ホンダにとって、鈴鹿で行われるF1日本GPはホームグランプリであると同時に、ホームコースでのグランプリ。かつては『鈴鹿スペシャル』という特別なアップデートを用意して臨んだものである。しかし、今年の日本GPでホンダがマクラーレンの車体に搭載したパワーユニットは、マレーシアGPで使用しただけでなく、その前のシンガポールGP、イタリアGPでも使用した『スペック3.7』だった。つまり、ホンダは地元で開催されたグランプリに、ユーズドのPUを搭載して臨んだ。
ホンダが『鈴鹿スペシャル』も、『スペック3.7』に代わる新しいPUを投入しなかったのには、2つの理由がある。ひとつは、今年はレギュレーションで年間4基までしか、ペナルティなしで使用できないからだ。
すでにホンダは5基以上のPUを使用しているため、いかに性能を向上させた『鈴鹿スペシャル』を日本GPで入れても、大幅なグリッドダウンペナルティを受けることになる。つまり、『鈴鹿スペシャル』を鈴鹿で入れてもメリットはないのである。逆説的に言えば、鈴鹿に新PUを入れないことが、鈴鹿スペシャルなのである。
ホンダが鈴鹿に新PUを投入しなかったもうひとつの理由は、ペナルティを受けてまで入れるほどの性能向上が確認されていないからだ。
スペック4は間に合わなかったが、スペック3.7でも十分戦えることは、マレーシアGPでストフェル・バンドーンが7位に入賞していることでもわかる。
「夏休み明けのレースから、トラブルなしで週末を戦うことができれば、ある程度の結果が出せるようになった」と長谷川祐介ホンダF1総責任者は語る。
スペック3.7の継続使用に、マクラーレン・ホンダとしての最後の鈴鹿となる日本GPで、確実にポイント獲得を目指そうとするホンダの強い気持ちが感じた。
(Masahiro Owari)