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F1技術エキスパートによる新車評価(2)規定を味方に中団以下が開発で先行。レッドブルも注目するアルファタウリ

2022年3月9日

 スペイン・バルセロナにおいて2022年初のF1テストが行われ、全10チームが新世代マシンを走らせた。まだまだ実際のパフォーマンスは見えてこないが、formula1.comでの解説でもお馴染みのF1ジャーナリスト、サム・コリンズ氏に各マシンの第一印象、また2022年F1マシン自体の評価を語ってもらった(全3回)。


 第1回はトップチームのフェラーリ、メルセデス、レッドブルのマシンについての分析、今回の第2回ではそれ以外の7チームのマシンを見ていく。


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 2022年は、ルールブックが抜本的に変更されると同時に、風洞テストの制限やコストキャップの影響がダイレクトに表れ、昨年とは全く違うシーズンになりそうだ。現在の規則では、前年のコンストラクターズ選手権で下位に終わったチームは、より多くの空力テストを行うことが許され、上位チームはテストの機会を大幅に減らされる。その影響が、バルセロナF1テストに登場した各チームのニューマシンに表れているようだ。

■アルファタウリAT03:レッドブルに追従せず独自の方向性を選ぶ


2022年F1バルセロナテスト1日目 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1バルセロナテスト1日目 角田裕毅(アルファタウリ)

 トップ3以外の7チームのなかで特に目立つのは、“ホンダ製”パワーユニット(PU)を搭載するアルファタウリAT03だ。ノーズのデザインから1990年型ティレル019を想起するという人もいる。当時ティレルは初めてハイノーズを採用、偶然にもアルファタウリと似たネイビーとホワイトのカラーリングを使用していた。


 AT03は、フロントウイングのメインエレメントがフロントインパクトストラクチャーの高めの位置にあるため、フロントインパクトストラクチャーの高さは他のマシンと同じであるにもかかわらず、ノーズが上がっているように見えるという、ユニークなデザインとなっている。アルファタウリは、このコンセプトは最終的なものではなく、最初の数レースで競争力が見られなければ、別のデザインを採用する可能性があると言っている。

2022年F1バルセロナテスト ピエール・ガスリー(アルファタウリAT03)
2022年F1バルセロナテスト ピエール・ガスリー(アルファタウリAT03)

2022年F1バルセロナテスト アルファタウリAT03
2022年F1バルセロナテスト アルファタウリAT03


 2022年型マシンのデザインにおいては、チームによってさまざまな技術的方向性が見られる。そのため、そういった大幅な変更はあり得るし、逆に他のチームがアルファタウリのコンセプトに移行する可能性もあるだろう。


 アルファタウリが、兄弟チームであるレッドブルが採用したプルロッド式フロントサスペンションをあえて選ばなかったのも興味深い。アルファタウリがプッシュロッド式フロントサスペンションレイアウトを維持したのは、明らかに空力的な理由での選択である。ちなみにアルファタウリには、レッドブルよりもはるかに多くの空力開発時間を割り当てられていた。彼らのアプローチは、レッドブル・レーシングにとっても気になるところかもしれない。


 レッドブル・パワートレインズが引き継いだホンダのパワーユニットも興味深い。RA621Hにどのような改良が加えられたのか、詳細はまだ明らかになっていない。“RA622H”と呼ばれるはずだったこのパワーユニットは、実際にはホンダが設計し、製造し、運用を行うが、レッドブル・パワートレインズを示すイニシャルで始まるRBPTH001と名付けられた。しかしパドックのうわさでは、部品番号はレッドブルでなくホンダを示すイニシャルで始まっているといわれている。

■マクラーレンMCL36:唯一ポーパシングに悩まされなかった謎の存在


2022年F1バルセロナテスト1日目 ランド・ノリス(マクラーレン)
2022年F1バルセロナテスト1日目 ランド・ノリス(マクラーレン)

 レッドブル以外でプルロッド式フロントサスペンションを採用したのはマクラーレンだけだ。彼らのマシンはライバルチームたちにとって、謎の存在となっている。マクラーレンは唯一、ポーパシング現象に悩まされず、その上、非常に速そうだ。高速になるとたわむと言われるフロアエッジのソリューションがカギだと言われ、注目が集まっているが、実際そうだという証拠はほとんどない。



2022年F1バルセロナテスト ダニエル・リカルド(マクラーレンMCL36)
2022年F1バルセロナテスト ダニエル・リカルド(マクラーレンMCL36)

2022年F1バルセロナテスト ランド・ノリス(マクラーレン)
2022年F1バルセロナテスト ランド・ノリス(マクラーレン)


 マクラーレンは、ミッドフロア・エレメントを極めて効果的に利用し、アンダーボディの端を、渦を使ってまるで見えないスカートを装着しているようにして塞ぐという手法を取っている。これが大きな効果を発揮するのであれば、極めて強力なデザインといっていいだろう。

■アストンマーティンAMR22:独特な“ツインフロア”コンセプトを採用


2022年F1バルセロナテスト2日目 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)
2022年F1バルセロナテスト2日目 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

 マクラーレンと同じメルセデス製パワーユニットを搭載するアストンマーティンだが、マシンの違いは顕著で、2台は完全に異なるコンセプトのもとで作られた。アストンマーティンは、サイドポッドを非常に高い位置に置き、その下に大きなアンダーカットが施されている、ほぼ“ツインフロア”のレイアウトを採用した。


2022年F1バルセロナテスト セバスチャン・ベッテル(アストンマーティンAMR22)
2022年F1バルセロナテスト セバスチャン・ベッテル(アストンマーティンAMR22)

 バルセロナでのアストンマーティンは、ポーパシングにひどく悩まされ、セットアップでも苦労したことが妨げになっていた。そのため、AMR22の真のパフォーマンスを判断するのは、現時点では難しい。

■アルファロメオC42:唯一、最低重量に近づけることに成功も、信頼性が最悪


周冠宇(アルファロメオ)
2022年F1バルセロナテスト2日目 周冠宇(アルファロメオ)

 アルファロメオは、アストンマーティンと似たコンセプトを、より洗練された形で用いているようだが、彼らはこのニューマシンに関して、信じられないほどの秘密主義を貫いてきた。バルセロナではできる限り誰にもC42を観察する機会を与えまいとして細心の注意を払っており、なぜそこまでするのか、最初は誰もその理由が分からなかった。


 しかしその後、アルファロメオが唯一、最低重量795kgに近づけることに成功したことが明らかになった。これは性能的には大きなメリットになるはずだ。ところがC42は信頼性の面で最悪であることが判明した。

アルファロメオF1の2022年型マシン『C42』
アルファロメオF1の2022年型マシン『C42』

 この信頼性の低さの理由のひとつは、マシンを製造しているザウバーが、そのデザインにおいて非常に勇気のあるアプローチを取ったことかもしれない。彼らはプッシュロッドリヤサスペンションのレイアウトを選択、そのためにフェラーリF1-75のギヤボックスを利用できず、結果としてギヤボックスを一から独自に設計、製造したのだ。

■アルピーヌA522:スプリットターボ方式採用でPUを大変更

 唯一のルノーエンジン搭載車であるアルピーヌも独自路線を貫いている。今年彼らは完全に新しいパワーユニットを導入、メルセデス/ホンダ方式のスプリットターボ・レイアウトを採用、コンプレッサーをエンジンブロックの前に、タービンを後方に配置したといわれている。
 シェイクダウン中にひどいポーパシングが発生、振動でボディワークの一部が緩んだため、急きょパーツを修復して、バルセロナでの残りの走行を行った。最初の2日間は悲惨で、ドライバーたちはマシンに関して辛辣に不満を訴えていたが、最終日に向けてリヤエンドを変更した結果、ハンドリングが一変し、フェルナンド・アロンソはマシンに大満足していた。しかし、セッション序盤にトラブルが発生、テストを切り上げることになった。

■ウイリアムズFW44:高度な設計にライバルチームも注目

 チームごとに許される空力テストの量が異なる関係で、2021年に後方グリッドに沈んでいたチームが、興味深い開発を行ってきた。たとえばウイリアムズは独特なバイパスシステムを施したサイドポッドを採用、非常にタイトなパッケージングを行うなど、高度な設計を行っている。また、フロアエッジのソリューションには、多くのライバルチームが感心していたようだ。
 バルセロナテストでは、目立たないながらも、ポテンシャルが高いように見えた。ウイリアムズは、センサーアレイやフロービズで包括的な空力評価プログラムに取り組んでいた。このマシンがバーレーンでどういう走りを見せるのか興味深いところだ。

■ハースVF-22:開発作業は最も先行。信頼性が課題

 ハースVF-22は、バルセロナであまり注目されていなかったようだが、非常に興味深いマシンだった。開発が最も進んでいるのは、このクルマだと思われる。ハースは早い段階で2021年シーズンを完全に諦めると決め、すべてのリソースを2022年に注いだ。さらに、2020年にランキングが下位だったため、風洞の作業時間をたっぷり割り当てられていた。つまり、他のどのチームよりも早くから、デザイナーたちは2022年型マシンのために全力を注ぐことができたわけだ。


 その結果、ハースVF-22は、ここまでの他のデザインよりも複雑な空力的要素を備えている。ハースは他チームより先行しているはずなのだが、バルセロナでは信頼性の問題にひどく悩まされた。トップスピードが非常に高いことは確認できたものの、実際マシンがどれだけ速いのかは、現時点では不明だ。
 バーレーンテストでは、各チームの相対的な速さがより明らかになってくるだけでなく、第2回テストまでの間に各チームがどれだけマシンを開発したかを見ることができる。非常に興味深い3日間になりそうだ。



(Sam Collins)




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