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【F1第7戦カナダGPの焦点】理不尽に勝利を取り上げられたベッテル。あまりに定点的で杓子定規だったFIAの裁定

2019年6月11日

 今シーズン初めて、トップ2チームの間で本物の接近戦が実現したモントリオール。パワーユニットやブレーキに厳しいジル・ビルヌーブ・サーキットの特性に気温/路面温度の上昇が加わって、トップ2台の後方でもいたるところで熱戦が繰り広げられ、観客スタンドからの大声援にも十分応える華やかなレースになった。

 土曜の予選のヒーローはセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)。そして、シーズンベストの4位グリッドを獲得したダニエル・リカルド(ルノー)。上位グループがクリーンなスタートを切ったことによって、レースでもふたりの活躍が前半のハイライトになった──。

 ファン投票の24.6%を得たベッテルが「Driver of the Day」に選ばれ、18.2%を得たリカルドがベッテルに続いたことからも、彼らのレースがカナダGPを楽しくした一番の要素であったことが分かる。

 F1にデビューした当時から、リカルドはストリートファイターであることを自認してきた。
「グランプリにはいろんな特徴のコースがあるけれど、個人的にはストリートサーキットが大好きだからモナコやモントリオールが一番楽しい。一方で、さまざまなオーバーテイクを創造するチャンスがあるという意味で、質の高い“レース”が可能なのはオースティンだと思う。鈴鹿も最高のコースだと思うよ──。とりわけ、ドライバーのレースを真剣に見守るファンの存在を含めて考えるなら、鈴鹿が世界一だ」

 ウォールが迫ったコースで速いのは、おそらく、マシンの動きが乱れる前に修正する能力に優れているためだ。

 4番グリッドからスタートしたカナダGPでは、早い段階でアンダーカットを試みたピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)をカバーするために8周終了時点でピットイン。いったんはレーシングポイントのセルジオ・ペレスやランス・ストロールの後方に身を置いたが、ルノーのストレートスピードを活かして挽回し、ミディアム・スタートの上位グループがピットインを終えた後には7周にわたってバルテリ・ボッタスのメルセデスを抑え続けた。

XPB Images

 低速コーナーからの立ち上がりで、ルノーのマシンは決して安定していたわけではない。DRSを開いて迫ってくるメルセデスを阻んだのは、ルノーのストレート速度と、オーバーテイクで何度も威力を証明してきたリカルドの、ブレーキング能力だった。

 好調ルノーでは、7番グリッドからスタートしたニコ・ヒュルケンベルグも“保たない”と言われたソフトで序盤の16周を走り続け、しかもそのタイムはボッタスにも負けないものだった──。予選の速さはようやく実現したパワーユニットの“予選モード”に拠るところも大きいが、マシンをスライドさせるヒュルケンベルグのスタイルはもともとタイヤに厳しいもの。ソフトの性能を維持した第1スティント、そしてハードではリカルドに追いつくペースを見せた第2スティントが意味するところはとても大きい。

 非力と批判され続けたルノーのパワーユニットが、カナダでメルセデスのカスタマーチームを圧倒し“ワークス”の1台をも相手にして戦えた。そこにはもちろん、Phase2パワーユニットを投入したメルセデスに、思いがけずトラブルが頻発した事実も影響している。

 FP1ではボッタスの燃圧が低下し、FP3ではストロールがハイドロ漏れのため1周も走れなかった。そして土曜の予選後には、ハミルトンのマシンでもハイドロ漏れが発覚──。

 新しいパワーユニットで“攻め”のモードを自ら禁じざるを得なかった様子は想像に難くない。予選のスピード計測で、メルセデス勢が揃って下位に名を連ねるのは初めてのことだ。さらに、FP2ではハミルトンがターン9のウォールに接触、予選Q3ではボッタスがターン2でスピンするという珍しいミスが連続した。

XPB Images

「最も困難な週末だった」とトト・ウォルフ代表が振り返るように、メルセデスの苦労が続いた週末だった。最悪の状態を回避できたのは、低速コーナーで優れたグリップを発揮する車体──。3つ目のDRS区間が加えられて以来、モントリオールは“ダウンフォースを削っていく”ことで勝負するコースではなくなり、DRS効果の大きい今年はさらにその傾向が強まった。



レース

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