マクラーレン・ホンダがスパやモンツァで戦闘力がなかったのはホンダのパワーユニットだけが原因ではなかったが、ホンダは反論せずにグッと耐えた。それはホンダのパワーユニットがF1で最高の性能でなかったことも、また事実だったから。不平を言う前に、まずは自分たちのパワーユニットの性能を上げる。それがホンダのモチベーションとなり、今シーズンの新骨格パワーユニットへとつながった。
マクラーレンもまたホンダと決別して初めて自分たちの弱点と真剣に向き合うようになった。ダウンフォースを求めるがあまり、空気抵抗が多い空力となっていたことだった。パワーユニットの性能ばかりに頼ることなく、空力を見直して臨んだ今年のイタリアGPでは予選で4番手(ランド・ノリス)と5番手(ダニエル・リカルド)を獲得。
日曜日の決勝レースではフェルスタッペンとルイス・ハミルトン(メルセデス)がともにピットストップ作業で遅れた末に接触事故を起こしてリタイアしたことにも助けられたが、堂々の1-2フィニッシュを飾った。
▼ホンダと決別後のマクラーレンのイタリアGP予選成績
・2018年(ルノー)
13位(アロンソ)、20位(バンドーン)
・2019年(ルノー)
7位(カルロス・サインツJr.)、14位(ノリス)
・2020年(ルノー)
3位(サインツJr.)、6位(ノリス)
ホンダのスタッフは常々「いまのホンダがあるのは、マクラーレン時代にさまざまな経験をしたことが役立っている」と語る。
そのホンダとかつてパートナーを組んだマクラーレンの今井弘ダイレクターレースエンジニアリングもまた、「やっぱりあの時代にいろいろ勉強させてもらったことが効いてると思います」とホンダとの3年間が無駄ではなかったと語る。
フェルスタッペンのタイヤ交換作業でミスがなければ、今年のイタリアGPはリカルド対フェルスタッペンの戦いになっていただろう。そうなっていれば、今年のイタリアGPもホンダ対マクラーレンの2年連続の優勝争いが見られるはずだった。
それを見られなかったことは残念だが、ホンダとマクラーレンが頂点を目指して戦った今年のイタリアGPは、ホンダにとってもマクラーレンにとっても、さまざまな思いが交差した特別な一戦になったに違いない。
(Masahiro Owari)