フェラーリとメルセデスAMGのパワーバランスが、1夜にしてこれだけ変わってしまったのには、ハンガロリンクの気候が大きく影響しているように思います。金曜と土曜は、気温32〜33度、路面温度は50〜54度という灼熱のコンディションでした。しかし決勝日は、気温22〜24度、路面温度40〜49度と、それぞれ10度前後も低くなっていたのです。
ハミルトンは予選終了後、「週末に一貫してこれほど強力なパフォーマンスを発揮できたことはこれまでなかった」と語るくらい、マシンに自信を持っていました。しかし一転、決勝レース直前のレコノサンスラップでハミルトンはリヤの安定性不足を訴え、ガレージで調整を加えていました。ロズベルグの方も予選後、「アンダーステアだった。でもレースではこれでリヤタイヤを長持ちさせることができるはず」と語っていましたが、レース後には「オプションタイヤ(ソフトタイヤ)でバランスが悪かった」と言っています。つまりメルセデスAMGは、決勝で上手くタイヤを使うことができなかったと想像できます。その要因が、前日から比較して著しく下がった気温にあったとは考えられないでしょうか? ロズベルグの2日間のコメントを総合すれば、“タイヤへの入力が小さいセッティングだったため、それが仇となって涼しいコンディションでは発熱に苦労した”ということが読み取れるような気がします。
これに加えてメルセデスAMGふたりのドライバーが“自滅”したことで、ベッテルはさらに楽になりました。ハミルトンは前述した1周目のコースオフと、セーフティカー退出直後のダニエル・リカルド(レッドブル)との接触、ロズベルグはヴァーチャルセーフティカー時のピットインでミディアムタイヤを選択(「あの時点での残り周回では、ミディアムしか選択肢はなかった」とチームは説明していますが、ロズベルグはハミルトンに勝つことしか視野に入っておらず、レースに勝つことを放棄したようにすら見えました……)してペースを上げられなかったことと、64周目のリカルドとの接触……これで、今季ここまで圧倒的な強さを誇ってきた銀色の2台のマシンが後方に沈み、ベッテルの今季2勝目を決定付けました。冷静にレースを進めさえすれば、メルセデスAMGは最低でも2-3フィニッシュはできていたはず。あまりにもミスが多すぎた印象です。