新しいフォーマットで実施された初めての予選。マクラーレン・ホンダの2台はアロンソが12位、バトンは13位で終えた。プレシーズンテストで、ホンダの長谷川祐介総責任者は「レースで常にポイント圏内で戦いたいので、まず予選ではQ3進出を目標にしている」と語っていたが、テストでは結局、最終仕様のパッケージを試すことができなかったため「開幕戦で目標を達成するのは少し厳しくなってきた」とも語っていた。予選後、長谷川総責任者は今回の結果について「ある程度は満足しないといけない」という評価を下していた。
しかし、同時に「新しい予選方式に多少、左右された感はあります。10番手あたりからタイムが非常に接近していたので、もう少し上へいけた可能性はあったと思います」とも分析する。
新しい予選方式には、いくつかの問題が事前に指摘されていた。それは足切り時間を細かく設定すると、結果的に“弱い者いじめ”のような結果を招くというものだった。たとえば、速いマシンに乗っているドライバーは1回目のアタックで満足なタイムを記録してQ1およびQ2を突破できる。それができないドライバーは、もう一度タイヤを履き替えて逆転するチャンスがあった。ところがQ1またはQ2の途中から足切りが始まってしまうと、ボーダーライン上にいるドライバーたちは2回目のアタックを行う前に敗退してしまうのである。
もうひとつの問題は、今年から3種類のコンパウンドが選択可能となったため、予選では最も軟らかいタイヤをQ1から惜しげもなく投入するため、Q1突破タイムの基準が上がったことだ。そのためマクラーレン・ホンダの2台はQ2へ進出するために、Q1で2セットものスーパーソフトを使用しなければならなかった。フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンは、ともに7セットのスーパーソフトをオーストラリアGPに持ち込んでいたが、予選前までに昨年と同様6セットを返却しなければならず、その中には当然スーパーソフトも含まれていた。そのためレースを考えると、Q1で2セットのスーパーソフトを使用したふたりは、Q2で1セットのスーパーソフトを使ってトップ8以内に入るしかなかった。
しかしアロンソもバトンも、Q2の1回目のアタックで十分なタイムを刻むことができず、制限時間前に白旗を揚げるしかなかった。
「新しい予選フォーマットに関しては、コースインのタイミングが難しかった。渋滞を避けるには早く出たほうがいい反面、路面コンディションを考えると、できるだけ後半にアタックしたい。バトンのQ1最初のアタックは明らかに渋滞に引っかかっていました。いま出せる実力は出せたと思いますが、パフォーマンス自体に満足しているかと聞かれれば、必ずしも満足はしていません」
しかし長谷川総責任者は、こう続けた。
「レースに向けては、ドライバーふたりとも経験豊富なので心配していません。ドライコンディションで走ることができたのは土曜日になってからでしたが、ドライバーはセットアップに満足していました。クルマのポテンシャルとしても入賞を狙えるポジションにいると信じています」
今季最初のポイントを目指して、ウイリアムズやフォース・インディアと、どんな戦いを演じるのか。進化したマクラーレン・ホンダ、2016年シーズン最初のレースが始まる。
(Text:尾張正博/Masahiro Owari)