「いや、まだわからないですよ。鈴鹿も初日は10番(アロンソが8番手)に入っていましたから……。とにかく、いまは自信を失っているので、まだ大きなことは言えません」
初日の2回のフリー走行を終えて、バトンが8位、アロンソが9位と2台そろってトップ10に入ったアメリカGPでのマクラーレン・ホンダ。冒頭のコメントは、「鈴鹿の不振を払拭できたのか?」という問いに対して語った長谷川祐介総責任者の答えである。
一夜明けた土曜日の予選。果たして、悪い予感は的中した。Q1でバトンがまさかの敗退となったのである。さらにアロンソもQ2で12番手にとどまり、2戦連続でマクラーレン・ホンダはQ3進出を逃した。
この結果に、長谷川総責任者は、次のように答えた。
「今回、セットアップを大きくいじって、結果的に(サスペンションに関しては)鈴鹿よりも硬いセッティングで2台を走らせたわけですが、これがクルマの性能を出し切った実力だったのか、逆に実力が出し切れなかったのか、正直、いまの段階ではわからない。日本GP前までの流れを断ち切ってしまっていなければいいんですけど……」
長谷川総責任者によれば、ドライバーはグリップ不足に悩んでいたものの、サスペンションのセッティングに関して不満はなかったという。ただ、ドライバーのフィーリングが必ずしもクルマの正しいセットアップとは限らない。そのへんが、長谷川総責任者も不安に感じているところではないか。
さらに今回の予選で気になるのが、戦略である。バトンがQ1落ちした直接の原因は、進路妨害ともとれるパーマーのブロックである。そのほかにも、長谷川総責任者によれば、「セクター3だけで3台のマシンをかいくぐってのアタックとなっていた」ことで、タイムが伸びなかった。
だが、そもそも1回目のアタックで4セットのスーパーソフトを持っていながら、なぜバトンはスーパーソフトを履かずにソフトでアタックしたのか疑問が残る。Q1の1回目のアタックでソフトを履いてコースインしたのはバトンのほかにペレスとオコンだけ。メルセデスAMGですら、スーパーソフトを履いていたほどである。さらに、ペレスとオコンも周りの状況を見て、アタックを完了させずにピットインしてスーパーソフトに履き替えていた。
Q1でソフトを使い果たしたバトンは、スタート時のタイヤを自由に選択できるアドバンテージがありながら、ソフトを選択することができないので、レースでも厳しい状況が待っている。
一方、12番手のアロンソは新品のソフトが1セット残っている。10番手でQ3に入るより、戦略面でのアドバンテージを生かせる12番手のほうがレースでは吉と出るかもしれない。
レースで良い結果を残すためには、速いマシンを開発し、それをサーキットで的確にセットアップし、ドライバーがミスなく運転するだけでは十分ではない。正しい戦略が重要である。セッティングばかりでなく、広い視野でレースを戦い抜いてもらいたい。
(Text : Masahiro Owari)