよ。大きなチームと違って交代要員も少ないですから。来季の開幕までに何とか調整しないといけないですけど、たとえば誰かが病気になって交代要員を補充したら、今度はファクトリーに大きな穴が開く。ただでさえギリギリでやってますから、すぐに問題が溢れてくる。そこのマージンをもう少し大きく取らないと、年間24戦は戦えないですね」。


 レース数を増やせば、確かにチームへの収入は増える。しかし一方で、スタッフには確実にしわ寄せが来る。


「働いている人のことを、もう少し考えてほしいですね。ちゃんとした仕事はちゃんとした家庭とか私生活があってこそ、できるものですから。そこがハッピーで初めて、ハッピーに仕事ができる。最大限、力を尽くせる。そもそもファンにしても、24戦観たいですか(苦笑)。あくまで個人的な意見ですけど、18戦ぐらいが妥当じゃないでしょうか」2022年F1第18戦日本GP鈴鹿サーキット木曜搬入日


小松礼雄エンジニア&ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第16戦イタリアGP木曜日 小松礼雄エンジニア&ミック・シューマッハー(ハース)

ケビン・マグヌッセン(ハース)
2022年F1第17戦シンガポールGP フロントウイングの左の翼端板にダメンージを追ったケビン・マグヌッセン(ハース)


(Kunio Shibata)


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