ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1第10戦イギリスGPの週末を甘口の視点でジャッジ。
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第5戦モナコGPから続いていたホンダの連勝が「5」で止まった。しかし、それはホンダのパワーユニット(PU/エンジン)にトラブルや不具合が生じたためはもなく、またホンダのパワーユニットがメルセデスに力負けしていたからでもない。
金曜日に行われた予選でマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は2番手に終わったが、トップタイムをマークしたルイス・ハミルトン(メルセデス)との差はわずか1000分の75秒差だった。メルセデスが得意としているシルバーストン・サーキットでのこの差はむしろ、レッドブル・ホンダにとって大いに勇気づけられる結果だった。
さらにイギリスGPでF1史上初めて導入されたスプリント予選で、スタート直後にトップに立つと、あとは2番手以下に影をも踏ませぬ走りで、スプリント予選を制した。これでフェルスタッペンは日曜日の決勝レースをポールポジションからスタートできる権利を得た。
しかし、肝心のレースでややスタートで出遅れると、1周目からルイス・ハミルトン(メルセデス)と激しいバトルを展開。1コーナー、3〜4コーナー、6コーナーとサイド・バイ・サイドの攻防を演じたふたりは、9コーナーのコプスで、フェルスタッペンの右リヤタイヤとハミルトンの左フロントタイヤが接触し、フェルスタッペンがコースアウトして、タイヤバリアにクラッシュする形で幕を閉じた。
タイヤバリアにクラッシュしたフェルスタッペンはその場でリタイア。一方、ハミルトンはフロントウイングなどにダメージを負っていた。しかし、直後に赤旗が出されたため、レース中断中に修理を行うことができ、赤旗後のレースでは10秒のタイムペナルティを受けたものの、逆転優勝した。
ホンダにとって、このレースは連勝が止まっただけでなく、今後のチャンピオンシップを考えても痛い一戦となった。というのも、51Gの衝撃でクラッシュしたフェルスタッペンのマシンはリヤ部分が大破したからだ。
イギリスGP直後、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターはパワーユニットのダメージに関して、次のように語っていた。
「最初にクルマがクレーンに釣り上げられた映像を見たときはかなりひどいのかなと思いましたが、(ガレージに戻されたクルマを見ると)映像で見るよりはダメージが小さいような気がします。でも、いずれにしても外見だけではわかりませんので、これから外してSAKURAに送り返した上で確認して継続判断したいと思います」
もし、パワーユニットになんらかのダメージがあれば、イギリスGPで使用したパワーユニットは今後、レースで使うことはなくなる。1基目で6戦走り、第7戦フランスGPから2基目を投入したホンダにとって、ここで2基目が使用不能となれば、3基目の投入を前倒しして行うことは必至だ。
そうなれば、残り13戦のどこかで4基目を投入しなければならず、ペナルティも覚悟しなければならない。
しかし、たとえそうなったとしても、チャンピオンシップ争いはまだわからない。というのも、イギリスGPではメルセデスPU(セバスチャン・ベッテル)とルノーPU(エステバン・オコン)が早くも3基目を投入していたからだ。つまり、クラッシュしていなくとも、ライバルたちも年間3基というパワーユニットの使用基数を守るのは簡単ではないのだ。
もちろん、これまで卓越した信頼性を誇ってきた本家のメルセデスが今年も3基で乗り切ることも十分考えられるが、それでも4基目投入の傷口を小さくすることはできる。それはスプリント予選が導入されるグランプリがあと2つあるからだ。
次にスプリント予選が導入されるのはイタリアGP。例えば、ここで4基目を投入すれば、モンツァは比較的オーバーテイクが可能なので、ペナルティによって予選で最後尾となっても、挽回できるチャンスがスプリント予選と決勝レースの2回あり、上位入賞も可能だ。
イギリスGPのクラッシュは残念だったが、まだ悲観する必要はない。
(Masahiro Owari)