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GP topic:問題となった「縁石」なぜレースではトラブルが起きなかったのか

2016年7月5日

 今年のF1オーストリアGPでは、4台のマシンのサスペンションが折れるという深刻なトラブルが発生した。


 フリー走行1回目では5コーナーをはみだしたマックス・フェルスタッペンの右フロントサスペンションが破損。その原因と考えられているのは、今年から1コーナー以外にも多数設置された「ソーセージ」と呼ばれる縁石である(写真:紫色の矢印)。


 しかし、トラブルを起こした4台には、ソーセージに乗らなかったにもかかわらず、サスペンションが折れたケースもあった。2コーナーで左リヤサスペンションを壊したニコ・ロズベルグと、8〜9コーナーのアウト側で右リヤサスペンションを壊したダニール・クビアトである。


 クビアトの事故は、確かに左リヤタイヤはソーセージに乗っていたものの、右リヤタイヤは通常の縁石の上にあった。なぜ、トラブルは起きたのか。


 今年のレッドブルリンクは縁石だけでなく、路面も全面再舗装され、さらにウルトラソフトが導入されることで、ラップタイムが著しく向上することが予想された。金曜日のフリー走行を終えた時点で、フェルナンド・アロンソは「新しい路面は、すごく気に入った。とてもスムーズでバンプがなく、グリップを引き出すことができる」と語っていた。


 土曜日になると、さらに速さは増す。昨年のポールポジションタイムは1分08秒455だったが、今年は予選Q1の時点で22台全車が、このタイムを突破。Q1トップタイムは約2秒も速い1分06秒516を記録していた。もし、Q2で雨が降らなければ、さらにタイムが更新されていたかもしれない。


 この速すぎるコーナリングスピードにより、通常の縁石の上を通過した際に、異常な振動をサスペンションに与え、事故につながったのではないかと考えられている。


 あるレース関係者は、次のように語る。


「8〜9コーナーのアウト側にある縁石は、2種類の縁石が並列している。これが異なる振動をサスペンションに発生させて、共鳴したタイミングで折れたのではないか」


 確かに8〜9コーナーのアウト側にある縁石は、内側が「バレルンガ」と呼ばれる縁石(水色の枠内/写真はセパンの3コーナー)と、その外側に「メルボルン」と呼ばれる縁石(黄色の枠内/写真はバルセロナの最終コーナー手前)が並んで設置されている。


 バレルンガは進行方向に向かって垂直に傾斜する段差を設けている縁石で、古くから使用されているものだ。これに対してメルボルンは、グリップ力が落ちるよう段差が複雑に組み合わされている。クビアトの事故は、左側がソーセージに乗り、右側が2種類の縁石に乗ったことで、サスペンションに異なる周波数の振動が伝わって、結果的に右リヤサスペンションが折れたのではないだろうか。


 ロズベルグの事故現場となった2コーナーは、1種類の縁石しか設置されていないが、事故が起きたのはフリー走行3回目で予選シミュレーションに入って、セクター1を最速で通過した直後だった。つまり通過速度が速かったことで、それまでとは違う振動がサスペンションに伝わったのかもしれない。


 ロズベルグのケースについては、ラップタイムが速いメルセデス特有の問題だった可能性もあり、その直後にアタックへ出たルイス・ハミルトンにはチームから縁石に必要以上に乗らないよう指示が出ていたため、事故を回避できたとも考えられる。


 予選でクビアトとペレスの事故以降、トラブルが起きなかったのは、Q2とQ3が雨がらみとなったため。さらに決勝レースでは満タンでスタートしてタイヤを労らなければならないため、そもそも縁石を多用するほどコーナーを攻めなかったことが、幸いしたのではないだろうか。もちろん予選までに起きたトラブルにより、ドライバーやチームが縁石に注意していたことも、大きな要因だろう。



(Text : Masahiro Owari)


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