「いいところがなく、残念なレースでした」
自らが総責任者となって、初めて臨んだF1オーストラリアGPを終えた長谷川祐介総責任者は日曜日のレース終了後、そう言って唇を噛み締めた。
スタート直後にフェルナンド・アロンソがポイント圏内を走行するなど、マクラーレン・ホンダのマシンに、目標としていた「レースでポイント争いをする」というポテンシャルがあることは確認できた。しかし、長谷川総責任者は「結果がすべてですから……」と、あえて厳しい評価を下していた。
オーストラリアGPでの結果に長谷川総責任者が満足していない理由は、ふたつあるように思う。ひとつは、赤旗再開後のレースでジェンソン・バトンがスーパーソフトを履いたにもかかわらず、ミディアムを履くルノーのジョリオン・パーマーをオーバーテイクできずに中団に埋もれて、戦略が機能しなかったことだ。その理由を長谷川総責任者は次のように説明した。
「ストレートエンドでのスピードが足りなかった。それはフェルナンドもレース序盤に指摘していました」
ストレートへ向かうコーナーの立ち上がりでは、アクセルが踏めていたという。そうなるとストレートでスピードが足りなくなる理由として考えられるのは、パワー不足だ。長谷川総責任者は、それを素直に認めていた。ただしストレートスピードには、車体側の空気抵抗も大きく関係してくる。それでも長谷川総責任者は「ドラッグのせいにだけはしたくない。パワーが足りていないことは事実ですから」と言う。
長谷川総責任者が厳しい評価を下したもうひとつの理由は、アロンソのマシンが、ほぼ全損したことだ。
「フェルナンドがあれほど激しい事故に見舞われながら、足に少しだけ怪我を負っただけで、事故の相手となったグティエレスとともに無事だったことは不幸中の幸い。ですが、アロンソのパワーユニットは厳しいでしょうね」
リタイアしたアロンソは入賞を逃しただけでなく、今シーズン使用が許されている5基のうちの1基が早くも使用不能となってしまったのだ。つまり残り20戦を4基で乗り切らなければならない。オーストラリアGPでは、まったくトラブルが起きなかったホンダだが、長谷川総責任者が「1レースを終えただけでは、まだ評価できない」と語ったのも、信頼性に関して厳しい現実が待っているからである。
期待が大きかったぶん、オーストラリアGPは残念なレースに終わった。赤旗など、不運な展開もあった。しかし長谷川総責任者は「結果がすべて」と、突きつけられた現実を受け止めることに努めていた。そうして初めて未来が拓ける。
「今回、得たデータをもとに次のバーレーンの準備がしっかりとできれば、それなりに戦えると思う」
次戦バーレーンGPでの「結果」を期待したい。
(Text:尾張正博/Masahiro Owari)