「(増えた回生エネルギーを)デプロイ側に使うのか、あるいは燃費側に振るのかによって違います」と長谷川総責任者は語る。
燃費側に振れば、少なくともレース序盤からドライバーが燃費を気にして走ることはなかったはずだが、ホンダは話し合いの結果、パフォーマンス側に振ってラップタイムを取りに行こうという決断をした。その理由を長谷川総責任者は明言しなかったが、その決断に納得していない様子だった。なぜなら、ドライバーが燃費を気にしてアクセルを戻すようなレースをやらせたくないからである。
「レースの途中から、フェルナンドの心は折れそうになっていたと思います」と語った長谷川総責任者。それでも、チームは無線で「上位に何か起きるかわからないから、最後まであきらめるな」と激励。残り3周でクビアトの約8倍以上の距離を走っているタイヤで抜き返したのである。しかし、それ以上の波乱は起きず、アロンソは11位に終わった。
では、なぜ増えた回生エネルギーをパフォーマンス側に振ったのか。それは予選での最高速が最下位だったことと無関係ではない。今回マクラーレンはレースが雨になること、そしてシケインと低速コーナーでの立ち上がりのトラクションを良くするために、高速のモントリオールにしては、かなり重めの空力仕様で臨んでいた。
わかりやすく言えば、リアウイングは他チームに比べて立て気味だった。そうなるとストレートスピードが伸びないが、今回はホンダのターボが新しくなったので、その増えたデプロイをパフォーマンス側にすべて使ったのではないだろうか。そして、その結果、ターボが新しくなったにもかかわらず、燃費が予想していたよりも改善されなかったのではないだろうか。
もちろん、燃費の良し悪しはICE自体の燃焼効率も関係している。それは長谷川総責任者もわかっており、「エンジン本体のパフォーマンスを改善しなければならないことが明確になった」と語っている。
なぜ、モントリオールでアロンソの心が折れそうになっていたのか。マクラーレンとホンダは、その点をしっかり話し合い、次のレースに臨んでほしい。
(Text : Masahiro Owari)