「悪天候に助けられた面はありますが、その悪天候をうまく味方につけて、最高のタイミングでドライにタイヤを変え、ドライバーがギリギリまで攻めた。この予選5位はチームとドライバーが頑張った成果です」
オーストリアGPの予選終了後、長谷川祐介総責任者は、そう言って予選5位を評価した。この5位は、ホンダにとって復帰後、予選最高位である。さらに、予選2位のニコ・ロズベルグと、予選4位セバスチャン・ベッテルがそれぞれギヤボックス交換のペナルティを受けて5番手降格となるため、ジェンソン・バトンは日曜日のレースを3番手からスタートする。もちろん、これもホンダにとって復帰後最高位からのスタートとなる。
今回のバトンの予選5位は、長谷川総責任者が語ったように、確かに悪天候に助けられた面もあるが、Q3で最高のタイミングでドライタイヤに交換したことが主な要因だった。実はドライタイヤへ交換したドライバーの中で、最後にアタックしたのがバトンだった。
「Q3のインターミディエイトのアタックラップが遅かったので、ドライへ変えるタイミングも遅くなってしまいました。ただ、あの状況では、ドライバーも『ここで変えるの?』という感じでしたが、結果的には路面がどんどん乾いていったので、それが正解でした」
ただし、最後にバトンがアタックしたのは、単に運が良かっただけではない。チーム側の正しい判断があったことも確かだ。アタックラップ入る前、バトンはロズベルグの前を走っていたが、アタックラップではロズベルグの後ろを走行していた。
「セクター2を過ぎたあたりで『時間はあるから、前とのギャップをしっかりと作れ』と無線で伝えていました」と長谷川総責任者。
そこで6コーナーを過ぎた後、バトンはロズベルグを前を出す。圧倒的にペースが速いメルセデスAMGを前へ出すことで、しっかりと前車とのギャップを作るとともに、少しでも路面が乾いた状態でアタックするためである。バトンがコントロールラインを通過したのは、チェッカーフラッグが振られる8秒前のことだった。
ただし、この日、マクラーレンはミスも犯していた。それはQ2でフェルナンド・アロンソに間違ったタイヤを装着させてしまったことである。ニュータイヤでアタックするはずが、ユーズドタイヤが付けられていたため、アロンソは14番手のタイムにとどまった。ニュータイヤに履き替えて、再びコースインすると、今度は目の前でバトンがコースオフしてイエローフラッグが出たために、タイムを更新することなく、Q2で敗退した。
「アロンソがQ3に行っていたら、どうなっていたんだろうと思うと、非常に残念な結果です」と、長谷川総責任者もチーム内で対照的な結果に終わった予選に、複雑な心境だった。
もし、アロンソがQ3へ進出していれば、バトンが11番手でQ2で落ちてしまっていたかもしれない。だからこそ、バトンにはアロンソの分まで、日曜日のレースではいい走りを期待したい。バトンにとって、予選5位は2014年第18戦ブラジルGP以来。そして、3番手からのスタートも同年のイギリスGPのこと。マクラーレン・ホンダのベストリザルトである5位(2015年ハンガリーGP、2016年モナコGP)を上回ることができるか、注目したい。
(Text : Masahiro Owari)