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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第15回】ラインアップは来季も継続。ニキータ&ミックの課題が明確になったロシアGP

2021年10月7日

 2021年シーズンで6年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。第15戦ロシアGPを前に、ハースは2022年もニキータ・マゼピンとミック・シューマッハーのふたりを起用することを発表した。今年は厳しいシーズンを過ごしているが、マゼピンもシューマッハーも成長を続けている。今回はそんな彼らの現状と、雨に翻弄されたロシアGPの現場の事情を小松エンジニアがお届けします。


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2021年F1第15戦ロシアGP
#9 ニキータ・マゼピン 予選19番手/決勝18位
#47 ミック・シューマッハー 予選17番手/決勝リタイア


 ロシアGPの前に、2022年もニキータとミックのラインアップを継続することが発表になりました。今回はロシアGPを振り返りつつ、ふたりの現状や今後の課題をお話ししようと思います。


 まずミックですが、彼の場合は長所がたくさんあるので、これからは短所をどんどん減らしていってほしいです。たとえば前回も書いたように、ダウンフォースを削った状態でブレーキを強く踏まないといけないような特性のサーキット(バクーやモンツァなど)でブレーキングに自信が持てないというのもひとつです。


 もうひとつ例を挙げるとすれば、これは何度か書きましたが、たまに週末の走り出しが慎重になりすぎる点です。ミックはこれまでフリー走行でクラッシュもしてきましたが、クラッシュを避けるためにマージンを取りすぎて走っていたら本当のクルマの問題点が見えなくなります。そういう意味ではロシアGPのFP1は遅すぎました。出だしから限界で攻めろとは言いませんが、ある程度限界の近くで走らないとクルマのセッティングもできないので、このあたりのバランスを取ることが大事です。


 またロシアのFP2で、レース時と同じ量のガソリンを積んで走った時のタイムが悪かったんです。しかし、レースになると第2スティントで突然タイムがよくなりました。今までも何回かこういうことがありましたが、これも改善の余地があります。レースでしっかりと走るためには準備(サーキットに来る前にやること、サーキットに来てからはフリー走行など)をもう少し高い次元でやらないといけません。

ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第15戦ロシアGP ミック・シューマッハー(ハース)


 第2スティントではタイムがよくてすぐにニキータに追いつきましたが、それまでフリーエアーで走っていたタイムはニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)よりも早かったです。金曜日とは比べ物にならないようなペースで走れたのはよかったですが、レースでこういうペースを発揮できるのではれば、金曜日もそれくらいのペースで走れるようにならないといけません。


 批判ばかりしているように聞こえるかもしれませんが、全体としてはミックはよくやっていると思います。言われたことをきちんと聞いて実行しようとしているし、落ち着いています。雨の予選でも出だしは遅かったけれど、最後のランでは想定通りにラップライムを縮めてきてくれました。ただ次のレベルに到達するためにも、ここで挙げたようなことを意識して残りの7レースを戦っていってほしいです。

小松礼雄エンジニアリングディレクター&ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第15戦ロシアGP 小松礼雄エンジニアリングディレクター&ミック・シューマッハー(ハース)

■限界を知るためにも場数を踏むことが最優先のマゼピン

 ニキータについては、これも以前から書いていることですが、彼にはクルマに何が起きているのかを感じ取る感覚はありますし、速く走る身体的能力もあります。でも問題なのは、その感覚があっても自力で限界を掴みきれないことです。それがロシアGPの予選ではミックとの大きなタイム差となって現れてしまいました。


 予選Q1の終盤、ニキータは残り9秒の時点で最後のアタックに入りました。セッションが進むにつれてコンディションは改善していたので、残り23秒でアタックに入ったミックよりもいい状況です。それにミックのタイヤは4周目、ニキータは2周目だったので、タイヤに関してもおいしいところを使えているはずだったのですが、終わってみればミックとは約4秒差でした。


 データを見てみると、たとえば高速のターン3でのふたりの最高速は大きくかけ離れていました。ミックはほぼ全開で走れていたのに対してニキータは大きく後れをとっています。またターン4以降はほぼどのコーナーでも最低車速がミックを下回っていました。つまり刻々と変わる路面の変化についていけず、限界がわかっていないのです。インターミディエイトタイヤに熱が入ってタイヤ自体のグリップも変わっているのですが、そのあたりもやはり掴み切れていないんですね。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第15戦ロシアGP ニキータ・マゼピン(ハース)


 もうひとつの例はFP2です。この週末は事前に雨の予報が出ていたので、万が一土曜、あるいは日曜の午前に予選をできない場合はFP2の結果がそのままグリッドに反映される可能性がありました。その場合に備えて僕たちはFP2でソフトタイヤを2セット使って予選と同じアタックを行いました。1セット目での走行を終えた時点でミックは1分36秒2、ニキータは1分37秒1でした。ニキータは、ミックのタイムを聞くまでは自分がよく走れていると思っていたようです。


 しかし走行を終えてミックのタイムを見て、そこで初めて『あと1秒速く走れるんだ』ということを理解するわけです。彼には身体的な能力はあるので、最終的には1分36秒099というミックと同等のタイムを出すことはできましたが、少なくともこれくらいのタイムをチームメイトの走りを見なくても自分で出せるようにならないといけないですね。今後チームとしてはシミュレーターも含めてニキータにとにかく場数を踏ませて改善を図りたいと思います。


 ちなみにニキータは、ロシアでレースをできたことがやはりとても嬉しかったみたいです。天気が悪くて申し訳ない、なんてチームのいろいろなメンバーに謝っていましたし。彼のせいじゃないと思うんですけどね(笑)。母国グランプリを開催できて、そこで自分が走れるという喜びが溢れ出ていて、なんか微笑ましかったです。

ニキータ・マゼピン(ハース)&小松礼雄エンジニアリングディレクター
2021年F1第15戦ロシアGP ニキータ・マゼピン(ハース)&小松礼雄エンジニアリングディレクター

■レース終盤の戦局を変えた雨。予想外の状況を迎えるも、ドライバーの好判断が奏功

 この週末は予選、決勝と雨に見舞われました。予選を振り返ると、僕たちはQ1で1セットのタイヤで走りきることをせず、2セット使用しました。ウエットの予選というのは何が起こるかわからないのでとにかくコース上にいてタイムを出せる時に出すというのが基本です。その際、1セットのタイヤがどれくらい持つかを正確に判断して、コースが一番いい状態の時にタイヤも一番おいしいところで使えるようにします。


 今回は1セット目のタイヤ温度もいまいちで、ミックは前にクルマにも引っかかっていたので早めにタイヤ交換をしました。ニキータは前に誰もいない状態で走れていたので、1セット目を引っ張って、2セット目で2回タイムアタックができる時間だけ残してタイヤ交換をしました。タイヤ交換のタイミングという面ではうまくいったと思っています。


 タイヤ交換をせずに走り続けるかどうかは、各チームの競争力によって変わってくることでもあります。たとえばトップチームであれば、Q2やQ3を見越して4セットしかないインターミディエイトタイヤを使わなければいけないので、Q1で2セットも使う余裕はありません。彼らはそれなりのタイムを出せばQ2に進めるので、その機会を逃さないためにも1セットのタイヤで走り続けることが得策なのです。


 今年のハースはクルマが速くないので、タイヤの一番いいところを過ぎた状態で走り続けると、たとえドライバーが完璧なドライビングをしてもQ2には進めません。僕らがウエットの予選でひとつでも上のグリッドを目指すにはすべて(路面状況が最もいい時にタイヤも最適な状態に持っていき、ドライバーもその1周をミスなく走る)が完璧に合わなければいけません。そういう意味ではミックはよくやってくれたと思う反面、ニキータには大きな課題が残りました。

ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第15戦ロシアGP ミック・シューマッハー(ハース)


 レースはドライで始まりましたが終盤に雨が降り、大きく状況が変わりました。ミックは残念ながら油圧トラブルにより32周目にリタイアとなりましたが、第2スティントでは先にも書いた通りいいペースで走ってくれました。第1スティントでは左フロントタイヤにグレイニングが出たりもしましたが、前を走っていたラティフィがピットインした後は、フリーエアでしっかりペースも上げて走れました。


 一方でニキータは雨のタイミングでいい判断をしてくれました。レース終盤の46周目くらいにターン5のあたりから雨が降り始め、先頭のランド・ノリス(マクラーレン)が47周目に入ったところで雨の範囲が広がってきました。そこまでは予想通りだったのですが、雨量が増えるとは思っていなかったので、ニキータには「このまま走り続ける」と伝えました。この時点ではこれがは正解で、オンボード映像を見てもあまり水煙も上がっていませんでした。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第15戦ロシアGP ニキータ・マゼピン(ハース)


 ニキータは「インターミディエイトタイヤに変えたい」と言っていたのですが、僕はインターで走らせるほどコース上に水があるとは判断していなかったのです。その間にも徐々に雨の範囲が広がって、セクター3以外の路面が濡れている状態になりましたが、まだインターに交換する状況とは思えませんでした。しかし同時にニキータの摩耗の進んでいるハードタイヤで最後まで走るのは難しいだろうと思ったので、実は僕は「ソフトタイヤに交換しないか?」とニキータにレースエンジニアを通じて提案しました。


 それでもニキータが「インターだ」とはっきりと言ったので、彼を信じてインターへの交換を決めました。最終的にニキータがピットへ入ってきたのは47周目(周回遅れなのでチームとしては46周目)で、全体のなかでも4番目と非常に早く、これ以上ない最高のタイミングだったと思います。結果的にニキータの判断が正解でしたし、この難しい状況でよくやってくれました。これには自信を持って次につなげてほしいと思います。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第15戦ロシアGP スペシャルカラーのヘルメットで母国グランプリに臨んだニキータ・マゼピン(ハース)



(Ayao Komatsu)




レース

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