3月17日、レッドブルがアストンマーチンとのパートナーシップ契約をメルボルンで発表した。レッドブルという世界有数の飲料メーカーと、アストンマーチンというイギリスを代表する自動車メーカーが手を組むという発表であれば、多くのメディアを招待して大々的に行うのが常だが、今回の発表会は限られたメディアのみに招待状を出すという形式で、明らかに雰囲気が異なっていた。
レッドブルが発表を行うという噂がパドックに広がったのは、メルボルン現地時間のお昼過ぎ。広報に確認しても詳細は明かされず、筆者が最終的に時間と場所を確認したのは、チーム代表のクリスチャン・ホーナーからだった。
なぜレッドブルは、このような限定的とも思える方法で発表会を行ったのだろうか。考えられる要因は、ふたつある。ひとつはアストンマーチンと最終的に合意したのがつい最近で、発表会まで十分な準備期間がなかったこと。メルボルン市内のイベント会場は決して広くはなく、レッドブルやアストンマーチンを紹介する映像を映し出すような演出は一切なかった。
もうひとつ考えられる理由は、今回の発表がF1に関して深く突っ込んだ内容ではなかったことだ。正式に言及されたことは、以下のとおりだった。
1:アストンマーチンがイノベーション(技術革新)パートナーとしてレッドブルとパートナーシップを締結したこと。
2:レッドブルのチーフテクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイがアストンマーチンとの共同製作で新型ロードカー「AM-RB 001」を開発すること。
3:レッドブルのF1マシンのノーズ部分に、アストンマーチンのシンボルが描かれること。
つまりF1における技術的な協力関係は、現時点では何も決まっていない。そのような発表をF1パドックで行うのは場違いだ。メルボルン市内の発表会場に、アストンマーチンのクルマは展示されていたが、レッドブルのF1マシンはショーカーすら展示されていなかった。
現時点でアストンマーチンはF1で使用可能なV6ターボのハイブリッドエンジンは作っておらず、レッドブルにパワーユニットを供給するのは現実的に難しい。ただし、ホーナーは「これは、まだ始まりにすぎない」と言う。そして「あらゆる選択肢を除外しない」と続けた。今後レッドブルとアストンマーチンの関係が、どのように発展していくのか。そのときこそ大々的な発表会が行われるのかもしれない。
(Text : Masahiro Owari)