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メルセデスF1代表、上訴断念も怒りは消えず「エンターテインメントを優先させるスポーツを続けることはできない」

2021年12月18日

 メルセデスF1チームは、2021年F1アブダビGP終盤の規則の適用方法に関する抗議をスチュワードから認められず、上訴を検討したものの、手続きを進めないことを決めた。しかし、代表トト・ウォルフ、ルイス・ハミルトンをはじめとするチームメンバーたちは今も、あの決定的瞬間に正しいことがなされたとは考えていない。


 こういう形で上訴をとりやめる場合に、常に理由として記されるのは「スポーツの利益のため」という言い回しであり、ウォルフもそのような説明を行った。レース終盤のセーフティカーにまつわる手順が規則に記されたとおりではなく、それによってハミルトンが勝利とタイトルを失ったことにメルセデスは激怒し、F1関係者やファンからも批判が出ている。それを受けて12月15日にFIAは、この件について調査を開始すると発表した。


 その翌日に、上訴手続きを進めないと発表した後、ウォルフは記者会見を行った。そこで彼は、FIAに対し、責任を持って調査を行い、F1の規制と管理の方法に重要な変化を起こすよう強く求めると発言した。

2021年F1第22戦アブダビGP セーフティカーの後ろを走るルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021年F1第22戦アブダビGP セーフティカーの後ろを走るルイス・ハミルトン(メルセデス)

「委員会には、言葉だけでなく行動も期待したい。行動を起こすことへの責任を彼らに負わせるつもりだ」とウォルフは語った。


「エンターテインメントよりスポーツ面を優先するのではなく、その逆にスポーツ面よりエンターテインメントを優先するような競技を、我々は続けることはできない。技術的な分野であれ競技的な分野であれ、場当たり的な判断によって、強制的に要求を押し付けられるようなスポーツに、い続けることはできないのだ」


「従って、次のシーズンが始まる前に、すべてのドライバー、すべてのチーム、そしてファンが、何が認められて何が認められないかを理解できるよう、明確な対策を講じる必要がある」

■ハミルトンとともに下した、「上訴せず」という苦渋の決断

 ウォルフは、いつもより低いトーンで、センテンスとセンテンスの間に大きなインターバルを入れながら、非常に慎重に言葉を選んで話し続け、実に40分にもわたって会見を続けた。


 この件をFIA国際控訴審判所ではなく通常の法廷に持ち込んでいれば、メルセデスが勝利していたことは間違いないと、ウォルフは語った。


「法的な側面から見れば、もし通常の裁判所でこの件が裁かれていたら、我々が勝利していた可能性が非常に高い。自分たちが勝つだろうことはほとんど保証されていた」


「だが、FIA国際控訴審判所には、その構造に問題がある。FIAは自身に有利な判断を下してはならない。また、正しいことと、正義を得ることとは違うのだ」


「この経験から学ばなければならない。今後、あのような状況において、正しい判断がなされ、スチュワードの裁定がレギュレーションに応じたものになり、それが国際控訴審判所であろうとCAS(スポーツ仲裁裁判所)であろうと、法廷での判決が、すべての参加者に対して公平かつ中立な方法で下されるようにするには、どうすればよいのかだ」


「彼ら(FIA)は正しいステップを踏んだと思う。会長は世界モータースポーツ評議会に働きかけ、アブダビのレースで起きたインシデントを調査し、今後このような事態を避けるために委員会を設置することを決定した。我々全員がその決定を歓迎している。簡単なことではなかったと思う」


「FIAの声明は、おそらく統括団体の性格を理解した上で見れば、強力で堅実なものだと思う」


「レーサーとしては、全面的に過ちを認めてほしいと思っているが、それは今の段階では不可能だ。我々は一歩正しい方向に踏み出したと思う。日曜夜の失敗の大きさを考えれば、ささやかな一歩ではあるが、それでも前進であることには変わりない」

FIAロゴ
FIAロゴ

 上訴手続きを進めないという判断は、ハミルトンの意向によるものでもあったと、ウォルフは言う。


「彼も我々も、法廷で世界チャンピオンになりたいとは思っていない。だが、我々は日曜に極めて不当な扱いを受けた。単にまずい判断が下されただけの話ではない。規則を自由に解釈し、それによってルイスが犠牲になったのだ」


「彼にとっても、我々チームにとっても、上訴を取りやめることはとてつもなく辛い決断だった。我々は不当な扱いを受けたのだから」

2021年F1第22戦アブダビGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 この件で、レースディレクターのマイケル・マシに批判が集まっている。ウォルフは「レースディレクターには極めて大きなプレッシャーがかかっており、その一部は我々の責任だ」と認める一方で、今もマシに対する怒りが消えていないことを示唆した。


「マイケル・マシと(この件について)会話することに興味はない。レースの最後の4分に下された判断によって、ルイスは手にするはずの世界タイトルを奪われたのだ」



(Grandprix.com/autosport web)


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