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F1技術解説:アストンマーティン低迷と復調の理由(1)方向性の誤りと2024年向けテストの影響で起きたスランプ

2023年11月16日

 南北アメリカ3連戦の最終戦F1サンパウロGPで、フェルナンド・アロンソが8月のオランダGP以来ほぼ3カ月ぶりに表彰台に立った。これははたしてアストンマーティンの復調を意味するのか。F1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが分析、マシン細部の画像も紹介する。


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■シミュレーションツールがもたらした開発方向性の誤り


2023年F1第21戦サンパウロGP アストンマーティンAMR23/フェルナンド・アロンソ
2023年F1第21戦サンパウロGP アストンマーティンAMR23/フェルナンド・アロンソ

 フェルナンド・アロンソの見事な走りのおかげで、アストンマーティンは夏から続いた低迷に終止符を打った。しかしそれが一時的な終止符である恐れはないだろうか。


 マクラーレンとメルセデスが堅実な開発プログラムのおかげで戦闘力を向上させてきた一方で、アストンマーティンはレースを追うごとに順位を落とし続けてきた。


 その理由は、何か? 最大の問題は、開発に用いられたシミュレーションツールが不完全だったことだ。そのデータに基づいて開発を進めた空力担当エンジニアたちは、完全に間違った方向に進んでしまったのだ。投入されたアップデートで期待された効果が得られなかっただけでなく、それまで比較的安定していたマシン挙動も崩れてしまった。


 アストンマーティンのサブテクニカルディレクターであるエリック・ブランダンは、その経緯をこう説明する。


「私たちは空力シミュレーションツールによってある方向に押しやられ、その間違った道を長い間たどってしまった。しかしアメリカGPで投入した修正版で、何とか問題を修正できたようだ」。

■2024年に向けての実験

 下の4枚の画像が示すように、開幕戦バーレーンからカナダ、ベルギー、そしてアメリカと、アストンマーティンの空力エンジニアたちはシーズン中に何度も、サイドポンツーン下部、およびフロアエッジに形状変更を加えてきた。グランドエフェクトマシンではこの領域が最も空力効率の最適化に効くはずだが、彼らはずっと期待した数値まで達せずにいた。

アストンマーティンAMR23(バーレーン、カナダ、ベルギー、アメリカの比較)
アストンマーティンAMR23(バーレーン、カナダ、ベルギー、アメリカの比較)


 アメリカGPでの大幅アップデートも、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールのマシン挙動への不満を解消することはできなかった。ところがセッティングを完全に変え、ピットレーンからスタートした決勝レースでの2台は、素晴らしいペースでライバルたちを追い抜き、あっという間に順位を上げていった。


 実はアストンマーティンは、数戦にわたり、フリープラクティスでは来年に向けてのデータ収集に専念しており、それが低迷の一因になっていた。パフォーマンスディレクターのトム・マッカローは、その間の事情をこう説明する。


「アメリカ前後の数戦は、かなり矢継ぎ早にアップデートを投入してきた。しかしその時期はちょうど、スプリント・フォーマットにも重なっているタイミングだった。スプリントの週末では、フリー走行は60分のセッション1回だけだ。そのためアップデートの確認や、マシンセットアップは、非常に難しい状況だった」


「加えて、これらの新しい仕様は、来年のマシンに向けて検討されているいくつかのアイデアのための研究開発でもあった。つまりいくつかのレースでは結果を犠牲にして、来季の開発に専念していたのだ。しかしこの週末は、将来のためのデータ収集よりも、このサーキットのレースで速さを出すことに集中した。それが結果的に、今のマシン性能を最大限に引き出す方法をよりよく知ることにつながったのだ」


 マクラーレンとほぼ同数の25ポイントを獲得したアロンソとランス・ストロールのブラジルでのパフォーマンスは、この説明を裏付けていると言えるだろう。


(第2回に続く)



(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)




レース

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