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【インタビュー】F1日本GPでハースの足元を支えた富塚エンジニア「鈴鹿ではブリスターが一番危険」

2018年10月8日

 メルセデス以外で唯一、予選Q2でのソフトタイヤアタックを成功させ、さらに決勝レースでもライバルたちがブリスターやオーバーヒートに苦しむ中、揺るぎないタイヤ戦略で8位入賞を勝ち取ったハースF1。2018年シーズンから同チームに加入し、その存在感をいっそう増している富塚裕タイヤエンジニアに、日本GPでの快走を振り返ってもらった。
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ハースの富塚裕タイヤエンジニア


──上位3強以外のチームが固いタイヤでQ2をアタックするのは、非常に稀有なことです。ソフトタイヤは、最初から狙って?
富塚裕エンジニア(以下、富塚):そうです、そうです。タイヤを選んだ時から、それは狙ってました。


──ソフトでもQ3に進める自信があった?
富塚:というより、鈴鹿はスーパーソフトタイヤに、絶対的な速さがないだろうと。でも100%そうなるかどうかは、その週末になってみないとわからない。それでどっちに転んでもいいように、両方の対応を準備してました。で実際に金曜日に走ってみたら、ソフトとスーパーソフトの差は、それほど大きくなかった。でもその段階でも保険は掛けてて、まずQ2をソフトで走って、ダメならスーパーソフトですぐにやり直すことは考えてました。結果的に2回目は、(雨が降って)なくなりましたけどね。


──実際、ケビン・マグヌッセンは失敗した。
富塚:ええ。ソフトの時に、いいタイムが出せなかったですね。それでスーパーソフトで出直したけど、間に合わなかった。路面温度も、低かったんですよ。なのでもし全車が2回目アタックをできてたら、(ソフトでのQ3進出は)危なかったかもしれない。ロマンも、スーパーソフトで出ましたしね。


──あれはQ3に向けての、練習ではなかった?
富塚:違います。最後に出て、みんなのタイムを見てアタックを続けるかどうか判断しようと。


──状況次第では、スーパーソフトでのスタートになっていた可能性になった?
富塚:ええ。抜きにくいサーキットですから、あくまで前のグリッドを獲ることが大前提でしたから。


──決勝レースは一転して、路面温度が高くなった。ソフトにいっそう有利なコンディションだったのでは?
富塚:でも去年と同じくらいですから。とはいえソフトで出ていったアドバンテージは、あったと思います。


──序盤にセーフティカーが出たことで、ソフトの優位が殺がれたのでは?
富塚:そうですね。スーパーソフトは熱でどんどん垂れて行く。あそこで冷やせたことで、彼らは助かりましたよね。


──第2スティントのミディアムタイヤは?
富塚:これも全然悪くなかったです。ただVSC(バーチャルセーフティカー)解除の際に、うちが出るのがちょっと遅れて、順位を落としてしまった。(セルジオ・)ペレスが、うまくやりましたよね。ストレートはフォース・インディアが速いので、後ろに付かれてやられました。

■今回のスーパーソフトはレースタイヤとして”使えない”

──ソフトを29周目まで引っ張ったのは、計画通り?
富塚:完璧でした。ピット作業も非常にうまくやってくれて、そのおかげでペレスの前でコース復帰できた。そこまでは、完璧でした。


──他のクルマは、ブリスターに苦しんだところが少なくなかった。ハースは?
富塚:うちは大丈夫でしたね。とにかくブリスターを一番用心して、リヤタイヤの温度に気をつけてもらいましたから。他はそんなに、ひどかったですか?


──ええ。ザウバーのミディアムとか、トロロッソのソフトとか。
富塚:がんがんプッシュすると、すぐにブリスターが出るんですよね。なので僕らはペースをコントロールして、温度管理しながら走り続けた。鈴鹿はブリスターが、一番ヤバイと思ってましたから。


──後ろからフォース・インディアが迫ってきた時も、(ロマン・)グロージャンにはあくまでタイヤの温度を上げるなと?
富塚:ミディアムになってからは、路面温度も下がっていたし、車重も軽くなってたので、大丈夫だと思ってました。逆に冷え過ぎを心配してたくらい。ただタイヤの温度センサーが途中で壊れてしまって(苦笑)、わからなくなってました。冷え過ぎてた可能性が高いですけど。帰って来たタイヤをざっと見た限りでは、問題なかったですけど。ソフトの時は温度が上がり過ぎて、管理に気を使いました。


──今回はとにかくスーパーソフトは、レースタイヤとしては使えないと、最初から思ってたんですね。
富塚:ええ。ラップタイムも特別速くないし、すぐに熱ダレしてしまう。あんまりよくないのは、わかってました。


──もしスタートタイヤがスーパーソフトになっていたら、20周くらいそれで引っ張ってましたか?
富塚:あとはミディアムですね。実際、他のクルマの大部分はそうしたと思いますけど。ただそれだと、タイヤ交換後のコース復帰ポジションが見つけにくい。遅いクルマにハマってしまう可能性が高い。ソフトスタートのメリットは、まさにそこですね。復帰スペースが、見つけやすい。


──ハース以外の中団勢は、ミディアムのペースも決してよくなかった印象です。
富塚:そうですか。冷え過ぎた可能性もあるでしょうね。タイヤは熱過ぎても冷え過ぎても、グリップは下がりますから。うちはセンサーが壊れてたから、そこはよくわからないんですが(笑)。


── 一般的に言うと、固いコンパウンドの方が熱がこもりやすくて、ブリスターが出やすい?
富塚:いや、場合によります。固いとゴムがあまり動かないので、発熱量は減る。ただ摩耗も少ないので、ゴムのボリュームが多いので内部に熱がこもりやすい。一方柔らかい方は、ゴム自体がよく動くので、それで発熱してブリスターが出たりする。そのバランスですね。そして今回は、そのバランスが一番悪かったのがソフトだった印象です。なのでレース前半の温度管理には、ものすごく気をつけました。



(Kunio Shibata)


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