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【コラム】謎多きシューマッハー事故原因/会見詳報
2014年1月11日
Kunio Shibata
シューマッハーがスキー事故で意識不明の重態に陥ってから約10日後の1月8日、メリベルスキーリゾートを管轄下に持つアルベールビルの捜査当局が、事故原因調査に関する記者会見を開いた。会見にはヨーロッパ各地から100人近い報道陣が押し寄せ、予定した会見場に全員が入り切らず、別室が用意された。フランス国内では24時間ニュースチャンネル3局が生中継で対応した他、地上波各局も定時ニュースでトップ扱い。この事故に対する高い関心が窺われた。
今回の記者会見がこれほどの注目を集めたのは、事故原因にあまりに不明な点が多いためだ。時速300kmの世界で不死身だったシューマッハーが、なぜ緩やかな斜面を滑っていて瀕死の重傷を負ったのか? これまでさまざまな情報が漏れ伝わってきたものの、どれも今ひとつ説得力に欠ける。そしてこの日の会見でも、捜査当局はそれらの疑問に十二分に答えたとは思えなかった。
とはいえ、いくつかの新事実が明らかにされている。まずシューマッハーのヘルメットに装着されていたカメラが、事故当時撮影モードだったことが確認され、映像は専門家の手で解析中という。しかしこの時点ですでに、「上級者が普通に滑る速度」であり、当初言われていたような無謀なスピードではなかったことが判明している。
また救助隊員からの事情聴取によれば、彼らは到着後すぐに、「シューマッハーに蘇生措置を施した」という。初期の報道では「最初の病院に搬送されるまでは意識があった」とされていたが、実は事故直後から危機的な状況だったということだ。
さらに、「スキー板の状態は完璧で、事故原因にはかかわっていない」「ゲレンデの整備状態、コース内外の標識などに問題はなかった」と捜査当局は考え、「シューマッハー氏は、自らコース外に出ることを選択したのではないか」と言明している。つまりスキー場管理者らの業務上過失の可能性は、実質的に除外。シューマッハーが滑走中にバランスを崩したことが原因だとほのめかしている。
Kunio Shibata
しかし「メリベルの常連でコースを熟知し、スキーの腕前も上級レベル」であるシューマッハーが、たとえ岩が露出しているコース外とはいえ、あの程度の緩斜面で事故に遭うものだろうか? 実は事故前後の状況証言のひとつに、「友人の娘が転倒し、彼女を助けに行った際にコース外に出た」というものがあったが、今回の会見では「全員に事情聴取したわけではないが、そのような話は聴いていない」とアルベールビル検察庁のカンシー検察官は言明している。「ではビデオの中に、その種の映像は?」という記者からの重ねての質問に、同検察官は「映像は2分間しかなかった」という驚くべき答えを述べている。
普通この種のカメラは、スイッチを入れっ放しにして長回しし続けるものだ。その後の応答でようやく、「それ以外のものもあるが、事故に関するのはこの2分だけだ」と補足していることから、実際には長時間記録された中から、事故に関する部分だけを抜き出して解析したということのようだ。しかし本当に、「その2分間だけ」が事故に関するものだったのだろうか。勘ぐれば、たとえば同行したメンバーの行動が結果的に事故の伏線となり、その前後の映像にそれが写っていたために、家族が映像の提供を控えた可能性も考えられる。
映像関連では、「35歳ドイツ人の客室乗務員が偶然撮影した事故映像」の存在を、独シュピーゲル誌が特ダネとして報じている。しかしこれに関しても、「そのスキー客からは、連絡を受けていない。彼が撮ったとされる映像も、入手していない」と、にべもない。
総じて言えば非常に慎重に捜査を進めており、途中の段階で余計なことはいっさいコメントしない、という態度を貫いている印象だ。そしてこのまま新事実が出なければ、事件性や第三者の過失の存在しない、単なるスキー事故として処理される可能性が高そうである。
(柴田久仁夫/オートスポーツweb)
シューマッハーがスキー事故で意識不明の重態に陥ってから約10日後の1月8日、メリベルスキーリゾートを管轄下に持つアルベールビルの捜査当局が、事故原因調査に関する記者会見を開いた。会見にはヨーロッパ各地から100人近い報道陣が押し寄せ、予定した会見場に全員が入り切らず、別室が用意された。フランス国内では24時間ニュースチャンネル3局が生中継で対応した他、地上波各局も定時ニュースでトップ扱い。この事故に対する高い関心が窺われた。
今回の記者会見がこれほどの注目を集めたのは、事故原因にあまりに不明な点が多いためだ。時速300kmの世界で不死身だったシューマッハーが、なぜ緩やかな斜面を滑っていて瀕死の重傷を負ったのか? これまでさまざまな情報が漏れ伝わってきたものの、どれも今ひとつ説得力に欠ける。そしてこの日の会見でも、捜査当局はそれらの疑問に十二分に答えたとは思えなかった。
とはいえ、いくつかの新事実が明らかにされている。まずシューマッハーのヘルメットに装着されていたカメラが、事故当時撮影モードだったことが確認され、映像は専門家の手で解析中という。しかしこの時点ですでに、「上級者が普通に滑る速度」であり、当初言われていたような無謀なスピードではなかったことが判明している。
また救助隊員からの事情聴取によれば、彼らは到着後すぐに、「シューマッハーに蘇生措置を施した」という。初期の報道では「最初の病院に搬送されるまでは意識があった」とされていたが、実は事故直後から危機的な状況だったということだ。
さらに、「スキー板の状態は完璧で、事故原因にはかかわっていない」「ゲレンデの整備状態、コース内外の標識などに問題はなかった」と捜査当局は考え、「シューマッハー氏は、自らコース外に出ることを選択したのではないか」と言明している。つまりスキー場管理者らの業務上過失の可能性は、実質的に除外。シューマッハーが滑走中にバランスを崩したことが原因だとほのめかしている。
Kunio Shibata
しかし「メリベルの常連でコースを熟知し、スキーの腕前も上級レベル」であるシューマッハーが、たとえ岩が露出しているコース外とはいえ、あの程度の緩斜面で事故に遭うものだろうか? 実は事故前後の状況証言のひとつに、「友人の娘が転倒し、彼女を助けに行った際にコース外に出た」というものがあったが、今回の会見では「全員に事情聴取したわけではないが、そのような話は聴いていない」とアルベールビル検察庁のカンシー検察官は言明している。「ではビデオの中に、その種の映像は?」という記者からの重ねての質問に、同検察官は「映像は2分間しかなかった」という驚くべき答えを述べている。
普通この種のカメラは、スイッチを入れっ放しにして長回しし続けるものだ。その後の応答でようやく、「それ以外のものもあるが、事故に関するのはこの2分だけだ」と補足していることから、実際には長時間記録された中から、事故に関する部分だけを抜き出して解析したということのようだ。しかし本当に、「その2分間だけ」が事故に関するものだったのだろうか。勘ぐれば、たとえば同行したメンバーの行動が結果的に事故の伏線となり、その前後の映像にそれが写っていたために、家族が映像の提供を控えた可能性も考えられる。
映像関連では、「35歳ドイツ人の客室乗務員が偶然撮影した事故映像」の存在を、独シュピーゲル誌が特ダネとして報じている。しかしこれに関しても、「そのスキー客からは、連絡を受けていない。彼が撮ったとされる映像も、入手していない」と、にべもない。
総じて言えば非常に慎重に捜査を進めており、途中の段階で余計なことはいっさいコメントしない、という態度を貫いている印象だ。そしてこのまま新事実が出なければ、事件性や第三者の過失の存在しない、単なるスキー事故として処理される可能性が高そうである。
(柴田久仁夫/オートスポーツweb)
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※シンガポールGP終了時点
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