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【2017年F1特集】ヒュルケンベルグは新天地でアロンソになれるのか

2017年1月7日

 トップチームへの移籍のチャンスを逃してきたニコ・ヒュルケンベルグは、これまでF1キャリアの大半を中団のなかで過ごしてきた。しかしルノーに加入した今、彼自身がステップアップを果たすことができれば、大きく飛躍できるかもしれない。


 ヒュルケンベルグがルノーでトップドライバーに成長するには何が必要なのか、英AUTOSPORTの編集長エド・ストローが分析する。

■ヒュルケンベルグが“できたはず”のことをペレスが映し出した

「停滞」──ヒュルケンベルグのF1キャリアを言い表すとしたら、現状ではこのひと言に尽きる。けれども、もし彼が長きに渡るだろう挑戦を受け入れることができるなら、ルノーへの移籍でキャリアが大きく動く可能性がある。


 ヒュルケンベルグがフォース・インディアに貢献してきたことは、疑いようもない事実であるが、それ以上でもそれ以下でもなかった。3年に渡ってともに仕事をしてきたセルジオ・ペレスは、より効率良くパフォーマンスを発揮しており、2016年の合計得点数では29ポイントも上回る。


 ヒュルケンベルグはもっとうまくやるべきだったし、本来の実力はもっと高い。ペレスのせいではない。彼もまた素晴らしいF1ドライバーであり、マクラーレンでの悪夢のような時代から驚くべき立ち直りを見せた。ただ、彼はヒュルケンベルグがどれだけのことをすべきだったか、できたはずだったかを、映し出してしまったのだ。


 ではなぜ、こうなってしまったのだろうか? 良い質問だ。しかしその答えは彼がどれだけ速いか、少なくとも速かったか、またトップチームのマシンで素晴らしい仕事をする能力があるか否かに関係があるとは限らない。

2015年ル・マン24時間 ニコ・ヒュルケンベルグ
2015年ル・マン24時間 ニコ・ヒュルケンベルグ


 ヒュルケンベルグは、中団の上位で、参考タイムを叩き出すだけの存在になってしまったようだった。ときにはフェラーリを含むトップチームのシートを幾度となく逃したことに苛立ち、モチベーションが大きく損なわれたかのように見えた。ここ数年の中でも最も強い「呪い」が発動したのが、2015年にル・マン24時間で勝利を挙げた後だったのは、偶然だろうか?(2015年ハンガリーGP以降、シーズン終了まで5戦をリタイア) ドライバーもまた人間だ。私たちの誰もが苦しむような精神的な脆さに、支配されることもある。

■ルノーは絶好の条件を備えたまれなチーム

 原因が何であれ、ヒュルケンベルグはトップチーム加入候補者としてのランクを下げることとなった。29歳の時点で、熟練ドライバーとしての地位が危ぶまれていた。117回グランプリにエントリーし、最高位は4位が3回。2017年シーズンにはエイドリアン・スーティルの128戦に渡る「連続無表彰台」記録を破ってしまう可能性がある。


 しかし幸運なことに、2017年に加入するルノーは、今はパフォーマンスが乏しいが、とてつもないポテンシャルを持つという、まれなチームだ。もし今、ルノーがトップ争いをしている状況であれば、ヒュルケンベルグとは契約せず、優勝経験者にオファーを持ちかけていたはずだ。けれども実際はルノーは後方に沈んでいて、定評のあるドライバーを必要としている。それは、今も貢献できる能力を多く持つ者にとって良い条件となる。様々なシチュエーションが組み合わさることによって、これまではチャンスのなかったグリッド前方という、夢にまで見た位置にたどり着くことができるかもしれない。

■ルノーから求められるもの

 実現できるか否かは別として、ルノーのヒュルケンベルグに対する評価が、3年から4年以内での優勝を目的としたものだと仮定しよう。この場合、ヒュルケンベルグに求められるものは非常に明確だ。まず、おそらく困難になるであろう2017年シーズンをともに過ごしながらグリッド順位を徐々に上げ、すべてのチャンスを最大限に生かし切り、彼こそがチームを約束の地へと導くドライバーであると証明する。つまり彼にはさらなる力があり、週末をスタートするには力不足であろうマシンから最大限を引き出す意思と、能力があることを見せつける必要があるのだ。


 また彼はチームと周囲の人間を活気づけ、自身を「主役」に仕立て上げられることも実証しなければならない。ライバルチームのトップには、この面を不安視する者もおり、ヒュルケンベルグにとっては間違いなく大きな挑戦となるだろう。これまでの数シーズンから見ると、難しい課題になりそうだ。

■ヒュルケンベルグの輝かしい実績

 しかしまずはポジティブな面に目を向けてみよう。ヒュルケンベルグには驚くべき速さを持つドライバーになるだけの能力と、傑出したレースパフォーマンスを発揮する力がある。中堅ドライバーの年齢に差し掛かり、キャリアの点から見ても、「多大なポテンシャルを秘めた若手」と称されることも、もうない。果たされなかった約束はあれど、かつて未来を担うドライバーと呼ばれただけのスキルは、今も彼の中に潜む。


 2010年、ウイリアムズで獲得したブラジルGPのポールポジションは、近年では最も注目すべき功績のひとつとして挙げられる。その時、彼がポールを獲得するには湿った路面が不可欠だったとはいえ、単純に最後にラインを越えた者が最高のコンディションで走ったと言い切ることはできない。Q3での彼の2番目のタイムもポールポジションに十分なだけのものだった。

2010年ブラジルGP ニコ・ヒュルケンベルグがポールポジションを獲得
2010年ブラジルGP ニコ・ヒュルケンベルグがポールポジションを獲得


 2012年のブラジルGPでもフォース・インディアに勝利をもたらすべく戦ったものの、トップを狙っての追い抜きで、ヒュルケンベルグは自身のミスによりルイス・ハミルトンに接触。ただし、レース序盤には湿った路面をスリックタイヤで走り、衝撃的なスピードを見せている。彼とジェンソン・バトンが築いた大きなリードはセーフティカーによって帳消しにはなったが、才能の裏付けにはなった。


 ザウバーに在籍していた2013年には、シーズン後半に見事なパフォーマンスを発揮。特に韓国GPではフェルナンド・アロンソらのプレッシャーのもとで4位争いを演じ、後にアロンソが「素晴らしかった」と褒めている。

■新パワーユニット時代にフィットせず悩む

 キャリアで最も印象的なパフォーマンスは3年以上前に遡るが、最近のヒュルケンベルグはどうだろうか? 2016年でもなかなかのパフォーマンスを見せている。モナコ、ドイツ、ベルギー、日本では強さがあった。しかしながら、あまりにも長期間に渡って安定性を欠いており、不調な場面もしばしば見られる。1.6リッターV6ターボとERSの時代において、ヒュルケンベルグは大きな問題を抱えている。2014年にはフォース・インディア内で、彼が本来発揮すべき力を出し切れていないのではとの懸念もあった。結果は十分だったものの、それまでのヒュルケンベルグらしさが見られなかったからだ。


 近年のF1が、いまいちヒュルケンベルグに合っていないというのは事実だ。増したトルク(と重量)と同様に、リヤタイヤと燃料のマネジメントに最も苦しんだヒュルケンベルグ。これは現行マシンの厳しい部分である。


 ヒュルケンベルグはリヤタイヤのマネジメントの向上のために懸命に取り組んでおり、それを得意分野とするペレスから多くのことを学んでいるのは確かだが、そうせざるをえないことを喜んでいるわけではない。しかしドライバーの仕事はパッケージから最大限の力を引き出すことであり、ルノーもヒュルケンベルグにそれを期待している。

■アロンソのような底力を見せなければならない

 端的に言って、ヒュルケンベルグはこの壁を迂回するべきではなく、乗り越えるべきだ。F1ドライバーの大多数は、ピークを迎えると非常に似通った成果をもたらす。例えばアロンソで言えば、執拗さという点において、大きな効果を発揮している。ルノーでの2度目の時代も、マクラーレン・ホンダでの状況が特に悲惨な場合にも、集中力を欠いた例外的な場面を除いて、アロンソは常にマシンから最大の力を引き出してくる。


 では、ヒュルケンベルグにも同じことができるだろうか? トップを走るマシンに乗るチャンスを得られないという苛立ちは、彼の心を蝕んでいる。現状のレギュレーションでは、彼にとって理想的なレースは戦えない。優勝を手にするだけの才能はあるし、良いマシンがあればタイトル獲得も可能だと感じているかもしれない。だがこれらはどれも重要な要素ではない。肝心なのは基本的な能力に加えて、長期間に渡って仕事をこなしていくという意思を見せつけることだ。


 誰もが、ポテンシャルを最大限に発揮して、素晴らしいパフォーマンスを披露するドライバーを見たがる。ヒュルケンベルグにもポテンシャルはあるし、ルノーではそれを最大限に生かす機会を得るはずだ。2017年のレギュレーション変更はマシンにさらなる速さを与え、ドライバーに多くを要求するようになるだろう。新たなフェーズへと突入するF1と、ファクトリーチームへの移籍で、ヒュルケンベルグにとっての状況は整いつつある。


 チャンスを生かすモチベーションがあるということを、証明して見せなければならない。ヒュルケンベルグのドライバーとしての才能に魅せられた者として言わせてもらえば、それができれば、ルノーは桁外れに素晴らしいドライバーを手にしたことになる。



(Translation:Akane Kofuji)

この記事は国内独占契約により英 AUTOSPORT.com 提供の情報をもとに作成しています




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