ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1第6戦アゼルバイジャンGPの週末を甘口の視点でジャッジ。
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第6戦アゼルバイジャンGPの舞台であるバクー・シティ・サーキットは、コースの後半の16コーナーからメインストレートを抜けて1コーナーまでの約2.2kmがアクセル全開区間となる。1周あたり使用の上限があるMGU-Kを利用した回生エネルギーはストレート上で使い果たしてしまうため、このバクーで重要となるのが、上限のないMGU-Hを利用した回生エネルギーだ。
ホンダは長年、この分野で厳しい戦いを強いられてきた。しかし、今年の新骨格のパワーユニット(PU/エンジン)はエンジンの馬力だけでなく、MGU-Hを利用した回生エネルギーも改善されていたため、今回の一戦はその進化が問われることとなった。
ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターも「バクーは電気的な観点から特徴的なサーキットなので、とにかく昨年までのデータと今年のデータを見てシミュレーションかけていますが、金曜日に実際に走ってみて(改善が)どうなのかを見たい。さらに他のマニファクチャラーも進化をしてきているので、実際に走ってみて見極めたいと思います。ただ、おっしゃるように特徴的なサーキットということで、われわれの競争力が見えてくるとは思います」と、その進化を楽しみにしていた。
その結果は予選の成績に表れた。ホンダのパワーユニットを搭載する4台がそろってQ3に進出したのである。ホンダ勢が全員Q2を突破したのは、昨年の最終戦アブダビGP以来で、今シーズン初めてのこととだ。さらにポールポジションは逃したが、4台すべてがトップ8以上に入ったのは、昨年のエミリア・ロマーニャGP以来のことだった。
■2020年アブダビGP予選(予選で全員がQ2突破)
フェルスタッペン1番手/アルボン5番手
ピエール・ガスリー10番手/クビアト7番手
■2021年アゼルバイジャンGP予選
フェルスタッペン3番手/ペレス7番手
ガスリー4番手/角田8番手
■2020年エミリア・ロマーニャGP(予選で4台がトップ8以内)
フェルスタッペン3番手/アルボン6番手
ガスリー4番手/クビアト8番手
使用するにあたって上限のないMGU-Hを利用した回生エネルギーは、毎周使用できるレースのほうが真価が問われる。そのレースでホンダ勢は予選以上にパワフルな走りを披露していた。スタート直後の6周目と7周目にマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスのレッドブル・ホンダ勢が相次いで、フェラーリのシャルル・ルクレールをストレートでオーバーテイク。7周目には角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)も、ルノー・パワーユニットを搭載するアルピーヌのフェルナンド・アロンソを抜き去った。
ピットストップで逆転した後、メルセデスにオーバーテイクを許さなかった点も評価できる。
残念ながら、レース終盤にトップを走行していたフェルスタッペンがタイヤトラブルでリタイアしたため、4台入賞はならなかったが、その直前までホンダ勢4台はフェルスタッペンが1位、ペレスが2位、ガスリーは5位、角田も7位と、トップ7を走行していた。ホンダ勢4台がトップ7以上でフィニッシュしていれば、1988年フランスGP以来の快挙だった。それほど、アゼルバイジャンGPでホンダ勢には勢いがあった。
■1988年フランスGP決勝
アイルトン・セナ2位/アラン・プロスト1位
ネルソン・ピケ5位、中嶋悟7位
それは、リタイアしたフェルスタッペンにレース後、ホンダのパワーユニットについて尋ねたとき、彼は穏やかな表情でこう答えてくれたことでもわかる。
「今日、25点を失ったことは残念だけど、僕たちが苦手としていたコースで速かったことがわかったことはいいことだ。ストレートラインスピードはウイングレベルも関係しているから単純には言えないけど、この週末の走りを見れば、今年のホンダのパワーユニットがメルセデスとほぼ互角であることは間違いない。昨年から今年にかけて、彼らは素晴らしい仕事をしてきた。ただし、バクーは少し特殊なサーキットだから、普通のサーキットへ行ったら、メルセデスはまだまだ強敵だ。気を緩めることなく、最終戦まで戦い続けるよ」
(Masahiro Owari)