いよいよ、マクラーレン・ホンダの復活となるF1開幕戦、オーストラリアGP。金曜日の走行を前日に控えた木曜、ホンダの新井康久F1総責任者が共同会見でこれまでのオフの総括と、開幕戦に臨む意気込みを語った。
まずは改めて、これまでのオフの3回のテストを総括した新井氏。
「(昨年末の)アブダビを別として、へレス、バルセロナの2回と3回テストをしましたが、ご存じのように、なかなか思うようにテストが進まず、自分たちの予定どおりのメニューをこなすことができませんでした。正直、いろいろな技術の要素をバラバラには確認できたものの、全部まとめて、これで行くぞと仕上がるところまでは行けなかった。ジグゾーパズルで言うと、それぞれのピースの確認はできている、絵柄はあるんだけども全部組み立てられていなかった、というのがテストが終わったあとの感触ですね」
それでもオフのテスト後、今季のホンダのパワーユニットの仕様を固めるホモロゲーションを確定しなければならず、開幕まではかなりの厳しい作業をこなしてきたという。
「テストが終わったあと、研究所に戻る舞台とミルトンキーンズに残る部隊とでいろいろテストで起きた課題を潰して、相当なハードワークをこなして今日、ここに来ています。やることはできて来ていると思っていますし、テストで出た課題は全部、潰し込んでいます。シールの問題とかも出ましたが、さくらの施設で仕様を全部確認して持ってきているので、今は問題が出るとは思っていません。そこはそれなりの自信があります」
ホモロゲーションを通ったホンダの実戦仕様のパワーユニットは、信頼性重視というよりも、あくまで性能を目的としたものであることを強調した。
「(ホンダのPUは)性能を犠牲にして信頼性を高めているということではないです。信頼性に不安があったところ、課題があったところを全部直したというところで、性能とバーターしたということではないです。不安があるとすれば、実走の部分で十分な見極めができていないということだと思います。でも、信頼性を置いて何かをしていたわけではありません。我々の経験不足がありますし、もっと攻めて、ウエイトを軽くしたいとか、もっとタイトなパッケージにしたいとか、最後の最後まで攻めた結果、それはちょっとなかったかなあ、というところも多少はありました。そこは熱害の問題が大きいですね。パッケージは相当タイトだと思っているし、全部が機能してクルマが熟成してくると、よいのではないかとドライバーも言ってくれている。これなら行けるかなと思うようなクルマに仕上がっていると思います」
ホンダのパワーユニットに関しては、F1公式サイトがイラスト付きで、推測図を掲載した。それによれば、ホンダのパワーユニット『RA615H』はコンプレッサーをエンジン前部、タービンをエンジン後部に引き離してレイアウトするメルセデス型の『スプリット・ターボ方式』ではなく、エンジン後部に配置したコンプレッサーとタービンの間にMGU-Hを、エンジン前部にMGU-Kをレイアウトした、まったく新しい形になると解説している。それについて質問された新井氏。
「コメントできないです(笑)。面白いですが、どこから書いたのかなあと。本当にユニークですよね。F1.comに私たちが何か話したわけではないです」と、やんわりとその推測を否定した。
最後に、この開幕戦について新井氏が目標を語った。
「全部やりきっていないというのが正直なところですから、もうちょっとアグレッシブに、たとえばデータで攻めたいとか、そういうところをもっと段階をもって進めるしかないかなと思っていますので、まずはきちんとレース運びができるようにしたいと思っています。ここ数戦で我々の習熟度を上げて、データでどこまでやっていいのか見極めて、早く攻めにまわりたい。初戦のレースで何もせずにでレースが終わることは避けたいと思っていますし、まずはフリープラクティスと予選をきちんと走るということが大事だと思います。不安はいつもつきまとっていますけど、かなり詰めてやってきているし、遭遇した問題に対しては不安はありません」