そこからは、アメリカGPのハミルトンの週末を象徴するレースになった。金曜のFP1から予選Q3まで、すべてのセッションでトップタイムを記録した速さに翳りはなく、ウルトラソフトのタイヤさえ予想以上に長持ちした。
2度目のオーバーテイクが必要になったのは19周目にタイヤ交換を済ませた後、スーパーソフトでステイアウトしていたマックス・フェルスタッペンに迫った時のことだ──。メルセデスとレッドブルには1秒以上のラップタイム差があるが、タイトルの可能性を残したベッテルを相手にする場合とは違って、慎重に攻めなくてはならない。
23周目のターン12でアウトからフェルスタッペンに挑んだハミルトンは、守るフェルスタッペンの意図を読んだようにラインをクロスさせてコーナー出口でレッドブルの左に進み、優れた加速を活かして再びクロスラインを取ってターン13のクリッピングポイントを奪った。
驚くべきは、この、フェルスタッペンとの攻防のラップにハミルトンがファステストラップを更新したこと──。慎重に、しかしコンマ数秒も失うことなく完成させたオーバーテイクだった。
「通常は、レースになるとメルセデスとの差が小さくなる」と期待していたベッテルだが、首位ハミルトンとの間隔は第2スティントでも徐々に広がっていった。
彼が「プランB(2ストップ作戦)」を口にしたのは35周目頃のこと。3番手を争うバルテリ・ボッタス、ライコネンが接戦を繰り広げつつ、ベッテルに追いついてきていたのだ。そして、チームも2ストップ作戦の可能性を計算していた37周目、4番手をいくフェルスタッペンがピットに入り、新しいスーパーソフトに交換し、その動きに呼応してフェラーリも決断。38周目にはベッテルもスーパーソフトに履き替えた。
フェルスタッペンの場合は6番手エステバン・オコンまで50秒の差があったため、ポジションを失うことはなかった。しかし、ベッテルの場合は2番手から4番手に後退。スーパーソフトではライコネンがFP2で14周走っただけということを考えても、大きな賭けだった。
それでも、守りから攻撃に転じる精神は、とりわけベッテルのようなドライバーには貴重だ。ライコネンを抑えつつ2番手を守るボッタスより1〜2秒速いタップタイムで走り始めた。