ガスリー担当のパフォーマンスエンジニアを務める湊谷圭祐によれば、「パワーユニットのドライバビリティは、高速コーナーよりも低速コーナー、ドライよりもウエットコンディションのほうが差が出やすく、それがハンガリーGPの予選での快走につながったのではないか」と分析し、ここ続けた。
「アクセルペダルを踏むと、ペダルの開度によって、どれくらいのトルクを出すというマップがあります。これをトルク・ペダル・マップ(TPM)と言い、このとき、設定したターゲットに対してトルクの追従性が1対1の状態をドライバビリティがいいエンジンと言います」
「逆に、ドライバーが踏んだときにすぐにトルクが出ず、遅れて出てくると、突然トルクが出てホイールスピンしやすくなります。そういう状態では、ドライバーはコーナーの立ち上がりでアクセルを思い切って踏めず、攻めることができません。当然、その先にストレートがあれば、加速が遅くなるので、スピードも伸びなくなります」(湊谷)
ただし、湊谷エンジニアは「いくらドライバビリティが良くても、トラクションがない状態ではどうしようもない」とも語る。つまり、ホンダのドライバビリティを生かすも殺すも、トロロッソの車体次第だというだ。
だから、ハンガリーGPでピエール・ガスリーが第2集団のトップの座となる6位でフィニッシュした後も、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、冷静さを失わなかった。
「ハンガリーGPの結果を毎回、手にするにはどうしたらいいのか。浮き沈みが原因を解析して、解決策を見つけることが今後課題です」
ホンダはさらに馬力を向上させ、トロロッソはさらにダウンフォースを稼ぐための新しい開発ももちろん重要だ。しかし、バーレーンGPの4位、ハンガリーGPの6位が示しているように、いま手にしている道具が持つポテンシャルをいかに100%発揮させることができのかも同じように重要だ。それができれば、現在コンストラクターズ選手権8位のトロロッソ・ホンダが、後半戦で第2集団をかき回し、さらに浮上していくことだろう。
(Masahiro Owari)