ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1第15戦ロシアGPの週末を甘口の視点でジャッジ。
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F1第15戦ロシアGPで、レッドブル・ホンダはマックス・フェルスタッペンに4基目のICE(内燃機関)、TC(ターボ)、MGU-H、MGU-K、3基目のES(エナジーストア)、CE(コントロールエレクトロニクス)を投入した。パワーユニット(PU/エンジン)の年間使用基数はICE、TC、MGU-H、MGU-Kは年間3基まで、ESとCEは年間2基までとなっているため、今回の投入によってフェルスタッペンはグリッドペナルティが科せられ、最後尾からスタートすることとなった。
昨年レッドブル・ホンダはペナルティを受けることなく、使用制限内の基数でシーズンを戦い終えることができただけに、今回のペナルティは残念なことだが、これはホンダのパワーユニットの信頼性・耐久性が昨年よりも落ちたわけではない。
フェルスタッペンの2基目のパワーユニットは第10戦イギリスGPでルイス・ハミルトン(メルセデス)と接触してクラッシュした際に、ICEにクラック(亀裂)が入っていることが確認されたからだ。
これはチームメイトのセルジオ・ペレスも同様で、第11戦ハンガリーGPでバルテリ・ボッタス(メルセデス)に追突された際にパワーユニットに大きなダメージを負って使用不可能となったため、Q1で敗退したオランダGPの予選後に4基目を投入している。
どちらもクラッシュという外的要因がなければ、年間3基を見据えながら、シーズン終盤に臨んでいたことだろう。
対照的にメルセデスは信頼性・耐久性に問題を抱えている。前戦イタリアGPで4基目を投入したボッタスだが、今回のロシアGPでは5基目を投入。当初は「後方からスタートするマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をブロックするためではないか?」とうわさされたが、レース後、ボッタスはそれを明確に否定した。
「そんなことはチームも僕もまったく考えていなかったよ。だって、僕が今回交換したパワーユニットは、モンツァで投入した4基目がもう終わってしまったなんだ」
ボッタスがモンツァで4基目を投入したのは3基目に問題が発生したためで、その4基目もトラブルを抱えてしまったというわけだ。
「これで僕が使用できるPUは今日使用したもの(5基目)と最も古いものの2つだけだ」と表情は暗かった。
この発言を受けて、レース後に行われたトト・ウォルフ代表の会見はルイス・ハミルトンの100勝に関する質問よりも、ボッタスのPUトラブルに集中。
「すでに3基目を投入しているハミルトンにも今後4基目を投入する可能があるのか」というメディアからの質問に対して、ウォルフは明確な答えを出さなかったものの、「いまのわれわれには絶対に0ポイントとなるレースをつくってはならないことだけは間違いない」と、ハミルトンが現在使用しているパワーユニットの信頼性に不安が生じてきた場合に、フェルスタッペン同様、ペナルティ覚悟で4基目投入もありえることを匂わせる発言をしていた。
そんな状況の中で、フェルスタッペンが最後尾から2位を獲得。ペナルティを受けていなくとも3位にしかなれないと考えていたレッドブル・ホンダにとっては、この2位はまさに勝利に匹敵する結果。逆にメルセデスはボッタスだけでなく、ロシアGPではニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)も4基目を投入。
ハミルトンが優勝して、チャンピオンシップ争いは2点差で逆転されたフェルスタッペンだが、パワーユニットの信頼性・耐久性を考えると、その差は「ない」に等しい。
(Masahiro Owari)