F1バーレーンGPの予選を終えた長谷川祐介ホンダ総責任者は「昨日(金曜日)調子が良かっただけに、残念な結果です」と語った。
金曜日のフリー走行2回目で、メルセデスに次ぐ3番手のタイムをマークしていたジェンソン・バトン。もちろん各マシンが異なる燃料を搭載しており、ベストタイムを叩き出したタイミングも違うため、マシンの実力を正確に表したものではないことは、わかっていた。しかし予選Q1を終えた段階でも、バトンは9番手にいただけに、Q2開始後ふたりめの脱落者となるとは思っていなかったのだろう。
バトンに何が起きたのかを分析する前に、この日のホンダの戦いぶりを振り返りたい。金曜日の走行を終えた長谷川総責任者は「予選では出力を出し切るために、点火時期などのセッティングを見直してきました。これまでもやってきたことですが、今回さらに煮詰めてきました」と語り、ホンダは金曜日のデータをもとに、予選に向けて最後の調整を行った。
ところが土曜日のフリー走行3回目で、ストフェル・バンドーンが、なかなかガレージから出られないトラブルが起きた。ただし、これは「ちょっとしたネジの緩みによるオイル漏れで、すぐに修復」(長谷川総責任者)。なかなかガレージを出なかった理由は「もともとセッションの序盤はガレージで待機する予定だったから」というものだった。
フリー走行3回目は13位で終えたバトン。そのセッションで、Q3進出ラインとなる8番手のタイムをマークしたエステバン・グティエレス(ハース)との差はコンマ4秒。予選Q1では9番手までポジションを上げ、好調をキープしていた。
ところがQ1では、まだスーパーソフトを1セットしか使用していないウイリアムズのフェリペ・マッサが12番手につけており、すでに2セット使用したバトンを逆転する可能性が高かった。さらにQ1でバトンは若干アンダーステアに悩まされていた。そこでバトンと担当レースエンジニアは、Q2へ向けてフロントウイングのフラップを上げたのである。
だが、これが結果的に失敗だった。Q2でコースインしたバトンのマシンは、今度は真逆のオーバーステア症状を抱えて、満足なアタックができない状況となった。しかも1回目のアタックを終えて14番手となったバトンは、タイムの遅いドライバーから次々と脱落する新予選システムによって、2回目のアタックを行う余裕もなく、わずか1回のアタックでQ2敗退となった。
しかし「2回目のアタックができていても、今回もQ3進出は厳しかったでしょう」と長谷川総責任者は振り返る。「10番手ぐらいには行けたかもしれませんが、ここのようにストレートが長いサーキットでは、我々の実力が足りておらず、まだまだ厳しい。この結果は実力を表したものだと受け止めています」と長谷川総責任者は言う。
砂塵が舞うバーレーン・インターナショナル・サーキットは、トラックコンディションが刻々と変わるため、セットアップ変更が難しいコースだ。しかもトワイライトレースとなった2014年以降は、フリー走行3回目が日中に行われ、予選は日没後となるため、さらに路面状況が読みにくい。バトンは、この変化に対応しきれなかった。
残念な結果に終わったバーレーンGPの予選において、希望もあった。それはフェルナンド・アロンソの代役として出場したバンドーンがQ1を突破し、バトンを上回る12番手を獲得したことだ。
「ストフェルに関しては合格点じゃないですか。クルマのポテンシャルを、きちんと引き出していました。あとは明日のレース。ただ、ストフェルはレース経験が豊富なので、やってくれると思います」
Text : Masahiro Owari