MERCEDES-AMG PETRONAS FORMULA ONE TEAM関連記事
F1 Topic:タイヤバーストした最終周のハミルトンの冷静な対処法。タイムとエンジニア無線で振り返る
2020年8月4日
なぜ、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は左フロントタイヤがパンクしながら、優勝できたのか。
単に運が良かったのか。というのも、レース終盤にタイヤのパンクに見舞われたのはハミルトン以外にもチームメイトのバルテリ・ボッタス、そしてカルロス・サインツJr.のふたりがいたが、彼らはファイナルラップではなかったため、ピットインを余儀なくされ、大きく順位を落としてしまった。
たしかにハミルトンのタイヤがファイナルラップではなく、その前の周にパンクしていたら、結果は変わっていたかもしれない。その点では運が良かったともいえる。
しかし、今回のハミルトンの優勝は、単に運が良かったと片付けるわけにはいかない、神ドライブとも言える、別の勝因があったこともたしかだ。
その神ドライブとは、できる限りのスロー走行だった。
ファイナルラップでパンクしたハミルトンは、その瞬間、「頭がパニックになった」という。しかし、次の瞬間、「こんなことを言っても信じてもらえないかもしれないけど、その後、なぜかすごく冷静だった」とも言う。
ハミルトンを冷静にさせたのは、レースエンジニアのピーター・ボニントン(愛称ボノ)だった。
「ボノが、マックス(フェルスタッペン)とのギャップを冷静に知らせてくれた。最初はたしか30秒ぐらいあったと思う。それから、その差はどんどん縮まっていったけど、僕は頭の中で『このままのペースで行けば、最後はどのくらいの差になるか?』を考えていたんだ」
F1ドライバーは、フリー走行からコース上でのトラックポジションに関して、常にレースエンジニアと会話している。それは相手のアタックラップを妨害しないためだ。
「○秒後方から○○が迫っている」という具合だ。
それはイギリスGPの金曜日からハミルトンも行っていて、シルバーストンのどのコーナーで、何秒後ろに他車がいれば、どれくらいで追いつかれるかを体でわかっていたと思われる。
そして、伝説のスロー走行を実行する。
「ハンガーストレートでマックスとの差が19秒になったと聞いて、僕は可能な限りペースを落とした。だって、パンクした左前輪のホイールがかなりダメージを負っていたらね。だから、右コーナーのストウでかなり手こずった」
後方からタイヤを交換してファステストラップを狙いにきたドライバーが迫っていると聞けば、普通のドライバーはできる限り速く走ろうとする。しかし、ハミルトンは逆に?抜かれない範囲で?可能な限りペースを落としたスロー走行に徹していた。
タイヤがパンクした状態で不必要に速く走れば、スピンしたり、コーナーを曲がりきれずにコースアウトして余計にラップタイムが遅くなるかもしれない。あるいはパンクしたタイヤが飛び散り、タイヤ以外の部分へのダメージを広げて、状況が悪化するかもしれないからだ。
いかにハミルトンがファイナルラップを遅く走っていたかは、終盤にパンクしたほかのふたりのドライバーのラップタイムと比較するとわかる。ハミルトンがパンクしたのは7コーナーだと本人は言う。7コーナーはセクター2の途中にあるので、直接、比較できるのはボッタスとはセクター2とセクター3のみ、サインツJr.とはセクター3のみとなる。そして、そのいずれの区間でもハミルトンはパンクしたドライバーの中で最も遅く走っている。
●50周目 ボッタス 2分6秒242(3コーナー/セクター1)
42.1-51.9-32.1
●51周目 サインツ 1分37秒060(9コーナー/セクター2)
29.2-37.3-30.5
●52周目 ハミルトン 1分55秒484(7コーナー/セクター2)
29.4-53.5-32.4
●52周目 フェルスタッペン 1分27秒097
26.0-35.0-24.0
※セクター1-セクター2-セクター3のラップタイム/秒
つまり、ハミルトンはファイナルラップでいわゆる?ゆっくり急ぐ?という神ドライブを披露していた。
いかに、ハミルトンがマシンとタイヤを労っていたかは、チェッカーフラッグ直後のウイニングランでのボニントンとの無線のやりとりでもわかる。
(ボニントン、以下ボノ):マシンを止めろ。迎えに行くから。ストップ、ストッブ、ストップ
ハミルトン:本当に? でも、まだ走れるよ
ボノ:ノーノー。危ない。とにかく、マシンを止めろ
ハミルトン:マシンは本当に大丈夫だって
果たして、ハミルトンはパンクした左フロントタイヤのラバーを剥離させることなく、ホイールに装着させたまま、表彰台の下にあるパルクフェルメに帰還した。
もちろん、だれよりも遅く。
(Masahiro Owari)
関連ニュース
12/6(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
12/7(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
予選 | 結果 / レポート | |
12/8(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
1位 | マックス・フェルスタッペン | 437 |
2位 | ランド・ノリス | 374 |
3位 | シャルル・ルクレール | 356 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 292 |
5位 | カルロス・サインツ | 290 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 245 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 223 |
8位 | セルジオ・ペレス | 152 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 70 |
10位 | ピエール・ガスリー | 42 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 666 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 652 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 589 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 468 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 94 |
6位 | BWTアルピーヌF1チーム | 65 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 58 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 4 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |