「いろんなことがうまく行っていれば、もう1つか2つ上に行けたと思います」と長谷川祐介総責任者が振り返るように、今年のイタリアGPは、マクラーレン・ホンダ勢にとって、テレビの画面ではわかりづらい不運が連続したレースだった。
まず、スタートでジェンソン・バトンが出遅れたことだ。ここまではまだ良かった。問題は1コーナーでザウバーとルノーにはさまれてサンドウィッチ状態となり、1コーナーのシケインをショートカット。その後、レズモでザウバーに押し出されて、最後尾まで下がってしまう。
一方、12番手からスタートしたフェルナンド・アロンソは1周目に9番手までジャンプアップ。8周目にマックス・フェルスタッペンにかわされたものの、序盤は10番手を走行し、ポイントが狙える走りをしていた。
最初の不運は、何らかの原因でスローパンクチャーに見舞われたことだった。ただし、これは「ほとんどピットインするタイミングで起きたことなので、大きな問題ではありませんでした」という程度のトラブルだった。
問題は直後の13周目のピットストップで、マクラーレンのピットストップエリアにある、ドライバーにスタートの合図を知らせる信号機にトラブルが発生したことだった。「止まれ」の赤いランプから、「スタート」の青いランプへと切り替わらなかったのである。ボタンを押すロリポップマンが異変に気付いて、すぐに手で「行け行け」と合図して、アロンソはピットアウトしていったが、静止時間は5.5秒と、約3秒ロスしてしまった。
これにより、ピットアウト直前の12周目に1.6秒後方にいたニコ・ヒュルケンベルグがピットアウトした15周目には、1.5秒アロンソの前方に出て事実上10番手の座を手に入れるのである。その後、第2スティントでは若干ヒュルケンベルグのほうがペースは速かったものの、ほぼ同じようなペースで走り、タイヤ戦略も同じだったことを考えると、レース後、アロンソは「今日は入賞できるだけのペースがなかったから、11位で終わろうと14位だろうと違いはない」と平然を装っていたが、入賞できるチャンスはあったと思う。
つまり、今シーズンもっとも厳しいと思われたサーキットでも、ホンダは実力でポイントを取れる可能性があった。ポイントは手にすることができなかったが、次戦シンガポールGP以降に向けて、自信を手にしたヨーロッパラウンド最終戦のホンダだった。
(Text : Masahiro Owari)