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【F1チーム別技術レビュー:フェラーリF1-75】シーズン中の技術指令も打撃に。戦闘力低下を招いた3つの要因

2023年1月14日

 F1技術レギュレーションが大幅に変更された2022年に主要チームが導入したマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが評価、それぞれの長所・短所、勝因・敗因について分析した。レッドブルRB18技術レビュー(1) と(2) に続く今回は、フェラーリF1-75に焦点を当てる。


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 シーズン序盤は圧倒的な強さを誇ったフェラーリF1-75は、なぜ徐々に戦闘力を失っていったのだろう。


 2017年の技術規約変更の時と同様、フェラーリは今回も大胆かつ独創的な車体を造形した。上部をくり抜いた巨大なポンツーンを有するF1-75は、開幕時から十分に速かった。さらにアゼルバイジャンでドラッグの発生を抑えるウイングを導入してから、その速さにはさらに磨きがかかった。

フェラーリF1-75 リヤウイングの変化
フェラーリF1-75 リヤウイングの変化

 ダウンフォースの大きさを重視し、低速コーナーから俊敏に立ち上がる。その加速力は、短いストロークのギヤシフトとコンパクトなターボによる素早いレスポンスによるものだ(一方、フェラーリ066/7の回生エネルギーは、ホンダよりも早く切れてしまい、ストレートの終わりで追いつかれてしまう)。


 しかしフェラーリの戦闘力は、特に日曜日の決勝レースで少しずつ色褪せていく。タイヤ温度を素早く上昇させる特性のおかげで、予選では11回最速タイムをマークした。しかしブダペスト、スパ、ザントフォールトでは、リヤタイヤが決勝レースで過熱し、シャルル・ルクレールとカルロス・サインツは、熱劣化を止めるためにアクセルから足を離さざるを得なかった。シーズン序盤(特にイモラやマイアミ)には左フロントタイヤの消耗が早かったが、その症状がモンツァで再発した。


 2022年シーズン中のフェラーリの衰退は、主に3つの要因で説明できるだろう。

■第1の原因:開発の方向性を誤った


フェラーリF1-75 2022年F1フランスGPで導入されたフロア
フェラーリF1-75 2022年F1フランスGPで導入されたフロア

 マラネロの関係者によれば、フランスGPで導入された改良型フロアは、絶対的なダウンフォースは大きくなるものの、車体のバランスを悪化させてしまうとのことだった。理論的なダウンフォースが増えたのと引き換えに、操作性を失ったのだ。


 しかし日本GPでの検証の結果、彼らはあくまで「自分たちの開発の方向性は正しかった」と断言した。そうだろうか。実際にはF1-75は、アップデートを繰り返しても、ペースの面で目立った向上はなかった。もし開発が問題でないと彼らが主張するのなら、なぜフェラーリはシーズン後半に勝てなかったのだろうか。

■第2の原因:技術指令書の影響

 タイヤの早期摩耗は、ベルギーGP以降からより顕著になった。そしてFIAが技術指令TD39によって、フロア底面の摩耗や剛性をより厳密に定義したのは、まさにこの週末でのことだった。実際フェラーリは、以下のF1i独占写真で示すように、プランクのアンダーボディへの取り付け方法等を見直している。

フェラーリF1-75 フロア底面の変化
フェラーリF1-75 フロア底面の変化


2022年F1エミリア・ロマーニャGP カルロス・サインツのフェラーリF1-75
2022年F1エミリア・ロマーニャGP カルロス・サインツのフェラーリF1-75

 フェラーリはこの改良まで、フロアとモノコックの間にわずかな隙間があったのではと疑われている。この空洞には、地上高が非常に低くても縮んで衝撃を吸収することができる、一種のメモリーフォームと呼ばれる吸収材が充填されている疑いがあったのだ。失格を避けるためにこのデバイスを取り去った結果、フェラーリはフロントタイヤの劣化をさらに悪化させたということだ。

■第3の原因:パワーユニット性能を生かし切れなかった

 スペインGPとオーストリアGPの間にルクレールとサインツは合計3度のエンジントラブルに見舞われた。バクーでのトラブルの後、ルクレール車にはカナダで新しいパワーユニットが投入され、グリッド後列からのスタートを余儀なくされた。シーズン全体で、ルクレールは6基のV6エンジンと同数のターボチャージャーを使用したが、レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、ICEは5基、ターボチャージャーは4基にとどまっている。


 前述したように、066/7のターボはライバル製PUに比べて小型である。このため加速性は良いが、回転数を高くする必要がある。その影響を抑えるために、フェラーリはシーズン途中でエンジンの出力を故意に落とさざるを得なかった。

フェラーリF1パワーユニット(2019年、2021年、2022年)
フェラーリF1パワーユニット(2019年、2021年、2022年)

 ハンガリーやベルギーでの対レッドブルで見た時の劣勢は、タイヤの劣化や開発スピードの遅れが原因だった。最小規定重量にかなり近い状態で生まれたF1-75は、開幕時にかなり重かったレッドブルが減量するにつれ、相対的な戦闘力を失っていった。


 確かに今季の敗戦の責任は、マッティア・ビノット代表にある。しかし一方で、速くてパワフルなマシンを生み出したのも、優れた技術者でもあるビノット代表の功績である。従って、彼の退任は当分の間、跳ね馬を弱体化させるかもしれない。


 しかしジョン・エルカーン会長は、リーダーとしてのビノットを評価せず、外すことを決めた。フェラーリの立て直しは、新代表フレデリック・バスールの手腕にかかることになる。



この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)




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