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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第1回】VF-22のポテンシャルを実感、“良い意味”での驚きも。伸び代が見えたテスト

2022年3月10日

 2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。技術規則が大きく変わった2022年の最初のテストを終え、小松エンジニアは新車『VF-22』について「ポテンシャルは悪くない」と評価した。もちろん現段階で楽観視はできないし、ポーパシングなど複数のトラブルに見舞われ十分な走行ができなかったのも事実だ。それでもポジティブな第一印象を持つことができたのは、昨年に比べて大きな一歩だろう。今回はバルセロナで行われた第1回目のプレシーズンテストの事情を小松エンジニアがお届けします。


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第1回プレシーズンテスト(バルセロナ-カタロニア・サーキット)
#47 ミック・シューマッハー ベストタイム:1分21秒949(C3/総合18番手)
#9 ニキータ・マゼピン ベストタイム:1分21秒512(C3/総合14番手)


 みなさん、お久しぶりです! 今年もコラムを書かせていただくことになりました。大きくレギュレーションの変わった今シーズンは見どころがたくさんのシーズンになると思います。そのなかで我々ハースも過去2シーズンより良い位置でレースをできるようにベストを尽くしていくので、応援よろしくお願いします!


 クルマの話しをする前に、まずはドライバーラインナップ変更について触れたいと思います。バルセロナテスト2日目にロシアがウクライナ侵攻を開始しました。この段階でギュンター(・シュタイナー/チーム代表)がジーン・ハース(チームオーナー)や経営陣と協議し、ウラルカリのロゴを外すことになりましたが、最終日の午前中は当初の予定通りニキータを乗せました。しかし、その後3月5日にウラルカリとのスポンサー契約を正式に解除することとなり、ニキータとの契約も打ち切りました。これはウラルカリとプーチン大統領の関係を考慮すると当然の決断だったと思います。何が理由であれ、軍事侵攻を認めるような行動はとれません。


 さて、ここからはバルセロナテストを振り返っていこうと思います。VF-22を走らせた率直な感想としては、クルマのポテンシャルはけっこうあると思っています。しかし、いろいろなところでクルマに問題が出て、肝心の走行距離は全10チームのなかで一番少ない750km、使ったタイヤの数もドライタイヤだけでいえば最多のメルセデスの半分と、かなり消化不足のテストとなりました。

ハースF1がバルセロナで2022年型『VF-22』をシェイクダウン。マゼピンが走行を担当
ハースF1の2022年型マシン『VF-22』のシェイクダウン走行を行うニキータ・マゼピン


 まずは他チームと同じく、VF-22もポーパシングに悩まされました。オフィシャルテストの2日前にバルセロナでフィルミングデーを使ってシェイクダウンを行ったのですが、なんと走行2周目にしてフロアが壊れてしまったのです。またその影響でリヤサスペンションにも問題が出てしまいました。フィルミングデーは100km(バルセロナでは23周)までの走行が許されていますが、結局この日走ったのは60km(13周)でした。よかったことは問題の原因がはっきりしたので、すぐに風洞で実験をして、改良部品の設計に取り掛かれたことです。


 ですのでテスト初日には、空力性能は落ちるもののポーパシングの問題を改善できるようなパーツを作って持ってきてもらいました。そういう意味では現場と、マラネロにあるハースの風洞でテストを担当している人たちとの連携はよく取れています。ただスペアのフロアが3日目までなかったので、何とか性能を取り戻そうとするとすぐにモノが壊れてその修復に時間がかかり、かなり走行時間をロスしてしまいました。初日はふたり合わせて43周しか走れずに終わりましたが、こんな状態でもミックが1分22秒962というタイムだったので、第一印象はそれほど悪くありませんでした。

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1バルセロナテスト1日目 ミック・シューマッハー(ハース)


 2日目はとにかく走行距離を稼ぎたかったのですが、ちょっとでもクルマの性能を出そうとして走るとポーパシングが起きるので、まずは性能のことを考えず、ポーパシングしない“最も安全”な状態で走りました。安全な状態というのは、空力的には性能が落ちている状態ですが、走らないことには次に何が壊れるかわからないですからね。リヤウイングはバルセロナのコースに適したものではなかったのでダウンフォースが効かない状態でしたが、この日はミックが66周、ニキータが42周走って、3日間のなかで一番まあまあな日でした。


 タイムに関しては、ニキータが最後に1分21秒512をマークしましたが、これも比較的スッと出たタイムです。クルマのバランスやセットアップに関する作業は少しやりましたが、こういう作業というのは絶対的な速さを高めるというよりも、限られたパッケージのなかでどれだけドライバーに合わせられるかという妥協点を見つけるものです。そういう状態で出したタイムだったので、やはりクルマのポテンシャルは悪くないと思っています。


 3日目は残念ながら走行開始から1時間ほどでオイル漏れが起きて、全然走れずに終わりました。ただこの時ニキータが新しい部品をつけて空力データを収集していて、感触にもデータにもかなり改善が見られました。この状態で午後も走らせるのを楽しみにしていましたが、オイル漏れが再び起きて、走行できずとても残念でした。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2022年F1バルセロナテスト3日目 ニキータ・マゼピン(ハース)

■信頼性の確保が最優先。次のテストの課題は「とにかく走ること」

 最初のテストを終えて、いい意味で驚いたのは、ターン5やターン10などの低速コーナーで、何もしていないにもかかわらずタイムが悪くないことです。シケインでも、速いチームには負けているものの、中団グループと比較すると良いレベルだったと思います。低速コーナーでの速さはラップタイムに大きく響いてくるので重要です。中速域ももっと改善できるし、空力部品を改善していけば高速コーナーでのタイムもよくなると思います。もちろん今年のフェラーリ製のパワーユニット(PU)も改善されており、直線でも戦闘力が増しました。


 もちろんまったく楽観視しているわけではありませんが、決して悲観もしていません。伸び代はたくさんあると思っています。次のバーレーンテストではもう少し空力性能を改善できる部品を入れて、コースに合ったリヤウイングを用意してとにかく走ることが課題です。バルセロナではやりたかったことの10%もできていないくらいでしたからね。こういう言い方をすると怒られるかもしれませんが、マシンスペックを詰めてコンマ数秒を追求するよりも、とにかく走って信頼性を確保することが優先です。走ることでドライバーもタイムを上げていけますし、トラックサイドエンジニアの理解力も深まればもっとパフォーマンスは上がります。


 チームの雰囲気もいい感じです。あまり走れずにテストが終わったのでフラストレーションを感じていますが、昨年のように1年を棒に振るとわかって取り組んでいるわけではないので、みんな前向きです。


 2022年シーズンは、少なくとも他の2、3チームと戦いたいですね。予選でもQ1で終わるのではなく、Q2に進むというのが現実的な目標です。簡単にはいかないと思いますし、チームとしてもまだまだまとまってないところも多々ありますが、個々の能力はあるし、小さいチームならではの機敏さとか機動力という利点もあります。レギュレーションが大きく変わってまだ読めないところも多いですが、僕はこの1年を楽しみにしています。

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1バルセロナテスト2日目 ミック・シューマッハー(ハース)

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1バルセロナテスト2日目 ミック・シューマッハー(ハース)



(Ayao Komatsu)




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