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英国人ライターのF1ルーキーペア観察日記:シューマッハーが苦い初Q2。進歩しつつもペナルティ点が心配なマゼピン

2021年7月14日

 2021年F1にデビューしたミック・シューマッハーとニキータ・マゼピンは、ともにハースF1チームで初めてのシーズンを送っている。ふたりはどのように学び、つまずき、成長していくのか。キャラクターの異なるふたりのルーキーのデビューシーズンを、英国人ジャーナリスト、クリス・メッドランド氏が観察していく。今回は第7戦フランスGP、第8戦シュタイアーマルクGP、第9戦オーストリアGPの3連戦を振り返る。


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 長く厳しいシーズンを最後方で戦うチームにとって、3連戦は楽なものではないが、ハースはいくつかポジティブな要素を得て、3週間を終えた。ルーキーのニキータ・マゼピンとミック・シューマッハーにとっては、さらなる成長のための絶好の機会になったといえよう。

2021年F1第8戦シュタイアーマルクGP ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第8戦シュタイアーマルクGP ミック・シューマッハー(ハース)

 フランスGPの会場ポール・リカールは、ルーキーにとってうってつけのサーキットだ。高速でありながら低速コーナーもあり、広々としたランオフエリアが備わっている。コースオフしても、バリアに衝突する可能性は低いわけだ。


 ところがシューマッハーは、予選でクラッシュしてしまった。


 金曜はチームにとって非常に励みになる一日となり、シューマッハーは自信を深め、予選Q2進出も可能ではないかと考えていた。シーズン序盤には思いもしなかった、ポジティブな状況だ。だからドロップゾーンすぐ上に位置していた時に、最終ランで少しでもタイムを引き上げようとプッシュした、シューマッハーの気持ちは理解できる。


 だが彼はやりすぎてしまった。セクター1の終盤にスピンし、リヤを失ってウォールにヒット、これによって赤旗が提示された。チームは再び多額の修理代を負担しなければならなくなったものの、一方でセッションが早期終了したことで、シューマッハーはQ2に通過した。

2021年F1第7戦フランスGP ミック・シューマッハー(ハース)が予選でクラッシュ
2021年F1第7戦フランスGP ミック・シューマッハー(ハース)が予選でクラッシュ

「彼はそれまでよりも、あと少しだけプッシュしようとしていた」とチーム代表ギュンター・シュタイナーは説明した。


「実際、我々はかなりいい仕事をしていた。もちろん、ああいうことは望んでいなかったが、起きてしまった。彼はマシンの感触を少しずつ、つかみつつあったのだが」


 競争力のないマシンに乗るシューマッハーだが、Q2に進出することを今年の目標のひとつとしていた。ただ、シュタイナーはフランスGPの予選結果をQ2進出として心底喜べるものとは考えていない。


 しかしともかくコンポーネントは同等のものと交換され、ギヤボックスにはダメージはなかったため、シューマッハーは予選順位のグリッドから決勝をスタートすることができた。


 決勝では20台すべてが完走し、ハースの2人は19位と20位だった。アゼルバイジャン決勝終盤で接触しかけた場面があったが、フランスでのふたりのバトルはクリーンだった。マゼピンは、自分に優れたレーステクニックがあることを、F1で初めて示せたといえるだろう。

■「ウサギに捕まるのを待っているニンジンのよう」苦しいレースが続くマゼピン

 戦う相手がひとりしかいない場合、レーステクニックを発揮することはとても難しい。さらに、レースの展開上、その機会はめったに訪れない。ハースは時にふたりの戦略を分けて、スタートタイヤを別にすることもある。しかし同じ条件で、同じ戦略で戦うと、ほとんどの場合、シューマッハーがチームメイトを引き離していく。

2021年F1第9戦オーストリアGP ミック・シューマッハーとニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第9戦オーストリアGP ミック・シューマッハーとニキータ・マゼピン(ハース)

 オーストリア・レッドブルリンクでの1戦目、一時ふたりがバトルをする状況もあったが、シューマッハーが前に出た後、ふたりともブルーフラッグに苦しめられることになった。マゼピンは「ウサギに捕まるのを待っているニンジンのようだ」と言った。面白い表現だが、トップグループのマシンを次々に前に出さなければならず、それによってどんどん前とのギャップが広がってしまう、苦しい状況だった。


 シューマッハーにとって今年の目標のひとつはQ2進出であったのに対し、マゼピンは、クリスマスプレゼントに欲しいのは、リードラップでレースをフィニッシュできること、と言っている。それは来年までは実現しないかもしれないが、オーストリアの同じサーキットで2回レースが行われたことで、2戦目には多少状況は改善した。

2021年F1第7戦フランスGP ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第7戦フランスGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 最初のレースでは、シューマッハーが2回、マゼピンが3回周回遅れになり、予選では速い方のハース、すなわちシューマッハーとQ2との差は0.9秒だった。2戦目のオーストリアでは、その差が0.4秒に縮まった。そしてマゼピンはリーダーから2周遅れでフィニッシュした。ハースのドライバーたちは、1回目のレッドブルリンクでの経験をしっかり生かして戦ったのだ。


 シューマッハーに遅れを取っていることについて、マゼピンは少なくともひとつ理由を挙げることができる。現在のマゼピンのシャシーはチームメイトのものより重いということで、ハースは彼のために新しいシャシーを作っているところだ。だが、シャシー変更が行われるまで、マゼピンはあと数戦待たなければならない。


 3連戦の最後に、残念ながらマゼピンは最終ラップでダブルイエローフラッグを無視したとして30秒加算のペナルティとペナルティポイント3を科された。

2021年F1第8戦シュタイアーマルクGP ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第8戦シュタイアーマルクGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 シュタイアーマルクGP前に、ハースは、シュタイナー代表が“マゼスピン”というニックネームをつけられたマゼピンにコマをプレゼントする動画を公開した。「マシンでスピンせずに、こっちを回せばいい」と代表に言われて、マゼピンが笑ってコマを回す、ユーモアたっぷりな動画だった。だが、笑ってばかりもいられない。彼は9レースですでにペナルティ・ポイント5を科されている。出場停止となる12点に到達しないよう、今後はコース上でさらに慎重に行動する必要があるだろう。



(Chris Medland)


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