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【レースの焦点】順当に勝利を収めたハミルトン、その裏で露呈した“伝統が途切れた後のクラシックGP”の難しさ/F1第8戦フランスGP

2018年6月27日

「素晴らしい仕事をしてくれたチームに感謝。イングランドの勝利もすごく嬉しい。最高の日曜日だ。みんなにHappy Sundayを!」

 フランスGP初制覇を果たしたルイス・ハミルトンは、ゴール後の無線で喜びを伝えた。2週間前、得意のモントリオールで完敗したことがずっと遠くに感じられるほど、ポール・リカールの週末は順調だった。待望の新パワーユニットは話題を集めたが、ハミルトンは「それだけが理由じゃない」と言う。

「現行のパワーユニット規則が導入されてから5年にもなるから、ひとつひとつのアップデートはそんなに大きなものにはならない。僕はチームが行ったすべての仕事に感謝しているよ」

 メルセデスの速さは、広範な進歩によって説明される。スペインGP以来の投入となったトレッドゴムが薄いタイヤは“メルセデスに有利”とまで言わなくとも、少なくとも彼らが他チーム以上に悩むことはなかったはずだ。新サーキットに関するさまざまなデータの“破片”を適切に分析し、全体像を正確に読み取り、走行が始まる時点でベストに近い状態まで仕上げてきたチームの努力は何より大きい。FP1〜FP2、予選、レースへとステップを踏んでいくジョブリストも、物理だけでなくドライバーの感覚を考慮した、優れたものであったに違いない。

 知り尽くしていたはずのモントリオールで、思いがけず道に迷ったハミルトン。ポール・リカールではセットアップに迷うことなく、コースインするたびサーキットのリズムを体内に取り入れ、ドライバーとマシンの相乗効果を生み出していった──。新パワーユニットのトラブルによってFP2をほとんど走れなかったバルテリ・ボッタスが、予選を2位で終えた後にも「まだ挽回し切れず、追いかけている感じ」と表現した様子を見ても、適切なプログラムを順調にこなしていくこと、マシンと一体化してコースをつかんでいくことの重要さがよく分かる。

XPB Images

 レースではスタート直後にボッタスとセバスチャン・ベッテルが接触。メルセデスとしてはスペイン以来の1-2フィニッシュが遠のいてしまったが、ハミルトンにとってはベッテルというライバルが後退したことによって、自らのレースだけに集中できる環境が生まれた。それでも──。

「チームにとって1-2フィニッシュの機会が失われたことをすごく残念に思う。チームのなかではそれが至上の目標であり、達成できた時には本当に素晴らしいフィーリングが味わえるのに」というハミルトンの言葉に嘘はない。

 ベッテルのミス自体は批判せず、「ドライバーだって人間だ」とフォローしながらも、「被害を受けた側のドライバーより被害を与えたドライバーが前でゴールできる程度のペナルティでは軽すぎる」とスチュワードの裁定に異論を唱えたハミルトンは、今日のメルセデスの状況をとてもよく反映していた。

 もし、チームメイトがボッタスではなくニコ・ロズベルグだったら──? あるいは、メルセデスのふたりが熾烈なタイトル争いを繰り広げていたら──? ハミルトンは少し違ったニュアンスの言葉を口にしていたはずだ。

 メルセデスのチーム内に、ナンバー1ドライバー、ナンバー2ドライバーという考えはない。でも、現段階でボッタスはハミルトンのライバルではなく、その結果の自然な流れとしてハミルトンはナンバー1ドライバーの精神的な環境を手に入れている。その環境が、混戦のシーズンにおいてもハミルトンを孤独に追いやることなく、彼の強さを補強している──。キミ・ライコネンをナンバー2としてあからさまに“消耗”してしまうフェラーリにおいて、ベッテルが多くを背負いすぎるのとは対照的に。



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