ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1第11戦ハンガリーGPの週末を甘口の視点でジャッジ。
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第11戦ハンガリーGPでマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が9位(レース後、失格となったセバスチャン・ベッテルが所属するアストンマーティンが上訴しているため暫定扱い)に終わったため、2位となったルイス・ハミルトン(メルセデス)にドライバーズ選手権で逆転され、第5戦モナコGP以降、守り続けてきた首位の座からホンダはついに陥落してしまった。
しかし、このレースで獲得した9位の2点は、接戦が予想されるタイトル争いにおいて、決して小さなポイントではない。そう考えると、予選後にホンダがパワーユニットに異常を発見し、レースに向けて交換したという判断を下したことは、今後、重要な意味を持つことになるかもしれない。
ホンダがパワーユニットに異常を発見したのは、予選後のことだった。
「クルマが予選から戻ってきて、カウルを開けてチェックしたら、クラック(亀裂)が入っていました。予選前にも同じところを確認していましたが、まったく異常がなかったのに、帰ってきたらクラックが入ってオイルが滲み出して流れていました」
金曜日のフリー走行はもちろん、予選中の走行データでも、パフォーマンス的にはまったく問題はなかったというから、もしメカニックが予選後のメンテナンスで見逃していたら、そのままレースに継続使用していたことだろう。
しかし、今回はイギリスGPでクラッシュした直後ということもあり、いつも以上に念入りにチェックしていたという。
「前回のクラッシュで足回り・ギヤボックス・モノコックのほか、PUもダメージを受けているもので交換が許されるものに関しては、すべて交換しました。また、その他ストレスがかかった部分に関しては、入念にチェックしました。全部バラしてクラックチェックすることはできませんので、外観でできるもの、あと中を(のぞける部分はファイバースコープなどを用いて)チェックしてOKということで金曜日・土曜日を走りました。ですが一番ストレスがかかる場所、今回一番ストレスがかかっていたのは衝突した部分なので、その辺は入念にチェックしていて、その中で確認されたということになります」(田辺豊治F1テクニカルディレクター)
結果的に事故に巻き込まれて9位に終わったんだから、わさわざ新しいパワーユニットを投入しなくても良かったのではないかと考える人もいるだろうが、もしクラックが入っていたパワーユニットを使用し続けていたら、レースでなんらか不具合を起こして、途中リタイアしていたかもしれない。そうなっていたら、9位の2点ですら、獲得できなかった。
不幸中の幸いだったのは、バルテリ・ボッタス(メルセデス)起因による多重クラッシュによって、フェルスタッペンの新しいパワーユニットがダメージを受けなかったことだ。スタート直後の1コーナーでランド・ノリス(マクラーレン)に追突したボッタスはその後、フェルスタッペンではなく、その直後にいたセルジオ・ペレスに突っ込み、ペレスのパワーユニットに大きなダメージを与えた。
もし、ボッタスが突っ込んでいった先がフェルスタッペンだったら、新しい3基目のパワーユニットはわずか数kmで役目を終えることになっていたかもしれない。そう考えると、ホンダはまだ運が残っている。
(Masahiro Owari)