2月の新車発表で本格的に幕を開けた2016年のF1。開幕戦も来週末に迫っている中、先日バルセロナで行われた合同テストの内容を、元フェラーリのタイヤエンジニアで今季はセルモの総監督として国内レースの現場に復帰する浜島裕英氏が分析。今シーズンの注目ポイントを中心に各チームの戦力バランスを予想します。
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■盤石さを増したメルセデス vs 足廻り一新で好タイム連発のフェラーリ
2016年のF1開幕までいよいよあと数日となりました。今年はどんなシーズンになるのか、私も今から楽しみにしていますが、先日行われたバルセロナテストでは各車の実力の一端を垣間見ることができました。
まず、今季一番の注目ポイントに挙げられるのが、テスト初日から高い信頼性をみせたメルセデスAMGと全体的に速さが光ったフェラーリによるトップ争いでしょう。特にメルセデスの新車W07の信頼性には非常に驚かされました。彼らはテストのほとんどをミディアムタイヤで走っていましたが、当然ドライバーたちとしては新しいウルトラソフトで自分たちの速さを確認しておきたかったはずです。しかし彼らは来るシーズンを見据え、きっちり計画されたスケジュールのもと、今回のテストに臨んでいたように思います。
合同テストが行われたカタルニア・サーキットはタイヤに厳しいサーキットです。今の時期、そこで新車に必要なテストプログラムを差し置いてウルトラソフトを試す必要性がどれだけあるのか? 今のところ第5戦のスペインGPまではウルトラソフトの登場はありませんし、その週末の明けには最初のインシーズンテストも控えています。従って彼らは、今回のテストでパフォーマンスを追求するよりも、ミディアムタイヤで多くの距離を走り問題点の洗い出しを行うとともに、ファクトリーでのシミュレーションデータや風洞テスト結果と実際の走行データの相関精度を詰めていくことを重点に作業を進めていたように思います。こうしたことが出来るのも今のメルセデスの強さの証であり、アドバンテージとして現れていた部分です。実際、彼らがソフトタイヤで記録した総合3番手タイムは、スーパーソフトやウルトラソフトを履いた際の伸び代を考えれば十分に速いものです。
W07は昨年型の正常進化の印象を受けますが、バージボードやノーズおよびフロントウイングなどの細かい部分には新たな試みも見て取れますし、最も違いの大きいインダクションポッド開口部の処理からは冷却面への配慮も伺えます。昨年、圧倒的な強さをみせたW06のパッケージを継承しつつ、まだ詰めきれていなかったエリアをしっかりと埋めてきたという印象です。盤石さにさらに厚みが増したといった感じがします。