フリー走行1回目でエンジンブローし、エンジンを乗せ変えたフリー走行2回目は最下位の20番手。多くの人々がスペインGPの2日目以降のアロンソに、多くは期待していなかったのではないだろうか。
しかし、ホンダの長谷川祐介総責任者は「Q3には行けると思っていました」という。それは初日、アロンソにはトラブルは起きていたものの、チームメートのストフェル・バンドーンはトラブルフリーで予定していたプログラムを消化できたことだった。
アロンソのトラブルと順調なバンドーンの走りには関連はないように思われるが、ホンダにとっては金曜日のバンドーンの走行データは非常に重要だった。
それはフリー走行1回目から2回目にかけてエンジンを積み替えたアロンソのパワーユニットは、エンジンのセッティングがまったく調整することができないまま走らせるしかなかったからだ。
「現在のパワーユニットはターボなので、過給圧、燃料、点火時期など、構成するパラメーターがさまざまあり、それをこの短時間で合わせ込むのは非常に大変なんです」と長谷川総責任者は語る。
そのエンジンのセッティングを金曜日から土曜日にかけて調整し直す作業を助けのは、バンドーンの走行データだった。もちろん、そのデータを正確に見極め、正しいセッティングを行ったのは、ホンダのエンジニアたちである。
「午前中まではまだセッティングが煮詰まっていない部分がありましたが、午後に向けて再び改善した結果、予選では珍しく問題はなかったと言っていました」というホンダのPUを駆ったアロンソはQ1を12番手で通過すると、Q2は10番手に食い込み、今シーズン初めてQ3に進出した。
アロンソの好調な走りはまだ続いた。Q3ではさらに自己ベストをコンマ2秒刻んで1分21秒048をマーク。予選7位を獲得した。
Q3進出は予想していた長谷川総責任者も「7位というのはかなり良い結果です」と驚いていた。それを実現させたのは、アロンソの腕に因るところが大きかったことは言うまでもない。
「先週オーバルを走ったことで、ストレートで速く走るコツを学んだのかもね!(笑) でも、7番手はサプライズだ」というアロンソ。
マクラーレン・ホンダの予選7位は、昨年のハンガリーGP以来の最高位で、そのハンガリーGPで7位を獲得したのもアロンソだった。
またマクラーレン・ホンダの最後のQ3進出は、昨年の最終戦アブダビGPでのアロンソの予選9位以来。そして、今シーズンの初めてのQ3進出もアロンソ。
アロンソの、アロンソによる、アロンソのためのスペインGP予選だった。
(Text : Masahiro Owari)