【F1技術解説】2024年型マシンの内部はどう変わったか(2)メルセデスのサスペンションとRBに見られるレッドブルの影響
2024年3月7日
2024年F1開幕戦バーレーンGPで、今季型マシンが本格的な走行を開始した。注目5チームが投入したマシンと前年型との違いを、F1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが観察、マシン細部の画像も紹介する(全2回)。
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■メルセデスW15

ここ数年のメルセデスマシンのエアインテークの形状は、2年前のW13の台形、散々な結果に終わった去年のW14の縦長、およびモナコからの長方形と変わり、今季のW15ではP字型が採用された(黄色矢印)。しかし開幕戦ではエンジン冷却に問題が起き、ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルのパフォーマンスに大きな影響を及ぼした。
メルセデスのマシン開発で興味深いのは、レッドブルが昨年先鞭をつけ、今季はフェラーリをはじめ多くのチームが追随したトレンド、つまり前方に突き出た下唇や、非常に高い位置のエアインテークなどの手法を採用しなかったことだ。
とはいえW15のエアインテーク下のアンダーカットも、非常に顕著なものだ。車体に沿って流れてくる気流の通路を可能な限り確保するために、吸気口を極限まで高くしている。さらにP字形状のエアインテークは、何本ものサスアームの存在が乱したり分離した空気を回収し、きれいな流れをアンダーカットに流す役割を果たしている。
また去年のハミルトンが訴えていた前過ぎるドライビングポジションを後方に移動させるために、燃料タンク形状を変更したことも注目ポイントだ (赤矢印参照)。
リヤサスのジオメトリも、プルロッドからプッシュロッドへと変更された(上の青矢印参照)。ライバルチームのトレンドからあえて逆行したのは、主に空力上の利点を優先したからだ。
マシン前部ではフェラーリと同様、ブレーキング時のダイブを軽減するためにアッパーアームの後ろ側が低めに取り付けられている。
さらに上の写真に見られるように、前側のアッパーアームの位置が後方に移動している(緑色矢印)。レッドブルが去年に続きRB20でも継続した傾向であり、間違いなく機械的な理由によるものだ(空力上の利点は明白ではない)。
■マクラーレンMCL38

すっかりオーソドックスな装置となったアンチダイブを、MCL38もフロントに装備している(アッパーアームの後ろ側が、前側よりも低い位置に取り付けられている)。
一方ステアリングロッドはフロントアクスル(前車軸)の後ろ、ロワアームの後側アームの高さに配置されている(比較写真参照)。MCL38は今季唯一、2020年のレッドブルRB16ですでに見られたこのソリューションを採用するマシンだ。
2枚の比較写真では、ステアリングラックが見えなくなっていることがはっきりとわかる(黄色で強調表示されている)。MCL38ではモノコックの前部に取り付けられず、内部のどこかに配置されているのだ。
一方エンジンカウル内部は、前モデルとあまり変わっていない
最も顕著な違いは、ラジエターの下のカーボンボックスのサイズだ(青矢印)。アンダーカットからできるだけ多くの空気が入るように、底部がより開いているのがわかる。補器類もより適切に統合され、すっきりした印象だ(ラジエター端のタンクもなくなった)。
こうした技術的な改善にもかかわらず、マクラーレンは開幕戦では苦戦を強いられた。前モデルと同様、MCL38は依然としてアンダーステア傾向が強く、低速コーナーで苦戦するマシンになっている。
■RB VCARB 01

RBはアルファタウリ時代の昨シーズン終盤にすでにリヤサスペンションをレッドブルRB19から借用し、今季はプルロッドフロントサスペンションを引き継いだ(去年のAT04まではプッシュロッドだった。上の黄色矢印)。
つまり、VCARB 01はレッドブルRB20、マクラーレンMCL38、そしてキック・ザウバーC44と同じフロントサス形式を備えていることになる。この形式は整備性の点ではあまり実用的ではない反面、空力面でのアドバンテージは大きい。
モノコックにも、レッドブルの影響は随所に見て取れる。たとえばアンダーカットの空気の流れを側面に向けるために、底面はV字型になった(黄色矢印)。しかし開幕戦バーレーンでのパフォーマンスは、姉妹チームには到底及ばず、1ポイントも獲得できずに終わった。
この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています
(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)
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1位 | オスカー・ピアストリ | 131 |
2位 | ランド・ノリス | 115 |
3位 | マックス・フェルスタッペン | 99 |
4位 | ジョージ・ラッセル | 93 |
5位 | シャルル・ルクレール | 53 |
6位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 48 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 41 |
8位 | アレクサンダー・アルボン | 30 |
9位 | エステバン・オコン | 14 |
10位 | ランス・ストロール | 14 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 246 |
2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 141 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 105 |
4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 94 |
5位 | ウイリアムズ・レーシング | 37 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 20 |
7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 14 |
8位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 8 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 7 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 6 |

