FIAは、コックピット保護デバイス「ハロ」について、2017年シーズンからの導入に向けて準備を進めていることをあらためて明言した。
このデバイスの試作品は、3月初めの2回目のプレシーズンテストでフェラーリによってテストされた。綿密なリスク評価はまだこれからだが、すでにメルセデスとフェラーリを中心として評価のための作業部会が編成されている。
一方、レッドブルは独自のキャノピー式のデバイスを開発している。しかし、FIAのレースディレクター、チャーリー・ホワイティングは、来年22台の全車がハロを装備することになるのはほぼ確実と考えているようだ。
「私たちはいわゆるハロを入念にテストしてきた」と、彼はメルボルンのアルバートパークで行われたメディアブリーフィングで語った。
「具体的には飛来するホイールなどに対して、ハロは優れた保護効果を発揮する。これまでのテストも主にそうした物体を対象にしてきた。その他の関連事項、たとえばドライバーの救出などについては、さらに検討する必要があるし、メディカルクルーとの話し合いも必要だが、そうした面では大きな障害はないと思っている」
「レッドブル(のデバイス)に関して言えば、開発がかなり出遅れていて、まだ一度もテストされていない。(キャノピーがあることで)保護効果は高いかもしれないが、2017年から採用できるかどうかは疑わしいと思う。これに対して、ハロは来年からの導入が可能と考えている」
現行のコックピットに関するレギュレーションでは、ドライバーはアクシデントの発生後、5秒以内に自力で脱出できなければならないとされている。その点、ハロはドライバーの脱出の妨げになるようにも思えるが、ホワイティングはそうした障害よりもメリットのほうが大きいと考えている。
「ドライバーの脱出に少し余計な時間がかかるというという点でわずかなデメリットがあるとしても、ハロの効用はそれよりもずっと大きい。すでにあるチーム(フェラーリ)がマシンにハロを取り付け、ドライバーにすばやい脱出が可能かどうか試させたが、厄介なことは何もなさそうに見えた。むしろドライバーがハロをつかむことで楽に体をコックピットから引き出せるので、脱出が容易になったとさえ言える」
ホワイティングによれば、ごく近いうちに別のシステムが考え出されたとしても、ハロの導入が先送りされることはないという。
「FIAはハロを導入する準備を進めている。これは入念にテストされているし、総合的には最良の保護効果を提供できると思うからだ。特定の状況において、かえって被害を大きくしたりすることがないように、これからいくつもの異なる事故シナリオについて徹底的なリスク評価を行う予定だ。だが、もっと優れたアイデアが見つかったとして、ハロの導入を遅らせることはないと思う」
FIAが行うリスク評価には、ハロによって物体が弾き返された場合の付近の観客の安全性確認も含まれる。また、導入に際しては全車共通の標準デザインが採用される見込みで、担当の作業部会が5月末までに設計を取りまとめることになっている。
ルイス・ハミルトンがハロに嫌悪感を抱き、「選択制にしてほしい」と語ったことに対し、ホワイティングはそうした要望を受け入れない姿勢を示した。
「われわれはHANSデバイスを選択制にはしなかったし、ヘルメットも選択制ではない。当然、ハロも全員に義務付けられることになるだろう」
さらにホワイティングは、現行のホイールテザーが「どんなシナリオでもホイールの脱落を防げるとは限らず、最終的には破断する可能性がある」と認識しており、2017年から基準を強化する予定であることも明らかにした。
(Translation:Kenji Mizugaki)