2021年F1第8戦シュタイアーマルクGPの予選が終了した後、モーターホームの前でスタッフたちを労うホンダF1の山本雅史マネージングディレクターのもとに、ポールポジションを獲得し、テレビ局のインタビューへ向かう途中のマックス・フェルスタッペン（レッドブル・ホンダ）が駆け寄り、握手していった。

　もちろん、両者ともに笑顔だった。しかし、その笑顔にはレッドブル・ホンダとして過去5回獲得したポールポジションとは違う、どこか余裕が感じられた。

「もちろんレッドブルのホームコースで、チームにとって初のポールポジションを獲得できたことは素晴らしいし、とてもうれしい。このポールポジションは、今年、予選のパフォーマンスを大きく改善できている証拠だ。今週末は初めから調子がよかったけど、それでも予選に向けていくつかの変更を行った。それがQ3の1回目のアタックがうまくいった理由。このサーキットはコーナーの数は少ないんだけど、小さなミスで簡単にコンマ数秒を失うので、うまくラップをまとめるのが難しいんだ。こんなサーキットはあまりないから、ドライバーとしてはF1にデビューした当初から好きなコースだった。ようやく、ポールポジションを獲れてうれしい」

　フェルスタッペンがいかに素晴らしいラップを刻んだのかは、2番手のバルテリ・ボッタス（メルセデス）以下につけたタイム差を見るとわかる。今回、フェルスタッペンとボッタスの差は0.194秒もあり、この差は2番手のボッタスから5番手のセルジオ・ペレス（レッドブル・ホンダ）までの4人がひしめき合うほど大きな差だった。

　また全長が短く、全開率が高いレッドブルリンクはタイム差が生じにくい。前戦フランスGPのフェルスタッペンと2番手ルイス・ハミルトン（メルセデス）のタイム差は0.258秒と、今回よりも大きいように見えるが、ラップタイムを換算して比較すると、フランスGPは100.28%で、今回は100.30%とじつは差は広がっている。

　ホンダにとって、オーストリアGPでのポールポジションは1987年（ネルソン・ピケ／ウイリアムズ／エステルライヒリンク）以来であり、レッドブルにとってはフェルスタッペンが言っているように初めての快挙。

　さらにホンダが2戦連続でポールポジションを獲得するのは昨年の最終戦アブダビGPと今年の開幕戦バーレーンGP以来だが、シーズンをまたがずに1シーズンで2戦連続でポールポジションを獲得するのは、じつはタイトルを最後に獲得した1991年の最終戦以来。レッドブルにとっても2戦連続ポールポジションは最後にタイトルを獲得した2013年以来のこと。つまり、いまのレッドブル・ホンダにはタイトルを獲得できる速さが完全に備わっていると言っていい。

　レッドブルリンクはホンダがF1に復帰してから初優勝を遂げたサーキット。あれから2年、その思い出の地で、フェルスタッペンもレッドブル・ホンダも、ひとまわりもふたまわりも大きく成長した姿を披露していた。

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