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問われるモータースポーツの“スポーツ性”豊田章男社長が叩きつけた強烈なメッセージの背景

2021年10月15日

 9月30日に日本自動車連盟(JAF)モータースポーツ部による『JAFモータースポーツミーティング』がリモート形式で開催され、日本モータースポーツ記者会と毎日新聞社記者が参加した。村田浩一部長による6項目におよぶ国内のモータースポーツ近況報告とその補足説明ののちに代表質問という流れだった。各項目は、以下のとおり。


1:新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなう対策と対応状況
2:公認競技会・ライセンス発給状況
3:FIA世界選手権3大会等、外国籍選手等の参加に関する統轄団体としての対応
4:安全対策
5:環境対応
6:振興に資する施策


 1時間の予定で行われた同ミーティングは、村田部長が約45分間6つの項目について述べた。国内モータースポーツ統轄団体の部長が自ら報告・説明するのはおそらく初の試みで、筆者の記憶に前例はない。ゆえに報告・説明に多くの時間を要したが、この際に多くの要件を伝えたいという意思があったと理解でき、ミーティングは予定より15分延長されて終えた。とくに1と3については、一般社会でも新型コロナウイルスの新規感染が急激に減少し、緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置が解除、規制緩和というタイミングとシンクロして注目項目だった。また、ミーティングの同日には外国人ドライバー数人が日本入国ビザを得て再来日を果たしている。

■モータースポーツ界の困惑

 新型コロナウイルスの感染拡大により、昨年はレース自体が延期/中止などが相次いだ。今年に入ってからは国内トップカテゴリーでは一度出国した外国籍のドライバーが再度ビザの発給を得られず入国できないという状況に陥っていた。また、F1、WEC、WRCが相次いで中止を決定せざるを得ない状況にも追い込まれていた。2輪ではMotoGP、世界耐久選手権の8時間耐久レース(鈴鹿8耐)が中止されている。


 こうした事態を受けて関係者のあいだでは「統轄団体であるJAFは本当に国内モータースポーツ界のために動いてくれているのか?」という疑問の声が挙がっていたのは事実だ。だが、取材を進めるとJAFはたしかに動いていた。世界選手権のイベント──とくにF1に関しては約1500人の外国人が来日する難しいものではあったが、いまやF1が完全に機能させることに成功している『バブル隔離システム』は、客観的に見ても国家レベルのオリンピック/パラリンピックをはるかにしのぐ成果を見せている。ただ、日本政府がビザ発給、入国の許可を「イエス」でもなく「ノー」でもなく、タイムリミットまでに判断してくれなかったことが中止となった大きな要因であろう。最後の最後まで関係省庁と折衝を続けた鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドとホンダにとっては断腸の思いだったはずだ。

■スポーツ庁への嘆願書

 新型コロナウイルスの国内感染が確認されたのは2019年末。そして2020年に国内の感染が拡大。未曾有のパンデミックにより、さまざまなイベントが延期/中止を余儀なくされた。モータースポーツ界も例に漏れず、2020年シーズンは夏場まで各シリーズが開催されずに延期された。最終的にスーパーGT、スーパーフォーミュラともに当初予定されたレース数が実施されたものの『無観客』『開催サーキットの変更』『複数イベントを一週末で消化する』などの処置がとられたうえでの実現だった。


 2021年は、ほぼ予定どおりのスケジュールで両シリーズのレースが開催されているが、およそ1年半ものあいだ結論を見ないままとなっていた問題が『外国籍のドライバーが再入国できない』ことだった。この影響を受けたチームは代替ドライバーを起用し、“政治の力”によって解決できないか策を練った。


 モータースポーツに関わる自民党の国会議員に陳情し、自民党モータースポーツ振興議員連盟からの助言を受けたのが2021年4月だった。その内容は「国内の4輪、2輪モータースポーツ関連団体、プロモーターやオーガナイザーらで構成されるモータースポーツ連絡会が一丸となって外国人選手、外国人スタッフの入国制限に対する特別処置適応の嘆願書をスポーツ庁に提出する」ことだった。その後、6月からスポーツ庁との相談を開始して、7月にスポーツ庁の室伏広治長官に嘆願書を提出した。


 嘆願書はJAFの会長名で提出されたが、その内容は日本自動車工業会をはじめ国際自動車連盟、F1、WEC、WRCの主催団体、トヨタ自動車、本田技研工業など20団体の総意としてまとめられた。そこで強調されたのは「モータースポーツは、開催地域の活性化等を目的とした自治体等の施策に関係した公益性の高いスポーツイベントである」という点だった。所管省庁との入国に関する協議・折衝は、6月から9月までに35回を数えているという。

■スポーツ庁が果たした功績

 外国人モータースポーツ関係者へのビザ発給について、省庁内でメインキャストとして動いてくれたのはスポーツ庁だ。しかし、スポーツ庁だけに嘆願者を提出したからといって解決にいたらない。モータースポーツの所管省庁といえば警察庁(内閣府)、文部科学省(スポーツ庁)、国土交通省がこれまでの流れだったが、新型コロナに関わる事案については出入国在留管理庁(法務省)や厚生労働省なども加わってくる。本来であれば霞が関の多くの省庁に足を運びそれぞれに嘆願しなくてはならないことになる。


 よく言われるように霞が関は、縦割り社会であり、それは事実で省庁間の情報共有はない。そのような縦割りの省庁に横の橋をかけてくれたのがスポーツ庁だった。その橋がかかる以前の段階で、各省庁のモータースポーツに対する認識は「あれは興行でしょう?」というものだった。つまり、ほとんどの省庁はモータースポーツを『スポーツ』として認識していなかったことになる。そもそもの前提が異なるため「ドライバーとその関係者に入国の規制をどうして解除する必要があるのか?」を所管省庁は理解できなかったのだ。


 JAFが動き始めて、いきなり立ちはだかった壁がその点だった。これをJAF関係者から聞いたときには筆者もビックリした。先に述べた自民党の議連総会でモータースポーツ界がひとつとなって要望をまとめて、スポーツ庁が対応の窓口になって進めることが肝要である旨を確認して、結果スポーツ庁が霞が関で動いてくれた。幸いだったのはスポーツ庁がモータースポーツの“スポーツ性”を尊重してくれたという点だ。モータースポーツ界にとってはスポーツ庁こそがホワイトナイトだったと表現するのは持ち上げすぎか。


 実際のところ、ほかの省庁も少しはスポーツとして認識していたかもしれないが、コロナ禍でのオリンピック/パラリンピック開催で忙しく、ほかのことに手が回らないと後回しにされた状況は分からないでもない。また、ウイルスの新規感染が減少したことに加えて、オリンピック/パラリンピックが終わったから単に入国が許されたとも考えられる。しかし、もし何も行動を起こしていなかったらいまだに後回しとされていた可能性もあるため、一定の成果はあったと考えるほうが妥当だろう。


 先日のスーパー耐久第5戦鈴鹿ラウンドで水素エンジン車の記者会見でモリゾウことトヨタ自動車の豊田章男社長/日本自動車工業会会長が記者から「外国人ドライバーと関係者の入国制限が解除されない状況をどう思うか?」と問われて「五輪が良くて、なぜ四輪と二輪がダメなのか不公平感を感じる」と日本政府、そして所管省庁の対応に強烈なメッセージを叩きつけた。この発言についてホンダの山本雅史F1マネージングディレクターをはじめ、多くの関係者が立場の違いやメーカーの垣根を超えて賛同の意を表明した。


 こうした背景のうえで現在、外国籍のドライバー、関係者にも入国が許されることになった。しかしながら、モータースポーツの“スポーツ性”を認めてもらう行動・振る舞いがいままで以上に求められていることを強く感じた。これはJAFだけの重要課題ではなく、我々メディアも認識を新たにしなくてはならない問題である。


※この記事は本誌『オートスポーツ』No.1562(2021年10月15日発売号)からの転載です。

auto sport No.1562の詳細はこちら
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(Jiro Takahashi)




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