ちなみに、その情報筋は「なぜマクラーレンがサム・マイケルをウイリアムズから採ったのか理解できない」と言っていたが、マイケルは10月に今シーズン限りでマクラーレンを離脱することが発表された。これからマクラーレンが新しいチーム代表を決定すれば、ブーリエがマクラーレンを追われることは間違いないだろう。最近ブーリエが、あちこちのチーム首脳陣と話し合っているのは奇妙な偶然だろうか。
さて、それではマクラーレンの新チーム代表は誰になるのだろうか。まず、デニスという声があるが、これはアロンソが望んでいない。そこでマクラーレンの株式を持つ三者が挙げている候補が、以下の3人だ。ひとりは前チーム代表のウィットマーシュ。もうひとりが、かつてマクラーレンをドライブしていたゲルハルト・ベルガー。最後のひとりが、現在レッドブルの代表を務めるクリスチャン・ホーナーである。
匿名の情報筋が筆者に語ったところによると「ベルガーはチーム代表ではなく、現在のメルセデスにおけるニキ・ラウダ的な存在(非常勤会長)という形でなら参画する可能性がある。したがって、マクラーレンはウィットマーシュかホーナーのいずれかを起用する方向で今週、株主が緊急会議を行うことになっている」と言う。
3人の株主とは、バーレーンの王室が所有するバーレーン・マムタラカット・ホールディングス(BMH)、マンスール・オジェ、そしてデニスだ。デニスはアロンソ側の要求に難色を示しているが、すでにアロンソ側からBMHとオジェには話が通っている。BMHはマクラーレンの株式を50%持つ筆頭株主で、オジェも25%を所有しているため、25%しか持っていないデニスは要求を飲むしかないと言われている。
しかし、それはマクラーレンの事情であって、ベルガーもしくはウィットマーシュかホーナーいずれかをチーム代表として起用できる保証はまだない。アロンソが沈黙を守っているのはそのためで、チーム改革が実現しなければ移籍はしないというアピールなのだ。そして、マクラーレンにプレッシャーをかけるために、フェラーリとは「マクラーレン行きを発表するまで、フェラーリもベッテル起用を発表しない」ということで手打ちができている。
そして、ホンダを通してマクラーレンへプレッシャーをかけていることから、アロンソがマクラーレンとではなく、すでにホンダと契約したという噂になったようだ。アロンソがアメリカGP後に「あっと驚く発表があるだろう」と語っていたのも、新しいチーム代表の件だと推測され、そう考えれば、ブラジルでアロンソが語っていた内容も納得がいく。
アロンソのマクラーレン・ホンダ入りは確実だ。注目すべきは、マクラーレン・ホンダのチーム代表に誰が就くかである。
(尾張正博)