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英国人ライターのF1ルーキーペア観察日記:実力でウイリアムズに勝ったシューマッハー。試練に耐えるマゼピンに不当な非難も

2021年5月18日

 2021年F1にデビューしたミック・シューマッハーとニキータ・マゼピンは、ともにハースF1チームで初めてのシーズンを送っている。ふたりはどのように学び、つまずき、成長していくのか。キャラクターの異なるふたりのルーキーのデビューシーズンを、英国人ジャーナリスト、クリス・メッドランド氏が観察していく。今回は第3戦ポルトガルと第4戦スペイン編だ。


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 2021年に大きな結果を出すことは期待していないだろうハースだが、この2戦は心強い週末が続いた。


 第1戦、第2戦とルーキーふたりはミスをした。チームが小さな期待をかけていたミック・シューマッハーもイモラでクラッシュしている。だがポルトガルはまずまずの週末になった。


 シューマッハーは予選で好調さを維持し、ウイリアムズのニコラス・ラティフィの0.2秒差以内に入ってみせた。ニキータ・マゼピンは、プラクティスでスピンをする場面も見られたが、その後は少なくとも大きなミスはなかった。そして日曜は非常にポジティブな展開になった。


 シューマッハーは序盤のバトルの後、セーフティカー出動後、マゼピンの前をキープし、いいペースで走行、前のウイリアムズに挑むべく走り続けた。ハースにとっては予想外のことだった。ウイリアムズは風の強いコンディションで非常に苦労していたが、ハースのふたりはそれに比べるとマシンを多少うまくコントロールすることができていたのだ。


 ルーキーふたりを乗りづらいマシンで走らせているチームにとって、これはポジティブな兆候だ。ふたりは少しずつ経験を積み、レース走行においての限界を把握し、以前より快適に走れるようになってきたようだ。


 シューマッハーはゆっくりと着実にラティフィに近づき、どう対処するのが一番いいのか、レースエンジニアからアドバイスを受けながら、ウイリアムズの後ろで様子をうかがい続けた。


 シューマッハーはチャンスを待ちながら走るなかで、少しギャップをあけてタイヤを冷やすべきタイミングもよく分かっていた。チーム代表ギュンター・シュタイナーは彼のレースに大いに感心したという。少し置いて行かれる時もあったが、すぐにまた後ろに戻り、そうしているうちに、ラティフィはミスをした。

2021年F1第3戦ポルトガルGP ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)とミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第3戦ポルトガルGP ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)とミック・シューマッハー(ハース)

 ラティフィがターン3でワイドになったチャンスを逃さず、シューマッハーは追い越し、その後はラティフィを引き離していった。シューマッハーにとっては今後につながるレースになったといえる。


 マゼピンの方は、トラフィックに関してチームからの警告が適切になされなかったため、反応することができず、周回遅れにしようと近づいてきたセルジオ・ペレスを抑えつけたとみなされてペナルティを受けた。それ以外は大きな事件のないレースで、ハースにとってはポジティブな週末だった。今年他のマシンをペースで破ったのはこれが初めてだった。

■2戦連続でペナルティを受けたマゼピン

 次のスペインの舞台は、ルーキーふたりにとって、多少は経験のあるバルセロナ・サーキットだった。また、ハースは例年このサーキットを得意としていたため、ある程度の期待を抱いて週末を迎えた。金曜プラクティス1回目では開始2分でマゼピンがスピン、上々のスタートとはいえず、全体的なペースもよくなかった。シュタイナー代表の言うとおり、予選に向けてやるべきことは多いものと思われた。


 だが土曜日、チームもドライバーふたりも大きく進歩した。ふたりはマシンの感触が向上したと感じており、シューマッハーはプッシュして走れるようになってきていた。経験あるトラックで自信を持って走り、シューマッハーはラティフィに予選で勝った。ハースが今年初めて予選でウイリアムズに勝ったのだ。


 シュタイナーがルーキーふたりに望んでいるのは、とにかくたくさんの周回を走り、経験を積み重ねることだったが、今回はレースでシューマッハーがウイリアムズの前を維持できるのではないかと期待をかけていた。だがそれはかなわなかった。決勝ではウイリアムズの方が圧倒的に強かったのだ。

2021年F1第4戦スペインGP ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第4戦スペインGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 マゼピンはスペインでとても不運だった。まず、予選でランド・ノリスを妨害したとして厳しいペナルティを受けた。最終シケインでひどいトラフィックにつかまった時、後ろから来たノリスがロスするのを防ぐ最善の方法だと考えて、加速してアタックラップに入ることを決めた。しかしスチュワードは、難しい状況だったと認めつつも、もっと前の段階からうまく行動すべきだったとしてペナルティを科した。


 決勝では、メルセデス代表トト・ウォルフにルイス・ハミルトンを抑えつけていると非難された。それは全く不当な主張だったと思う。


 ウォルフが無線でレースコントロールに対して不満を言った時には、ブルーフラッグは1回しか示されておらず、マゼピンはその後、規則に従って譲っている。

2021年F1第4戦スペインGP ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第4戦スペインGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 このようにマゼピンにとっては不運な出来事がいくつかあったものの、スペインの週末を通して貴重な経験を積むことができた。この2戦でルーキーふたりが進歩したのは間違いなさそうだ。


 シュタイナーは、次のモナコでハースのマシンが強さを発揮するのは難しいと考えている。ストリートサーキットに必要なダウンフォースが欠けているためだ。そのため、重要なのはできるだけクリーンな週末を過ごすことであり、マゼピンには絶対クラッシュするなと注意したということだ。



(Chris Medland)


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