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F1を目指した原点と、現実を知らされた1台。タキ井上の記憶に残るF1マシン10選(1)

2022年8月12日

 1994年の日本GPでF1デビューを果たし、1995年には日本人4人目のフルタイムF1ドライバーとなった“タキ井上”こと井上隆智穂。そんなタキ井上の記憶に残ったF1マシン10台を全3回に分けてお届けする。第1回となる今回は「初めて見たF1マシン」、「将来レーシングドライバーになる!」と思わせたタキ井上の原点となる2台。そして1994年のF1デビューの際に搭乗した『シムテックS941』について語ってもらった。


* * * * * * * *

■ホンダRA272/ホンダRA272E 1.5 V12

 ぶっちゃけ、僕が最初に見たF1マシンでしょう。もちろん実車を見たわけではなく、7歳のときにこの『ホンダRA272』のプラモデルを親に買ってもらいました。


 車両後部に12本の排気管があって、それをうまく組み立てられず途中でリタイアしました。でも、高校生の友達が自宅へ来たときに組み上げてもらった記憶があります。


 実際のところ、これがF1マシンと知っていたわけではなく、なんだか分からないけれどいつかはこれに乗りたいと思っていました。

1965年F1ベルギーGP リッチー・ギンサーの操るホンダRA272
1965年F1ベルギーGP リッチー・ギンサーの操るホンダRA272

■マクラーレンM26/フォード・コスワースDFV V8

「よし、自分は将来レーシングドライバーになる!」と勘違いしちゃったのがこのマクラーレンM26でした。フロントラジエーターが開いていたので、1977年に富士スピードウェイで開催された日本GPでジェームズ・ハントが走らせたヤツでしょう。


 どこのメーカーだったかは記憶が無いのですが、“かっぱえびせん”のような塩味のお菓子ではなく、甘いお菓子を買ったら、その付録として葉書よりも大きなサイズのブロマイドを貰いました。あれは付録じゃなくて抽選で当たったのかな? それを当時流行っていたように自分の学習机に貼って、「よっしゃ、オレはこれに乗るぞ!」と。


 でも、当時13、14歳くらいで物事が分かっていなかった僕は、それがF1マシンだとはまだ知りませんでした。ただ、“マールボロ”のロゴが格好良く、でもそれがタバコのブランドだとも知らなかった。そのうち高校生になって卒業する時期を迎え、「大学へは行かずに、このクルマに乗りたいなぁ」と思うようになりました。

1977年F1日本GPを制したジェームス・ハントのマクラーレンM26
1977年F1日本GPを制したジェームス・ハントのマクラーレンM26

■シムテックS941/フォードHBD6 3.5 V8

 1994年に鈴鹿で開催された日本GPで初めて乗ったF1マシンですね。当時、28台が参戦するF1で唯一パドルシフトではなく、シーケンシャルシフトでした。「F1マシンはパドルシフト!」と自分は思っていたのですけど、実際乗ってみると「なんだよー、これじゃあF3やF3000と同じじゃんかよー」と具合が悪い思いをしましたね。とうぜんパワーステアリングは付いておらず、「ぜんぜんF1マシンじゃねーじゃん!」と。


 で、F1といえばテレメトリーで走行中のクルマのデータが、ピットガレージにリアルタイムで飛んでくるイメージがあるじゃないですか。それがF1チームでしょ? と。ところが当時のシムテックは、ラップトップのコンピュータが1台だけしかなく、エンジンの回転数や水温、油温のデータくらいしか飛んで来なかった記憶があります。


 でも、ほかのチームはエンジンだけではなく、シャシーのデータもピットガレージで把握していたわけじゃないですか。間違いなく最強のポンコツで、F1チームと呼んでいいのか分からないのがシムテックでした。


 まぁ、ほかのF1チームで乗った経験もありませんでしたから、「今日はF1マシンに乗ったと日記には書いておこう」というのが僕のスタンスでした。あのF1マシンではスペインのバルセロナのテストを含めて、たぶん100周も乗っていないと思います。

1994年F1日本GPでF1デビューを果たした井上隆智穂(シムテック)
1994年F1日本GPでF1デビューを果たした井上隆智穂(シムテック)

新興チームであり、テールエンダーのシムテックからF1デビューを果たした井上隆智穂。「F1マシンに乗ったと日記には書いておこう」というスタンスで初のグランプリレースに臨むことに。
新興チームであり、テールエンダーのシムテックからF1デビューを果たした井上隆智穂。「F1マシンに乗ったと日記には書いておこう」というスタンスで初のグランプリレースに臨むことに。
(続く)



(Taki Inoue 取材・まとめ:Kojiro Ishii)




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