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無線規制、厳格化の理由は「許容できないレベルのコーチング」

2016年3月18日

 FIAのF1レースディレクター、チャーリー・ホワイティングは、ドライバーへのコーチングが「もはや許容できないレベル」に達していたため、ピットとドライバー間の通信に制限を設けざるを得なかったと語った。

 オーストラリアGPの週末を前に、FIAは「ドライバーは単独で他者の助けを受けずにドライブしなければならない」と定めた競技規則第27.1項を「より厳格に適用する」との声明を発表した。ホワイティングは、もはや新ルールを設ける以外に方法はなかったと考えている。

「FIAは昨年からチームがドライバーに伝えてもよいことの制限に着手した。まず通告したのは『その縁石はカットするな』とか『あのコーナーでは少し違うラインを試してみろ』といったコーチングを一切与えてはならないことだった」

「今年は、さらに一歩踏み込んだ制限を課す。ドライバーは自分の力だけでドライブすべきであり、エンジニアから過剰な手助けを受けるべきではないと考えたからだ。要点としては、たとえばドライバーがレース戦略について指示を受けることはできない。パワーユニットの設定、充電モードやミクスチャーの変更についても同様だ。これらは、すべて禁止される」

「ドライバーに伝えてもよい事柄のリスト(※下記を参照)を作成したが、リストにある項目は多くはない。重要なのはドライバーが主体となってレースをすることだ。クルマを走らせるのはドライバーであり、彼らは一般的にドライバーに期待されていることをやるべきだ。だが、ここ数年はクルマの様々な面を管理するために、エンジニアからドライバーへあまりにも多くの情報が伝えられるようになっていた。率直に言えば、私たちはそうした傾向が、もはや許容できないレベルに達していると感じた」

 とはいえ、制限を一段と厳しくしても、すぐにドライバーとチームは適応してしまうだろう、とホワイティングは考えているようだ。
 
 FIAのウェブサイトで公開された動画で、ホワイティングは次のように語っている。

「チームがドライバーに『ピットインせよ』と連絡することはできる。指示をした周の終わりにピットに入れば何の問題もない。だが、そのピットストップではチームが選んだタイヤを履かせることができる。結局のところ、戦略をどう変えるべきかよくわかっているのはドライバーではなくチームのほうだ。そう考えると、正直に言って、私には戦略の決め方が大きく変わるとは思えない」


<FIAの新ルール全文>

 以下にチームからドライバーへのコミュニケーションに関する制限の詳細を示す。

・無線とピットボードを含めるが、それらだけには限定されず、あらゆるドライバーへのコミュニケーションに適用する。

・車両のエンジンがかかっている状態でガレージの外にあり、ドライバーが乗車しているときは常に適用される(ただし決勝当日のレコノサンスラップ開始前、あるいは複数のレコノサンスラップの間で、車両がピットレーンにあるときを除く)。

 以下に示すのは許容されるメッセージの一覧である。これら以外のメッセージは、以下のいずれか(ドライバーへの鼓舞を含む)を異なる目的で暗号として用いた疑いがある場合を含めて、競技規則第27.1項の違反とみなされる可能性があり、スチュワードに報告される。

1.ドライバーからのメッセージが聞き取れたことの確認。確認のみを目的としたメッセージの反復は、これに含まれる。

2.車両に起きている重大な問題の通知。この種のメッセージは、あるコンポーネントまたはシステムの故障が切迫しており、完全な機能停止に至る可能性がある場合にのみ用いることができる。

3.車両の損傷に関する情報。

4.車載ソフトウェアでは異常または故障の検出や対処ができないセンサー、アクチュエーター、またはコントローラーの機能喪失に対応することのみを目的とした、ドライバーデフォルトの選択の指示。第8.2.4項の規定により、これによって選択された新しい設定が機能喪失以前よりも車両の性能を高めるものであってはならない。

5.車両の修理またはリタイアのためのピットインの指示。

6.他の競技者の車両に生じた問題の通知。

7.マーシャリングに関する情報(赤旗、青旗、黄旗、セーフティカー、バーチャルセーフティカー、レーススタートの中止、またはこれに類する、その他の指示やレースコントロールからの情報)。これにはセーフティカーが出動した時点から最初のセーフティカーラインを2度通過したあとに、セーフティカー「デルタタイム」機能のスイッチをオフにせよというリマインダーが含まれる。

8.レースコントロールからのメッセージの伝達(これにはフォーメーションラップ開始までのカウントダウンと、最後尾の車両がフォーメーションラップを終えてグリッドに着いたことのドライバーへの通知が含まれる)。

9.一部のコーナーでの降雨、オイルまたはデブリの存在。

10.気象情報。

11.ドライバー本人のラップタイムまたはセクタータイムに関する情報。

12.他の競技者のラップタイム。

13.プラクティスセッションまたはレース中のトラフィックの警告や他の競技者とのギャップについての助言。

14.他のドライバーとのポジション交換の指示。

15.プラクティスセッションまたはレース中の残り周回数または残り時間。

16.プラクティスセッションまたはレース中の順位。

17.「ハードにプッシュしろ」「ここでプッシュしろ」「◯◯と順位を争うことになる」「楽に行け」または、これらに類するもの(これらのメッセージ、または何らかの激励の言葉を与える場合、暗号の使用を疑われないように注意すること)。

18.ピットインの指示(またはレコノサンスラップからグリッドへ向かえという指示)。この種のメッセージは、実際その周にドライバーがピットに入る場合にのみ用いることができる。状況が変化した場合は、すでにピットインの指示を受けたドライバーにステイアウトを指示してもよい。

19.ピットに入るとき、またはピットから出るときの、スピードリミッターの使用、車両に取りつけたタイヤに応じたタイヤ設定の変更、ホワイトライン、ボラード、重量測定の信号の確認についてのリマインダー。

20.シケイン不通過、コース外走行、タイムペナルティの適用など、チームのドライバーまたは他の競技者によるドライビング違反。

21.DRSが使用可、または使用不可であることの通知。

22.DRSシステムの故障への対処。

23.オイルトランスファー。

24.プラクティスセッション中(FP1とFP2のみ)のエアロマッピングなどのテスト手順に関する情報。

Translation : Kenji Mizugaki


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