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クラッシュは「車体のセットアップが決まっていなかった」ことも一因。角田に焦りなし/ホンダ本橋CEインタビュー(1)

2021年8月10日

 シーズン前半最終戦の第11戦ハンガリーGPで、アルファタウリ・ホンダはピエール・ガスリーが6位、角田裕毅が7位チェッカー。第6戦アゼルバイジャンGP以来となる今季2度目のダブル入賞を果たした(2位表彰台のセバスチャン・ベッテルの失格裁定で、5、6位に繰り上がり)。


 角田は初日に満足に走れなかったことが響き予選16番手が精一杯だったが、レースではきっちりその苦境をはね返して見せた。初日のクラッシュについて角田自身は、「ガスリーに後れを取っていたので頑張った」とコメントしていたが、ホンダF1の本橋正充チーフエンジニアは、「それもあったかもしれませんが、最適なセットアップも見つかっていなかった。チームがドライバーの要求にどう応えるかを詰めていくことも必要だ」と、角田だけの非ではないという見方を示した。


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──スタート直後の多重事故は、ガスリーにはちょっと不運な、逆に角田選手にはラッキーな展開だったのではないでしょうか?


本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):どうでしょう。結果的にはそうなりましたが、ガスリーもスタート直後の混乱をうまく避けてくれました。その点は、よかったと思っています。一方の角田選手は、かなりうまく抜けて行った。あとでオンボード映像を見たのですが、本当にうまかった。あれで一気にポジションをあげてくれました。


──角田選手は早めのタイヤ交換で、かなり長いスティントを走り続けました。


本橋CE:あれだけの周回数、タイヤを持たせるのは本当にしんどかったと思います。タイヤと同時に燃料のマネージメントもしないといけない。しかし燃費走行をしすぎると、タイヤが冷えてしまう。そういう状況で、しっかり走ってくれたと思いますね。この週末は車体バランスをうまくまとめ切れていなかったのですが、レースでは他車との状況も含めてうまく走っていましたね。


──燃費的にも、かなりギリギリだった?


本橋CE:そうですね。最初からギリギリを狙っていったということもあります。1周の距離が短いこともあって、(周回遅れになって)1周少なく済む可能性もありました。タイヤマネージメントも大変ですから、それを見越した観点から燃料は軽いに越したことはありません。実際のレースはウエットで始まり、1周目に多重事故が起きたことで、状況が大きく変わった。ですので多くのチームが、事前の戦略通りの走りはできていなかったはずです。いずれにしても、燃費は厳しいレースでした。


──結果的にはドライバーふたりともかなりバラけた周回が多かったわけですが、当初はDRSトレインのなかで走り続けることを想定していたのですか?


本橋CE:はい。ですのでタイヤを守らないといけない、あるいは前後のクルマのペースにつられがちになる。そんなことを予想していましたが、実際にはフリーエアで走れることが多くて、戦略的なズレは出てきていましたね。

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第11戦ハンガリーGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

■角田とチーム、お互いが「うまく乗るためのセットアップをまだ見つけられていない」

──角田選手は終盤、ガスリーの後ろを走る展開で、大きくタイムを落としています。中継映像には映っていなかったのですが、何が起きたのですか。


本橋CE:コースオフしたんですね。タイヤが冷えたりして、それで挙動を乱したみたいです。ただそれもうまくリカバリーして、その後は通常のペースで走ってくれました。


──その意味からしても、初日に十分走れなかったのは残念でした。


本橋CE:ええ。セットアップについては、走ってナンボというところが多い。そこで最適なセットアップを見つけられなかったことで、のちのち予選、そしてレースでも影響が出てしまったかなと。


──前戦イギリスGPは、いい感じで週末を送れていました。それだけにあのクラッシュは、ちょっと残念でした。本人は「(あの区間で)ガスリーに後れを取っていたので頑張った」と言っていましたが。


本橋CE:それもあったかもしれません。ただドライビングスタイルだけでなく、それに合ったセットアップがあの段階では、いまいち見つかっていなかったと思いますね。クルマが若干ナーバスになっている感じもありました。その観点から言うと、ちょっとしたミスで挙動を乱したところもあった。車体側のセットアップもうまく決まっていなかった部分も、ひとつの要因かなと思います。

角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第11戦ハンガリーGP ターン4でクラッシュした角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)


──本人的には、決して無理してプッシュしたわけではないということですか。


本橋CE:そうですね。もちろん角田自身はいつも積極的に、毎回毎回F1というものを学んで、頑張っていろいろな挙動を探っていたりする。ある程度しっかり攻めていったなかで、クルマの限界をきちんと探ろうとして、ちょっと外れるとコースアウトだったりクラッシュに繋がる。そういう状況が、最近ちょっと多いかなという気がします。ですのでドライバーの運転の仕方など、その辺りをホンダも含めたチームとドライバー、お互いがもっとコミュニケーションをとって、ドライバーの要求にどう応えるかというところも詰める必要があると思っています。もちろんドライバーのテクニックも、今後いっそう期待しないといけないわけですけど。


──必ずしも角田選手に、焦りが見えるわけではない?


本橋CE:ないと思います。もちろん、今日は頑張ってやる、というのはありますよ。でもそれよりは、うまく乗るためのセットアップがまだ見つけられていないかなという気がします。


──ドライバーとチーム側、お互いがまだ見つけ切れていない?


本橋CE:そうですね。

角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第11戦ハンガリーGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)



(取材・まとめ 柴田久仁夫)


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