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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:トルコ編】自分のために走るのは来年から。首脳を満足させた犠牲的行為

2021年10月21日

 2021年に7年ぶりに日本人F1ドライバーが登場した。アルファタウリ・ホンダからF1にデビューした角田裕毅だ。極めて高い評価を受け、大きな期待を担う角田を、海外の関係者はどう見ているのか。今は引退の身だが、モータースポーツ界で長年を過ごし、チームオーナーやコメンテーターを務めた経験もあるというエディ・エディントン(仮名)が、豊富な経験をもとに、忌憚のない意見をぶつける。今回は2021年F1第16戦トルコGPを見ての感想を語ってもらった。


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「そうそう、そうやってチーム内の居場所を見つけていけばいいんだ」。トルコGPで角田裕毅がルイス・ハミルトンを7周にわたって抑え込んだのを見て、私は思わずつぶやいた。ハミルトン相手に、ランス・ストロールはコーナーふたつ、ランド・ノリスは半周、ピエール・ガスリーはセクターひとつ未満しか持ちこたえられなかったことを考えれば、裕毅があの滑りやすい難しいコンディションでどれだけ頑張ったかが分かる。


 正直に言うと、私はトルコGPを現場で見ていたわけではない。この年になると、コロナのリスクは避けるに越したことはない。コロナが単なる風邪として扱われるような国もなかにはあるからね。そういうわけで、ロシア、トルコとスキップし、今後の何戦かもパスする予定だ。


 だが、私ほどのベテランになると、現地に行かなくても、すべての情報を手に入れることができる。トルコの全セッションを見守り、関係者に電話で話を聞き、ドライバーやチームの発言もすべてチェックしており、週末に起きた出来事はすべて把握している。つまり、どこにいようと、究極のプロの意見を提供できるので、その点は安心してもらいたい。

2021年F1第16戦トルコGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第16戦トルコGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 さて、イスタンブールでの角田のパフォーマンスを振り返ってみよう。彼にとって初めてのコースだったので、大きな期待をかけてはいなかったが、実際、FP1では渋滞もあり、ガスリーから1秒落ちだった。FP2ではガスリーがマシンバランスに不満を訴え、ふたりの差は0.1秒に縮まった。FP3は雨となり、走行を控えるドライバーも多く、ガスリーが全体のトップタイム。角田は8番手と上々の位置につけた。


 予選Q1で角田は10番手。ガスリーより0.7秒遅かったものの、余裕を持ってQ2に進んだ。Q2では、唯一ソフトタイヤでQ3に進出。つまり、決勝がドライコンディションになれば、ソフトタイヤでスタートしなければならなかった。角田は自爆的任務を与えられたわけだ。


 ソフトスタートの角田は、10周も走ればタイヤ交換が必要になり、あと1回ピットストップせざるを得ず、最後尾に落ちてしまっただろう。だが、首脳陣の狙いは、角田を何としてでも予選トップ10に送りこみ、降格ペナルティを受けるハミルトンより前のグリッドからスタートさせて、決勝序盤にできる限りハミルトンを抑えさせるというものだった。

2021年F1第16戦トルコGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021年F1第16戦トルコGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)

 これが角田がチームのために(あくまでも彼自身のためにではない)初めて打ったヒットだった。そして彼はふたつ目のヒットを日曜に打った。フェルナンド・アロンソがターン1でスピンしたおかげですぐさま8番手に上がり、タイヤをすり減らしながらハミルトンを抑えた。おかげでハミルトンが角田の前に出た時には、トップを行くバルテリ・ボッタスとの差は19秒以上に広がっていた。


 ハミルトンは次の7周で、ストロール、ノリス、ガスリーを抜き去り、ボッタスとの差を18秒まで縮めた。46周目にはハミルトンとトップを行くシャルル・ルクレールとの差は約10秒だった。こうして考えると、角田の頑張りこそが、ハミルトンの優勝の望みを阻んだのだと言ってさしつかえないだろう。


 しかし、物事にはすべて代償がつきものだ。角田はハミルトンとのバトルによってタイヤの寿命を縮め、スピンを喫して、12秒のロスを被った。それでもステイアウトさせられたこともあり、最終的にポイント圏内に戻ることはできなかった。


 だが、角田が14位に終わったことを、ヘルムート・マルコは全く気にしなかったに違いない。マルコにとって大事なのは、角田が他の誰よりもハミルトンを長く抑え続けたことだった。だから、あの気難しいマルコが、レース後に角田の走りに満足していたわけだ。


 裕毅よ、この調子でいい仕事を続けていきなさい。メキシコではホンダが圧倒的な強さを発揮するだろう。そこで君は大量ポイントを上げることが求められる。今年はそうしてチームを満足させて、自分の居場所を作り、来年からは自分のために走ればいい。

角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)とヘルムート・マルコ(レッドブル・モータースポーツコンサルタント)
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)とヘルムート・マルコ(レッドブル・モータースポーツコンサルタント)

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筆者エディ・エディントンについて
 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)


レース

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5位カルロス・サインツ290
6位ジョージ・ラッセル245
7位ルイス・ハミルトン223
8位セルジオ・ペレス152
9位フェルナンド・アロンソ70
10位ピエール・ガスリー42

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2位スクーデリア・フェラーリ652
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5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム94
6位BWTアルピーヌF1チーム65
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