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【津川哲夫の幻の2020F1メカ私的解説】レッドブル・ホンダのパッケージ細部考察。フェラーリ黄金時代と重なる開発類似点
2020年5月25日
2020年、宿敵メルセデスW11がハイパーマシンからレッドブル型のドライビングマシンへと方向を変えたのとは逆に、メルセデスを猛追するレッドブルの新型マシンRB16/ホンダは昨年マシンのRB15から大きな方向転換を見せた。RB15はハイレベルなコーナリングマシンながらも過激で神経質な性質であったことへの対応だった。
RB16の開発コンセプトは今シーズン用にパフォーマンスを大きく上げてきたホンダ・パワーユニット(PU)の特性を活かす方向で、高速コーナー安定のハイパーマシンへと生まれ変わることになった。RB16はRB15と比較して見た目では大きな違いは感じられないが、それはメルセデスW11も同じ。だが、その開発コンセプトの変更は車体構成の根本から見直されている。
F1開発の主流であるエアロ開発が大きな比重を占めているのは言うまでもないが、レッドブルRB16はエアロに準じながらも車体の構成、特に前後のサスペンションと荷重移動、そしてエアロバランスへの考え方がRB15から大きく変更されたようだ。
真っ先に目に付いたのは、フロントサスペンションの構成だ。
フロントアッパーアーム(1)の構成を見ると、RB15とRB16の違いが見える。昨年のRB15はフロントレグとバックレグを独立したアームに分離してアップライト側のピボット(2)の上下に重ねたダブルデッカー方式でマウントにした上下分離型アッパーアームが採用されていた。だが、RB16では通常の一体型へと帰還している。これでより高いサスペンション剛性の確保がされたはずだ。
また、これまでアッパーアームのアップライト側ピボット(2)のトレンドであるエクステンションブロックを使ったハイマウント方式(メルセデス他多くのチームが採用)をレッドブルは頑なに拒んできた。
RB16も一見するとRB15同様、通常マウントを継承しているように見えるのだが、実はセミハイマウント的にホイールからわずか上方に伸びたところにマウントされ、アッパーアームの下反角をより少ない角度へと持ち上げて、ホリゾンタル(水平)に近づけている。
RB16のアッパーアームは前方に向かって前進角(3)がつけられた。昨年のRB15では後退角(E)が設定されていたので、モノコックの寸法に変化がないと想定すればフロントホイールを前進させることで、RB16はホイールベースの延長をしたことになる。
この変更でロワアーム(5)も若干先進し、フロントレグは左右を一体化(4)、バルクヘッド先端下部の溝にはめ込まれる形でソリッドマウントされた。昨年のRB15では左右に分離されてバルクヘッドの両端にボルトオンされていたものだ。また、ホイールの前進とアッパーアームの上昇で上下アーム間(6)も若干広がり、さらにアーム厚も若干増えたことでサスペンション剛性の強化が伺える。
ホイールの前進はプッシュロッド(7)のモノコックへの入角にも顕著に現れている。
ロッカーアームのプッシュロッド・ピックアップポイント(8)は前方に向かって大きく角度がつき、そこに大きなスティフナー(強化部材)(9)が追加され、ロッカー(10)の強度剛性を確保している。おそらくフロントサスペンショは昨年よりもハードに設定されているのだろう。これらのフロントサスペンション構成パーツ全域で強度剛性が確保されているのだから。
しかし、サスペンションの前進で割を喰ったのがステアリングシステム。RB15ではフロントバルクヘッド先端(11)に置かれていたステアリングユニットは後方のセカンドバルクヘッドの位置に下がった。ロワアームのバックレグ(12)の前方に置かれ、現在では比較的珍しいアップライトの後方でステア操作が行われる。
■レッドブルとホンダの開発経緯と重なる、フェラーリ黄金時代、F2002からF2004との共通点
このステアリングユニットの方式は1980年代では比較的多かったが、現在は油圧のパワーステアリング・ユニットが併設されているために、コクピット内部の搭載は整備性と容積の問題で嫌われている。
また、基本設計がこの旧方式でのステアリングユニットの搭載なので、現在のシステム以上に容積が拡大したパーツの搭載は不可能に近いはずだ・・・(極めて私見だが、レッドブルが強力にメルセデスのDASシステムへの反対しているのは、RB16には大型のDASシステムの搭載が物理的、容積的に不可能と言うのが理由のひとつかもしれない・・・?)
この方式を採用した理由としては、今までどおりのフロントバルクヘッドへのマウントによってフロントホイールが前進し、トラックロッド(13)にも大きな前進角がついてしまうので、ステアリングユニットを後方へ置くことでトラックロッドを平行に設定することができ、ステアリングジオメトリーの単純化と剛性確保ができることが考えられる。
もちろんすべてのアーム類の設定、ハイライズ・アッパーアームと最小ハイマウントブロック、ロワアームの近水平化設定、ステアリングユニットの後退とトラックロッドの平行化設定・・・これらにはフロントサスペンションの強度・剛性向上だけではなく、フロントエアロへの配慮が大きな率を占めていことは言うまでもない。
フロントサスペンションの前進でホイールベースが延長し、ハードセッティングとサスペンションの強度剛性を向上させた。これらの変更は一見メカニカルな開発だが、その背景にあるのはエアロ性能への飽くなき探求だ。
RB16は相変わらず強レーキ角のエアロコンセプトを維持しながらフロントを強化し、リヤサスペンションは上下動のトラベルを強くしなやかに可動させ、走行状況に准じたリニアなエアロバランスを狙ったマシンだと想像できる。リヤサスペンションの動きで、レーキ制御の基本への回帰を行っているのだ。
コーナリングを重視した車体の走行性能は相変わらずレッドブルのウリだが、RB15ではホンダPUのパフォーマンスの想定がルノーと同等で、メルセデスとフェラーリには離されていると言う設定で開発されたマシンであり、車体性能を過激に求めたことでピーキー(神経質)な性格となった。
RB15はハイレベルなコーナリングマシンながらも、高い次元で突然のアンダーや急激なブレイクオーバーを産み出し、ダウンフォースの変化も過激になっていた。昨年後半の開発でかなり快方に向かったが、この症状はRB15のもともとの素性だったようだ。
RB16はこの難問をホイールベースの延長とオーソドックスで繊細なレーキ制御で対処し、若干レッドブルらしくなくフロントエアロには安定性を考慮したメルセデスの手法をレッドブルエアロ的に解釈した丹念な処理で取り入れている。
歴史的な話をすればフェラーリは2002年、スーパーカーの素性を持ったF2002を開発し、翌年にはその特性がさらに過激になったF2003GAを開発した。F2003GAは速さはあるが神経質なエアロマシンとなり、当時のミハエル・シューマッハー苦しめ、そして翌2004年、それらのデメリットを克服して速さと信頼性を維持したまま完璧なスムース性を持ったスーパーマシン、F2004が誕生した。このかつてのフェラーリ黄金時代の経緯に、今のレッドブルの開発が重なっていると思えるのだ。
ルノー搭載時のRB14という高性能マシンから過激で神経質な進歩を果たしたRB15ホンダへ、そしてスピードを加えながらも超ハイレベルな安定性とスムース性が施されたRB16へと、その進化の工程がフェラーリF2004の開発経緯と重なる。
もちろん、新型マシンは実戦で走って見なければ答えは見えないが、開幕前テストで垣間見たRB16にはレッドブルとホンダの並々ならぬ意欲がにじみ出ているように思えた。
(Tetsuo Tsugawa)
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1位 | マックス・フェルスタッペン | 331 |
2位 | ランド・ノリス | 279 |
3位 | シャルル・ルクレール | 245 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 237 |
5位 | カルロス・サインツ | 190 |
6位 | ルイス・ハミルトン | 174 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 155 |
8位 | セルジオ・ペレス | 144 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 62 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 24 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 516 |
2位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 475 |
3位 | スクーデリア・フェラーリ | 441 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 329 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 34 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 31 |
8位 | ウイリアムズ・レーシング | 16 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 13 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第18戦 | シンガポールGP | 9/22 |
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