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より速く、美しく。史上最速マシンは昔気質なルックスへ【F1マシン2017大革命】

2017年1月21日

 あと1カ月ほどで姿を現わす2017年型のマシンは、これまでとはまったく異なるルックスをしている。そして、ラップタイムが大幅に向上すると予想されている。ここでは、シャシー、パワーユニット、タイヤのそれぞれの観点から、2017年のF1がどう変わるかを全3回に分けてみていこう。


 2017年最大の変化は、シャシーだ。タイヤのワイド化に加え、車体そのものも幅広になり、端的にいえば1997年以前のようなルックスのF1マシンが復活するのだ。


 車幅は1800mmから1997年以前と同じ2000mmに拡大。そしてこれに伴い前後ウイングともに拡大し、後退角がついて鋭利なルックスになるだろう。特に、ファンの間で不評の声も少なくなかったリヤウイングに関する規定は、従来から高さが150mm低くなり、幅は200mm拡大される。この新規定により、ワイド&ローで昔気質なルックスに回帰する予定だ。

フェラーリによる、2017年の規定に合わせたテスト仕様のマシン
フェラーリによる、2017年の規定に合わせたテスト仕様のマシン


 また、ディフューザーの跳ね上げも125mmから175mmに拡大され、フロア下で発生するダウンフォースの量も増大。コーナリングスピード上昇の一助となるだろう。これらの変更の結果、マシン全体として増大するダウンフォース量は実に30%にも及ぶとされる。


 フォース・インディアの松崎淳エンジニアは「ピレリのタイヤテストは2015年型マシンを改造して行なわれていましたが、あれは現行型に比べてダウンフォース量を10%増やしただけに過ぎない。実際には2017年型マシンのダウンフォース量は格段に大きくなります」と語る。


 ダウンフォース量の増大や、新型マシンに合わせ、新たに開発されたピレリタイヤがラップタイムの向上をもたらし、2017年のマシンは昨年型に比べ1周あたり4秒から5秒は速くなるというシミュレーション結果が出ており、F1史上最速のマシンへと変貌を遂げる。


 つまり、2017年のF1マシンはルックスが大きく変わり、しかも速くなるのだ。


 すでにどのチームも基本設計は昨年のうちに終えており、おおよその性能は把握している。そのデータをもとに、ドライバーたちは着々とシミュレーター作業で“新世代”のフィーリングに慣れていっているところだ。


 昨年の早い段階で2017年型マシンをシミュレーター上で試していたバルテリ・ボッタスは「シミュレーターで2017年型のマシンをドライブしたけど、すごく速かった。特にコーナリングスピードが上昇している」と語る。


「具体的には、ダウンフォースとグリップ感、そしてトラクションがかなり高くなっている。もちろん、ダウンフォースが増えた分、ドラッグの影響でストレートは若干遅くなるけど、コーナーが速くなるのはドライバーとしては歓迎だ」


 速さは大幅にアップしているものの、マシンの根本的な特性はそれほど変わっておらず、ドライビングスタイルも大きくは変わらないだろうとボッタスは予想している。


「ドライビングスタイルはそれほど大きく変わりはしないだろう。もちろん、グリップが高くなったことでコーナーによってはライン取りが変わったり、これまで少しアクセルを戻していたところが全開でいけるようになったりという違いは出てくるだろうし、なかにはアプローチの仕方を変えなければならないコーナーもあるだろう。だけど、基本的なマシン特性やドライビングスタイル自体はそんなに変わらないはずだよ」と述べた。


 では、フィジカル面での変化はどうだろうか。コーナーが速くなることで、当然ドライバーにかかるGフォースも大きくなり、身体的な負荷も増すことになる。それでも、もともと極限まで鍛えているF1ドライバーたちのトレーニングはそれほど変わらないという。


 フェルナンド・アロンソは「クルマは大きく変わるけど、身体に必要とされることは基本的に大きく変わらないから、トレーニングを新レギュレーションに合わせて変える必要はないと思う。プログラムを変えたり、フィロソフィを変えたりといった必要はない」


「10代で初めてF1に挑むのなら、追加のトレーニングは必要かもしれないけど、僕らはもう何年もF1で戦ってきているから身体にはF1をドライブするベースができているんだ。今よりも少し多めにトレーニングする必要はあるかもしれないけど、問題ないよ」とコメント。


 ただし、一部のレースでは体力の限界と戦う場面が復活しそうだ。


「マレーシアやシンガポールのように現時点でも体力的にキツいレースでは、2017年はかなり大変かもしれないね。タイヤ戦争でコーナリングスピードとGが半端じゃなかった2005年頃は、1日走ったら翌日にはもう走れなかった。もしかすると、そんな頃に近付くかもしれない」と、ジェンソン・バトンは予想していた。


 しかし、規約変更は良いことばかりではない。新時代の2017年型F1マシンでは、バトルが難しくなるかもしれないのだ。

接近戦が困難になるという予想も
接近戦が困難になるという予想も


 あるドライバーは「僕らはずっと、バトルができるクルマを要請してきた。そのためには、空力じゃなくメカニカルグリップに頼るクルマが必要だ。速くなるのは良いことだけど、空力で速くしたクルマではむしろ逆効果になりかねないよ」と指摘する。


 ダウンフォースが大きいということは後方に生まれる乱気流も大きく、その分だけ前を走る車の後ろに付いた際の影響が大きくなる。となれば、ピタリと後方についてコーナリングすることは難しく、接近戦が難しくなるかもしれないのだ。


 タイヤのトレッド拡大により、横Gに対するメカニカルグリップ向上が予想されているだけに、この懸念が杞憂に終わることを願いたいが……。


 また、車幅が広くなることで接触事故が起きやすく、特にモナコやシンガポール、バクーのようなコース幅の狭い市街地サーキットではバトルが難しくなるのではないかという懸念もある。


 いずれにしても、批判の声も少なくなかったここ数年のF1が、2017年シーズンは大きく変わるはずだ。そのマシンを駆って、ドライバーたちがどんな走りを見せるのか、いまから楽しみだ。


■2017年車体規則変更点

20172016
フロントタイヤ305mm245mm
リヤタイヤ405mm325mm
車幅2000mm1800mm
フロントウィング幅1800mm1650mm
リヤウイング幅950mm750mm
リヤウイング高さ800mm950mm
車重最大722kg最大702kg


(Mineoki Yoneya)


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